第3話 出発
帰宅後は晩御飯まで荷造りをし始める。試験は三日間行われるので応募書類に必要と思われるものを持参するようにと書かれていた。
「とりあえず替えのパンツや服とか持って行くか。 あとはタオルとかかな?」
出雲は小型の鞄の中に替えの下着と服、そしてタオルを数枚入れていく。一人で三日間なのでそれほど荷物は増えることはなかった。出雲は荷づくりを終えると、愛奈から晩御飯だよと呼ばれた。
出雲の家は三階建ての一軒家であり、三階に出雲と美桜の部屋、二階にはリビングがあり、風呂場などの水回りが設置してある。一階には両親の個室と玄関がある。愛奈は二階から出雲を呼んだらしく、出雲は今行くよと大声で返事をしていた。出雲は荷造りをした鞄を机の上に置くと、そのままリビングに降りていく。
「今来たよー。 あっ! ハンバーグだ!」
出雲は母親が作ってくれたハンバーグを見て、大喜びであった。愛奈は明日頑張ってねと出雲に食べながら言うと、出雲はありがとうと食べながら答えていた。
「夜に出るの?」
琴葉が出雲に聞くと、出雲は水を飲みながら晩御飯を食べたら馬車で皇都に向かうよと言う。すると正人と琴葉がこれしか出来ないけどと言い封筒を一つ手渡した。
「これは何?」
出雲が箸を止めて封筒の中身を見ると、そこにはお金が入っていた。出雲はこんなにいらないよと言うと、私達にはこれぐらいしか出来ないからと二人揃って言葉を発した。封筒の中に入っていたお金は十万円であり、三日間で使う額には多かった。出雲は半分で充分だと言うが、余ってもいいから持っていなさいと言われた。
「専任で自警団で働いているとはいえ、給料は少ないんだからこれくらいさせて」
出雲の給料は月に十万円程度しかなく、今回の遠征費用を用意することは出来ていなかった。出雲はとりあえずあるだけのお金をと考えていたが、それにプラスをして両親からお金をもらったので、安心して三日間を過ごせる金額となった。
「ありがとう! 絶対明日合格してくる!」
出雲はそう三人に言うと、一気に料理を食べ終えて自室にある鞄を背負った。出雲はそのままリビングに移動をすると、三人にいってきますと笑顔で挨拶をした。
「お兄ちゃん頑張ってきて! この町で最初の騎士になって!」
愛奈がソファーに座りながら出雲に手を振る。
「応援しているからね! 何かあればすぐに電話してね!」
琴葉は笑顔で洗い物をしながら出雲に言う。
「お前は立派な男だ! どんな結果になっても俺はお前を応援しているぞ!」
正人はガッツポーズをして出雲を励ます。出雲は三人から応援をされると、頑張ってくると笑顔で言って家を出て行った。出雲は家を出ると、町の北側にある入り口の側に馬車が止まっていた。その馬車は人が二十人は乗れる大きさであり、既に馬車中に五人が乗っていた。出雲は馬車を御者する人に運賃を渡す。
「お願いします」
そう出雲は運賃である五千円を手渡した。受け取った御者はお乗りくださいと出雲に言う。出雲はありがとうございますと言い、馬車に乗った。馬車の中には皇都へ向かう人達が思い思いの話をしていた。
馬車の中にいる一人の老婆が出雲の姿を見ると、試験なのかいと話しかけてきた。出雲は話しかけられた老婆の方を向くと、麦婆さんと笑顔で言った。
「明日騎士の試験なんだ! これであの子との約束が果たせる!」
出雲と麦婆さんは騎士のことやどんな約束だったのかを話していると、周囲の人達が次第に寝始めたことに気がついた。
「もう十二時を回ったみたいだねぇ。 私達も寝ましょうか」
そう言われた出雲はそうだねと返した。そして座っている椅子に浅く座りなおすと、背後の壁に頭を預けて寝始める。出雲は騎士になれると思っているが、試験が過酷なことは知っている。
自分が騎士に絶対になれると思えば合格することが出来ると考えているし、例え厳しい試験で心が折れそうになろうとも約束をした女の子のためだと思えば乗り越えられると考えていた。出雲は明日のことを楽しみにしながら馬車の揺れと、開けてある窓から入る気持ちがいい風を感じながら寝た。
女神の少女と騎士見習いの輪舞 天羽睦月 @abc2509228
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