ハロウィンに皆でパーティーなのですが?
玄関に飾られたジャックオーランタンの置物。そして、蜘蛛の巣やコウモリのオブジェクトが妖しく明るく輝く今日はハロウィン!
皆を招いてのハロウィンパーティーというのは中々に楽しくなりそうだ!
そして、俺にはもう一つ楽しみがある。それは仮装!
皆、どんな仮装をしてくるんだろう? 彩乃も秘密だって言って結局教えてくれなかったし。
でも、それ以上に白﨑さんの仮装が楽しみすぎる! すごいやつ準備するって言っていたしな。
ただ、彰も駿太も天音も今回はパスってのが残念だ。彰に関しては宿題を出してなくて補習を受けているから自業自得ではあるが。
カボチャを使ったお菓子を机に並べる。と、その時ちょうど玄関のチャイムが鳴った。
彩乃ならチャイムなんて鳴らさないから白﨑さんだ。
期待をいっぱいに扉を開ける。
「はーい」
「と、トリック・オア・トリート! 翔馬くん」
思わず尊死しそうになってしまう……。
扉を開けた先にいたのは、可愛い可愛い化け猫ちゃんでした。
魔女が飼う黒い猫ではなく、白い猫というのがまた目立つ。スカートは短く、服も小さめなのかそういう作りなのか、健康的な太ももと胸の谷間が露わになっていた。
恥じらうように頬を赤く染めてスカートの裾を抑える白﨑さんの姿は、こう、はっきり言ってエロい。
「どう、かな? すごく頑張ってみたんだけど……」
「お菓子持ってません悪戯してくださいッ!」
「ふぇ!? え、えい!」
顔を真っ赤にした白﨑さんに突き飛ばされる。
壁に体を押しつけられると、強引に唇を奪われた。
たっぷりキスされた後、白﨑さんの顔が離れた。唇に指を添えて恥ずかしそうに視線を逸らしている。
「い、悪戯したよ……」
「ご褒美の間違いですねありがとう!」
彼女にキスされるのが悪戯とか天国すぎる。
俺も白﨑さんも顔を赤くしていると、視界の端に銀と赤が混じる鈍い光が見えた。
白﨑さんを守るよりも先に血だらけの手が白﨑さんの口を塞ぐ。間髪入れずに銀の光――ナイフが勢いよく振り下ろされて白﨑さんの左胸に突き立てられた。
刃が白﨑さんに触れると同時に赤くて粘っこい液体が俺の頬に飛ぶ。遅れて錆びた鉄のような臭いが鼻に届いた。
「……は?」
「っ! いた……」
「え。これ……血?」
「あのさぁ。私の前でそんなにイチャイチャしないでくれる?」
白﨑さんの後ろから顔を覗かせる彩乃。
体を赤く染め、ナイフを持つ手も真っ赤にしている。同じ液体が白﨑さんの胸にも飛んでいた。
「彩乃お前……! なんてこと!」
「え? あぁ、悪かったって」
「それで済むわけないだろ!? 警察行くぞ!」
「大丈夫だよ翔馬くん。少し痛かっただけだし」
「少し!?」
「あはははは! 大げさだよ翔くん。これ、マジックナイフと血糊だし」
彩乃が白﨑さんの胸から手を遠ざけると、カシャン、という音と共に赤いナイフの刃が柄から出てきた。
小さく舌を出して彩乃が手を開く。そこには、個包装の破れた袋と血糊、それと鉄の粉みたいなものがあった。
「どう? 昨日ヴィクヴァンで買ってきたの。本格的でしょ?」
「お、お前脅かすなよ! 本気でびっくりしたわ!」
「ごめんって。それと沙耶香もごめんね。それ、洗剤で落ちるように加工したから。後で洗剤も渡すよ。強くやったことも謝る」
「ううん。いいよ」
「でも、あまり私の前でやりすぎると本物の刃に変えるからね~?」
脅迫のような文言を放って笑顔を向けてくる彩乃に思わず俺も白﨑さんも目をそらしてしまう。こわいこわい。
改めて彩乃の仮装を見てみる。
マジックナイフを持ち、全身に血糊を塗った若い山姥。夏休みの一件を思い出すと、この姿は冗談抜きで怖すぎるよ。
と、マジックナイフを片付けた彩乃が両手を差し出してくる。
「てなわけでトリック・オア・トリート! お菓子ちょーだい?」
「あ、私も! お菓子欲しいなって」
「もちろん。用意してるよ」
二人をリビングに通す。
今回用意したお菓子は、有名な喫茶店を経営する両親を持つネット友だちに教えてもらったもの。自分的にもいい出来だとは思うな。
カボチャのお菓子に白﨑さんも彩乃も目を輝かせている。これは彩乃にも隠れて作っていたから、これも悪戯ということにしておこう。多分だけど彩乃からお菓子もらえないと思うし。
二人がお菓子と俺に視線を交互させているのがとても面白い。
「そんなにしなくても、食べていいよ。自信作なんだ」
「「いただきます!!」」
「はい。俺も仮装してくるよ」
二人がカボチャパイを食べて頬に手を添えたのを見届け、俺は部屋に戻って衣装を着る。
今回用意したのはドラキュラの衣装。
ドンキーマートのコスプレコーナーで買ってきたもので、彩乃や白﨑さんほど本格的ではないけどいいでしょう。その分お菓子に力を入れたからな。
牙を嵌めてマントを纏い準備完了。
「オッケー! さぁトリック・オア・トリート!」
元気よく部屋に突入する。
ぽかんと口を開けて固まっている二人。あれ、なんだこの空気……。
「「格好いい……!」」
「え、格好いい!?」
「うん! さすが翔馬くんだよ!」
「お菓子あげるから悪戯して!」
「なんで!? これ、ワンコインの安いやつだよ!?」
まさかここまでウケるとは。なんかラッキーかも。
なんて思っていたら、彩乃が素早く俺を拘束して椅子に座らせた。逃げられないように固定され、白﨑さんがパイを乗せたフォークを近づけてくる。
「はい、お菓子だよ!」
「ほら翔くん! 食べて!」
「いやいやいやいや! これはさすがに!」
嬉しいけど恥ずかしい!
そのまま楽しく(?)ハロウィンパーティーは続く。
ただ、圧倒的に俺が悪戯された回数が多いように思うんだが!?
◆◆◆◆◆
ハッピーハロウィンです皆さん!
さて、今回も幼俺の番外編を読んでいただきありがとうございます!
今回もちょっぴりホラー(?)な展開あり、甘い展開ありの一話に仕上げることができたかな?
さて、ここで予告させてください。
途中、翔馬くんがネットで知り合った友だちにお菓子の作り方を教えてもらいましたよね? 実は、カクヨムコン7にラブコメを投稿予定で、このネット友だちが主人公をしちゃいます!
残念ながらヤンデレではありませんが、今回は甘さにステータスを振って書こうかと思います!
本編最終回の応援コメントで、次回はヤンデレ姉妹とか言っちゃいましたが、それは見送りますごめんなさい。
では皆さん、ハッピーハロウィン! そして、トリック・オア・コメント! 感想くれなきゃ悪戯しちゃうぞ!(冗談です。でも、もらえると嬉しいw)
そして、カクヨムコン初日に公開予定のラブコメと異世界ファンタジーもよろしくお願いします!
最後に。次回の幼俺番外編はクリスマスに公開予定です! お楽しみに!
幼なじみが俺の青春を全力で潰しにくるのですが?番外編 黒百合咲夜 @mk1016
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