柊さん、こんにちは。
この小説はきっと先生の絶好調時の作品ですよね。ツボにはまりました。
刺激の少ない田舎に住んでいる奥さんは、パリのアバンチュールに憧れています。ある時、理由をつけてパリに来て、セレブを探し回ります。古道具屋で作家のヴァラン先生を見つけけ、彼がほしがっている布袋を買い、彼の家に届けるといって馬車に乗ります。この奥さん、どれだけセレブがすきなの?やりますよねぇ。
すると作家がそれは困ると馬車に乗ってきます。一日付き合ったら布袋は置いていかないという変な理由で、付き合うことになります。
作家さん、魂胆ありますよね、なーんて読者の私は思いました。
奥さんはセレブの生活が知りたいので、作家と森に散歩に行き、彼の私生活を詳しく訊きます。この作家、それにいちいち答えてくれるのですよね。えーっ、どんな人なのでしょうか。
次はカフェへ。そこでは作家仲間に紹介。
いいんですか、田舎の女性を連れていることを恥ずかしくないんですか。
その次は食事と観劇。劇場では、奥さんには熱い注目が集まります。奥さんが経験したかったセレブの世界ですよ。
それでいよいよ作家の家へ。
こんなに一生懸命尽くしたのですから、作家が何を企んでいのかわかりますよね。奥さんだって、それを期待しているわけですから。
でも、Nothing happened.
えっ、何なの、この作家。
作家はデブで禿、その上疲れすぎたのでしょう、よだれがたらり。
柊さん、
ここで奥さんが現実に戻って失望したのですか。
それがよく、わかりません。
私には、小説の中のこの作家が愛しく思えます。なんてよい人なのでしょうと。
作家は奥さんに訊きます、「何がしたかったんだい」と。
奥さんはパリでアバンチュールがしてみたかったと正直に話し、家を出ます。外では道路掃除をしている人がいて、奥さんは自分もゴミのようだと感じます。
そしてうちに帰って、寝室に行き、ひとり泣きます。
ザ・幻滅したから泣いたのですか。
誰に? 作家に? 自分に?
この作家のおじさん、信じられないほどよい人ですよね。せっかくそういう人に出会っても、つながりを深めてくい道がありません。田舎の奥さんはセレブを追いかけるだけの人で、現実には、何もっていないのですから。だから、泣いたのではないですか。
この作家のように、これまでしてくれる人間は現実社会にはほぼいないでしょう。
舞台になっている季節はいつですか。クリスマス近くですか。
もしかして、彼はサンタクロースだったのかも。
作者からの返信
九月さん、コメントありがとうございます。
絶好調と仰っていたので調べてみたら1881年の作品でした。まだ31歳でこれからというときですけど、さすがユーモアと含みのある話だなあと思います。
浮ついた憧れのせいで痛い目に遭うのは「夜会」にも似ていますね。これも田舎の人が都会のイメージに夢を膨らませすぎて現実にがっかりする話で。
多分奥さんは浮気する気満々だったんでしょう。記念みたいに。でも散々夢を見せてもらってこれからというときに作家はただのおっさんに戻って寝てしまうので、そこで風船がしぼんでしまったのではないかと。読者からすると作家はいい人ですが、奥さんにとっては失望ですよね。そしたら後に残るのは軽率な自分への恥の気持ちで、それが掃き溜めに棄てられるゴミと重なるのでは。奥さんが泣いたのは、自分への羞恥心だと思います。
奥さんに振り回される作家がやたらいい人ですね。現実ではこういうことってないでしょうけど。少しでも夢を見られたから、これで良かったって奥さんも思えるでしょうね。
ほんと、この奥さんの気持ちがよくわかる。結局、誰と結婚してもあんまり変わんないのよね。だったら自分のことを一番好きでいる人と結婚した方がいいよね、マジで。
などと一人思う。
作者からの返信
月森さん、コメントありがとうございます!
