第2話 出張所

出雲はその騎士の試験に両親に何も言わずに勝手に応募をしたので、応募時は両親に怒られたが、約束を守るためだと説明をすると両親はそれが夢なのと聞いた。出雲はその問いかけにそうだよと答えると、夢を追いかけなさいと母親が出雲に言う。父親も好きな女の子を守るためだなと父親が言う。


「うん! 騎士になれば約束を守れるんだ!」


出雲のその言葉を聞いた父親は、好きな女の子のために命を懸けるのは良いことだと出雲に賛同した。出雲は両親の許しを得て正式に受けることが出来るようになった。


ちなみに出雲と愛奈の両親は共に三十代後半であり、父親の名前は正人、母親の名前は琴葉である。父親は黒髪の短髪であり、細身でありながらも筋肉質なのが伺える。母親は愛奈と同じく可愛らしい顔をしており、実年齢よりも若く見える。髪型は茶色がかっている髪色をしており、背中にかかるまでの長さをしている。前髪は眉毛から少し上の位置から右側に軽く流している。


出雲は父親と母親の顔のを半分ずつ受け継ぎ、愛奈は母親にそっくりという感じである。父親は国の警備組織で働いており、騎士よりも下の地位にいる。母親は地元の商店街の組合組織で働いている。出雲は必然的に誰かのために動くということを学んでいたようである。


家族に受けることを認められた出雲はより一層、剣や魔法の練習をしていた。剣は父親から魔法は母親から学んでおり、試験に臨もうとしていた。出雲は明日のこと、今まで練習してきたことを思い出しながら出張所に急いでいた。


「危うく遅刻するところだった! おはようございます!」


恵庭の外縁部の一角に位置する場所に建てられている出張所は平屋のコンクリートで出来ている白色の建物であり、前面がガラスで出来ていた。出雲のいる出張所は二人で切り盛りをしていた。


出張所所長の中年の男性と、出雲の二人だけである。自警団は都市に住む人々が独自に運営をしているので、人不足は深刻である。しかし都市を襲い危険な魔物は稀であるため、夕凪の国を守護している騎士達は地方都市や村まで来ることはほとんどなかった。


そのため、暮らす人々が独自に自警団を結成して身を守っているのである。自警団は専業でする人はいないため、働きながら時間を見て運営をしている。そのため出雲のように自警団の仕事を朝から晩までしているのは珍しいのである。


「おはよう、出雲君! ついに明日騎士の試験だね!」


出雲は出張所の所長である荒木誠一が出雲に話しかけた。出雲はやっとこの時が来ましたと言うと、緊張しますけどねと言う。


「それでも約束のために騎士になろうなんて立派だよ。 いずれ女の子のためじゃなく、自分のための夢も持つと良いよ」


そう言われた出雲は、いずれ見つけたいですと返答をした。出雲は出張所での業務を始めた。出張所では住民の人から依頼された仕事や、運営するための書類仕事が主な仕事となっている。依頼された仕事では都市で運営をしている各企業からの魔物の素材依頼が主であり、住民からの依頼では仕事の手伝いや警護の依頼などが主である。


出雲は明日が騎士の試験の日なので、書類仕事を主にしてくれと言われた。出雲はありがとうございますと言い、溜まっている書類を一枚ずつ処理していく。


出張所では、前面のガラスの前に美しい平原が見える。そこでは各種動物達や鳥達が楽しそうに走ったり飛んだりしている姿が見える。また、美しい草花が咲き誇り川の流れも見れるので、出雲は癒されてもいる。


「二人しかいないし、常駐は俺だけだから結構書類が溜まっているなー」


出雲は書類を仕分けしハンコを押していく。その仕事を十二時までこなしていくと、出雲は昼休みに入る。


「今日の弁当は何かなー?」


自席にて長方形の二段弁当を開けると、一段目には卵ふりかけご飯があり二段目にはウィンナーや卵焼きに焼きハム、最後に肉団子が三個入っていた。出雲は肉団子だと喜びながら弁当を食べ始めた。


「美味い! やっぱり母さんの弁当は美味しいな!」


出雲はそう呟きながら食べ進めた。そして、仕事が終わると出雲は家に帰っていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る