最終電車連結作業 ※その第二怪

ふぁーぷる

第1話 最終電車連結作業 ※その第二怪

 規則正しく、実直に行われる駅の作業。

 いつもいつも感謝しております。


 〜○〜


 <ドガン ガシャーン>


 いつも最終電車は連結作業が行われる。


 電車発車までの待ち40分。


 その待ち時間の中程で連結電車が2両到着して駅作業員のおじさんが

 一人やってきて2両間の連結作業を行う。


 ローカルな支線なので待つ人もほとんど居ない。


 みんな40分待ちを嫌って最終電車の一つ前に必死で乗る様だ。


 私はそこまで急ぐ気もないので気にせずにいつもの様に最終電車。


 そしていつもの様に連結作業をベンチに座って見守る。


 いつ見ても手際が良くて指先安全確認もギャラリーが居ようとも

 淡々とこなす駅作業員のおじさん。


 あんな実直な感じの人を選ぶと間違いないのかな〜とか思いながら

 作業を見守る。


 作業は最初にホーム柱の電話で多分作業開始の報告をして作業に入る。


 次に連結機の周りのチェック。


 <カンカンカン>


 これも手抜きなく車両の下にちゃんと潜って金槌で叩いて確認する。


 一切の手抜き無し。


 というか誰かの目線なんて視野になく点検作業、連結作業に集中してい

 る訳で仕事中も周りの目線を結構気にする私とは大違い。


 おじさんは、そう見てないところでもちゃんとやるべき事を実行する人

 なのだ。


 車両の連結部の確認が終わると軽やかに電車に乗り込んで電車内部から

 連結部の機械操作を行う。


 もう一つの車両には車掌さんの顔が見える。


 二人同時に行う。


 多分、圧縮空気か何かの弁を操作するのだろう。


 <シュー>っと空気が漏れる音がする。


 <ガシャーン>と連結機が握手してガシッと連結する。


 熟練の動きに惚れ惚れする。


 ただの作業員のおじさんと視野にも入れない人等とは別に私はその動き

 をじーっと眺める。


 それが終電の待ち時間の過ごし方。




 今夜もいつもの最終の時間。


 ただ今夜はちょっと違う。


 私は今夜は初の休日出勤帰り。


 正確には土日は完全休みなので休日出勤することはないけど。


 お客様対応で平日が祭日である今日初の休日出勤となった。


 やはり祭日。


 更に終電。


 誰も居ないホーム。


 裏寒い冬の寒さがホームの静けさを際立たせる。


 <ドガン ガシャーン>


 びくっとした!


 連結作業だ。


 おじさんが黄色い線の内側を電車に向かって歩いてくる。


 作業の流れは熟知している私。


 先ずは〜


 アレ…。


 ホーム柱の電話を素通りした。


 初めてのパターンだ。


 連結機の下に潜って<カンカン>。


 いつも通り。


 そして軽やかに這い上がって電車内に入って車内から圧縮空気〜。


 アレ…。


 空気音がしない。


 車掌さんを見つけようと反対の電車の中に視線を移す。


 うわーーーー。


 何なのそれ何なの。


 車掌さんがいる側の電車の窓に人の顔がビッシリと。


 照明は何故か点いてなくて真っ暗の車窓にビッシリと顔、顔、顔。


 あんな沢山人は乗れない!


 視線が釘付けになって動かない。


 足が足が勝手に駆け出して電車方に向かい始める。


 身体や腰はベンチに座ってるのに…。


 足だけが勝手に動き出す。


 身体が足にひきづられて行く。


 嫌イヤ〜。


 助けてあり得ない。


 何なのよコレ。


 手で足を押さえる。


 腰がブリッジの様な形で足に引っ張られる。


 <プシュー>


 ドアが開く。


 引き連り込まれる。


 喉が渇き切って声が擦れて出ない…。


 た・す・け・て

 た・す・け・て


 開いている電車のドアから幾本もの腕が伸びてくる。


 痩せた皮と骨だけの様な腕が…。


 あう、あう、あう


 もう足は電車内に駆け込んでいる。


 口に耳の穴に痩せた腕の手が指がねじ込まれて引っ

 張られる。


 ホームのコンクリートは私の引きづられた身体や腕や

 頭の皮膚が擦れて血のりでビチャビチャ。


 ドアが閉まる。


 作業員のおじさんが電車から出てきて指先呼唱する。


 作業完了。


 出発進行!


 連結した電車はゆっくりと動き始める。


 いつの間にかおじさんも消えている。


 祭日は乗車客が少ない。

 平日よりも最終電車の時間が二時間早い。

 乗車客が少ないので最終電車の連結作業も行わない。


 平日の最終電車の時間帯には電車は存在しない。

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