うーんなんか深みがある。。時間が経って分かることのひとつですね。。大人の言うことは聞くものだと最近思う。
編集済
柊さん、こんにちは😊
田舎に住んでいると都会に憧れたり、平凡すぎる毎日に辟易したり、誰もが一度や二度、自分の境遇に不満を思い、憧れる気持ちはあると思いますが、この主婦は思い切った行動に出ましたね。
たまたま有名な作家が見つかり流行りのレストランでお食事のあとは芝居見物など、いい感じに進んでいきましたが、やがて行き着いたのは……。
ザ・幻滅。
これには笑ってしまいました。
所詮、現実はこんなものですよね。
気づいて良かったです。
通りに出ると掃除夫の一団が箒で道を掃除をしているシーン。
このシーンが何か物悲しく彼女の気持ちを象徴しているようにも見えました。
作者からの返信
この美のこさん、こんにちは。コメントをありがとうございます😊
週刊誌の世界に自分も飛び込んじゃったって感じですね。
平凡な生活に飽き飽きするって気持ちは分かりますが、なかなか行動的で(^^;
憧れフィルターがかかっている間はどんどん見えなくなっていたんですね。ザ・幻滅に笑って頂けてよかったです(笑)
清掃夫の一団を出すところが上手いですよね。浮ついた夢が溝に掃き捨てられていくような。ちょっと残酷ですが、彼女の心を表していてとても印象に残ります。
滑稽でありながらも、しんみりとしてしまいますね。女性も男性も、情熱を追い求めて理想化してしまうところがあって。でも冷静になると、理想とは程遠い現実だったりするんですよね。
いびときとかよだれとか、毛の本数とか、リアルです。ただのおっさんじゃーん!と思わずつっこんでしまいました。
そういえば!私の友達がまさにこの彼女で、作家先生の家に押しかけて関係をもったんです。多分数年続いたと思うんですけど。
私から見たら「お爺ちゃんじゃん⁉」って感じで、友達もその人が好きというよりは名のしれた人であることが魅力だったみたい。ちなみにその友達、結婚してたし。
アヴァンチュールって、文中の言葉のように「浮ついた夢」なのかしら?
作者からの返信
さんざん浮かれたあとのベッドのシーンはなんとも残酷ですよね。舞い上がっていたものがすとーんと落とされたような感じ。作家が寝ているところの描写は翻訳ですが、これも男にとっては一種の残酷描写ですね。
ところでお友達、強者ですね。この話を地で行く人がいるとは。名の知れた人だったから魅力を感じた、というのがまさにこの作品の女性と同じですね。数年続いたとのことですが、アヴァンチュールって結局は一過性のものじゃないかなと思います。
この話は浮ついた夢がはじけておしまいですが、この奥さんにとってはこれでよかったという気持ちにもなりますね。
二話続けて楽しいコメント下さりありがとうございました!
うーん、やっぱり夢は夢、幻想は幻想、人間が享受できる快楽も、幸せも、やっぱりどうしても限界があって、これはどうしようもないですよね。
でも何となく、私もこういう風に女性に夢や幻想を抱き、幻滅した経験が、もっと些細なことならいくらでもあって、この女性の落胆、気持ちがわかる気がします。
そして他の人は分かりませんが、私は未だに夢を抱いて、あくまでも夢と割り切りながらもそれを楽しんでおります。
夢と割り切れば,それはそれで楽しいものです。
作者からの返信
夢や憧れであった方がよかったのを、なまじ近づくことができてしまったために打ち砕かれてしまいましたね。
アヴァンチュールの大小の差はあれど、人は何かしらこういう思いを経験することがあるかもしれませんね。
割り切れるのは大人であることでしょうね。この奥さんも、淋しいけどひとつ大人になってしまったんでしょうね。
続けてコメントもくださり、とても嬉しいです。ありがとうございますm(__)m
また、シビアな結末ですが、作家もお人よしな感じしますね。見知らぬ田舎のご婦人とカフェに行ったりお芝居へ行ったり夕食まで、そして泊まっていくし・・・笑 手は出さない冷静さがマダムに現実を知らしめますね。モーパッサン先生のお話のなかではどことなく温かみもあるような気もします・・・夢見る主婦をあざ笑う感じもしますけど^^
作者からの返信
神原さん、二話連続コメントを下さってありがとうございます。
見ず知らずの女性に一日付き合うというのも確かにお人好しですね。それだけプレゼントが迷惑だったのか笑 あと、こういう状況を面白がる作家の特性なんでしょうね。
素人には手を出さない、住む世界が違うんだってことを見せつけられますね。同時にフィルターがかかって見えなかった実態の描写が意地悪だなあと思います。ただのおっさんだし。
夢見る方も、憧れの対象になる方もくだらないよと言ってるみたいです。苦いけど上手くコメディに包んでありますね。
久しぶりの更新でしたがご感想いただけてとても嬉しいです。ありがとうございますm(__)m
非常に面白かったです!たぶん、相も変わらず私の感想はずれているのかもしれませんが(全くもってすみません!)、実はこの奥さん、物語の入り口まできて引き返しちゃったように思うんですね。
『背徳というものを知りたかった』
なんとも可愛らしいし、素敵な想いです。でも、彼女は表層をなぞるだけでやめてしまった。本当の物語は、幻滅にみえたその先にあったのに。
自分が求めた背徳の正体とは何だったのか?そこに至るチャンスが到来したにもかかわらず、詰めることなく終わってしまった。彼女の求めたAventureは定型化された模倣に過ぎなかったからかもしれません。
やはり、成りきらなくては!…でも、成りきっちゃうと破滅もまたリアル化しますからね(^^; 難しいところで。
面白かったです!ありがとうございました!
