『世界の終わりのブルー・モーメント』
まずは主催のイトリトーコ様、並びに闇の評議員の皆様に心からの御礼を申し上げます。ときにロジカルに、ときにエモーショナルに繰り出される講評という名の読む祝福に心が慰められる思いです。別の川の元闇の評議員として一つひとつに講評をつける大変さ(夜更しさんに至ってはハシゴ……!)は理解しているつもりですが、この質をこの数で実現なされたことにただただ頭が下がります。
講評いただいた内容につきましても何一つ的が外れているなどということはなく、むしろ過分なる評価をいただき恐縮する限りです。以下に作者なりの振り返りと反省を記載いたしますが、いずれも頂戴した講評から逸れるものではございません。
(講評より引用)吸血鬼、連合軍の精鋭部隊、アンドロイド、などと、これでもかというような設定の盛り盛り! でありながらも筆致は淡々と、情景は美しく、無理なくすべてのピースが当てはまっているようです。この物語の焦点があくまで「ぼく」とリリィの二人の関係に合わされていてぶれることがないからこそのものでしょう。(引用終わり)
こちらはまさに今回意識した通りのことを汲み取っていただいた箇所です。これまでの川にて「短編を書け」「短編を」「短」と自分に言い聞かせるも、読書体験がいかんせん長編小説に寄っているがために「長編のスペックで短編に押し込む」ことから抜け出せずにいました。多分、短編というのは少なめの人数で、テーマやコンセプトをぎゅっと絞って、狙いすました一撃を放つものなのだと思うのですが。
そこで私は考えたのです。もっとちゃんと押し込もうと。
そういうわけで、三人称で書くと十全な説明が求められそうなところを独白体にして匂わせるだけに。「ストーリーのある詩」くらいをイメージ(あくまで自分の中でのイメージ)しながらどちらかというと状況説明より情景描写に比重を置くようフォーカス。
(講評より引用)展開するにつれて世界の状況と共に彼らの身の上が分かってきますが、その凄惨さに反して物語は穏やかで、戦闘すら多少波が立った程度の静けさの中で進みます。この描写力は凄いと思います。(引用終わり)
打って変わって、この静けさはあんまり計算で出せたものではない気がします。今回の作品を書くにあたり、「ブギーポップは笑わない」シリーズが何となく頭にあったのですが、そのときの淡々とした筆致の記憶が影響しているのかもしれません。
それと、私の中で何となく「世界の終わりというのはきっと静かなものなのだろう」というイメージがありました。とはいえ地球環境はしっちゃかめっちゃかになっているので外界は激しい状態のはずなのですが。
全てを諦めきった先で、たった一つだけ残った愛でるべきものを眺めて消えていくような情景が書きたいなー、というのが動機としてありました。そのときの主人公の感情を想像すると、生き生きと何かを描くというよりは遠くから淡々と目に写ったものを述べていくような形になるのかな、と。
(講評より引用)
>ぼくの血を吸いなよ。そう言うと、きみはふふっと軽やかに笑った。
>世界が終わる海辺で、ぼくはただきみが死ぬのを待っていた。
の、のっけからフルパワーのペガサスウウウウウウウウウウ!!!(鼻血を噴き出して倒れる)
死が前提になった物語……エモ…!!(ペガサスよ飛べ!どこまでも!!!)
(引用終わり)
ただこのネオサイタマさんの着眼点もとても嬉しくて、この二文を書きたいがために物語を書き始めたというのが正直なところです。その意味では、夜更しさんの「必要な要素を逆算して作っていった物語」というのもおっしゃるとおりで、この二文にふさわしいストーリーを生成したらこうなった、という感じです。
個人的なこだわりポイントは、冒頭は本当に海辺にいたのですが、終盤にもう一度この文章が出てくるときの「世界が終わる海辺」はブルー・モーメント(夜明け前に辺り一面が青く見える現象)の比喩表現でした。母なる海に帰ることと、吸血鬼にとっては天敵ともいえる青空に昇ることを両方入れられたのでYES! という感覚があります。ここでタイトルが決まりましたが、どのようにして私がブルー・モーメントという単語を知ったのか覚えておらず(これをきっかけに知った)、ひらめきとは不思議なものです。
最後に、テーマについて。吸血鬼も、アンドロイドも、多分人間目線からすると変な望みになると思うんですよね。本人達からすれば切実だけれど、人間から見るとよくわからない望みというのは、上手く書けば人から離れているだけに純化された美しいものに見えるんじゃないかな、というねらいがうっすらとありました。
加えて、「望みが叶わないこと自体が望み」であったり、「相手が幸福を感じられた時点で叶う望み」であったり、「相手の望みと自分の望みが一致したときに初めて実現する望み」であったり、ちょっとひねった望みのバリエーションを書きたいなぁと思っていましたが、何となく伝わっていましたでしょうか……? 何かしらひねらずにはいられないのは業のようなものですね……。
ということで、私の言葉がいずれも蛇足となるお見事な講評でございました。末筆ながら、改めて御礼申し上げます!
自作解題 綾繁 忍 @Ayashige_X
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