作者からの返信
呪文堂さん、二話ともお付き合い下さり、ご感想をありがとうございます。
ずれているなんてとんでもない。別の角度から突っ込んだご意見を聞かせて頂けるのは嬉しいです。視界を広げてもらえるようで。
幻滅を知ってからが本物というのは泥沼に本気で足を突っ込むことですよね。そうならなかったのは、所詮この奥さんの憧れがうわべでしかなかったから。まさにそうだなと思います。
あと、そもそも作家の方では相手にすらしていなかった、住む世界が違い過ぎた、ということも強調してありますね。入り込む余地など奥さんには最初からなかった、ヒロインになる余地はなかったということですね。
華やかな作家が決して色男ではなく、禿げ頭の小太りの男というのが上手いなと思います。あなたの夫と同じでしょ、という皮肉。
痛い思いはしたけれども、本当に成り切れなくてよかったのだと思います。
真摯で深いコメントにいつも感謝しています。ありがとうございますm(__)m
なんか、この女性のような思いを抱き実際に行動を起こせば、その先に待っていつのは期待したものと違う。
あるあるすぎて、人ってのは愚かで愛おしいですね。
実際には知らない人ですが、親友の知り合いに似たような人がいて、その結果を聞いて、ああと思ったものです。
かわいそうだと友人は話してましたが、確かに悲しいけど、なんていうか、バカなのとも思ったものです。
こういうことをする覚悟が足りないんでしょうね。
その相手は人気作家じゃなく、息子より年下の男性にって、そりゃ、もう結果は見えてますよね。
死にたいと泣いていたようです。
私は、こういうことを小説に書きたくないのは、なぜなんでしょう。書くと、美化してしまって。でも、それを読み、私もと思われると、結果は違うと知っているのです。
作者からの返信
雨さん、二話ともお読みくださり、ありがとうございます。
不倫願望の果ての惨敗、あるあるですね。モーパッサンはこの話をとても乾いた視点で書いてるなと思います。自分が作家だということもあって、この世界に対するひとの幻想を皮肉ってるようにも見えます。
ご友人のお知り合いの話は相手が手の届きやすい立場だけに泥沼化しそうですね。この短編の奥さんはこの段階で失望できてよかったのかも知れません。
雨さんが美化しない形で淡々と書かれたら面白そうだなと思います。だけど、こういう願望はきっと絶えないモノなんでしょうね。
ご感想とても嬉しいです。ありがとうございますm(__)m
柊さん、私、この話が一番共感できたかもしれません。
田舎の平凡な主婦が好奇心もあって、アバンチュール願望を抱いてパリへ。
現実はザ・幻滅。(ヴァラン先生の髪の毛20の哀愁に涙なしでは読めなかったです)
ラストがモーパッサン先生ですね。家に帰って泣いたのは掃除夫を見た事ですもの。
夢から醒めた時の落胆ぶりも分かります。私も泣く。きっと泣く。
「何がしたかったんです?」の質問もキツいですね。(´ー`)
柊さん、分かりやすくまとめて下さりありがとうございます。
原作のテーマをブレずに紹介するって難しいでしょうに、さすがです。
うん、布袋さん気になりますね。
作者からの返信
ハナスさん、二話ともお付き合い下さってありがとうございます。
コミカルに描かれているけど苦いですよね。夢が美化されるほどに落胆も大きいですから。作家の家を出た後に掃除夫たちを登場させるのがすごいなと思います。箒で掃き捨てられる比喩が残酷ですね。
作家の質問、考えたらこれも残酷なんですよね。
どういう作品が興味を持ってもらえるか分からないので、いつも更新するのに不安があるんですが、こんなに読み取っていただけると本当に嬉しいです。
布袋さんはちょっと不明ですね(笑)
ご感想心より感謝です。ありがとうございますm(__)m
夢は破れたけど、これで少しはダンナさんに優しくできるといいですね。
作者からの返信
陽咲乃さん、コメントありがとうございます。
奥さんにとってはこれで良かったんですよね。これからは旦那さんを見る目が優しくなるような気がします。