柊さん、
こんにちは。
ただ今、自分がホラーを書いているからといってここに来たわけではなく、クリックした作品がこのホラーでした。でも、よい機会なので、ホラー短篇とはなにか、じっくり読んでみたいと思いました。
それに、久しぶりに動画を見つけました。
https://www.youtube.com/watch?v=CKpvw_i6oic
モーパッサンとそっくりの髭の作家がでてきます。こちらは怖い効果音楽付き。彼が精神病院の部屋で、思い出して書いているという設定です。
この小説を読んで私が思ったことは、家具が動いたり、アンティーク店でなくなった家具が見つかったり、消えたりすることはもちろんこわいことです。でも、もっとこわいのはタイトルにもなっている「Qui sait」、つまり「Who cares」と誰も本気になってはくれないことではないですかね。
警官は考えられないほど愛想がよいですが、最初っからこのクレージーな作家を相手にしていないからですよね。
動画ではさいごのところで彼は神父さんに話します。神父は真摯になってくれて、あたたかくハグしてくれますが、その表情はやはりQuit sait.
だから、作家は自ら精神病院にはいり、わかってもらおうとその出来事を書いているのでしょう。
自分が経験したことを誰も信じてくれないなんて、まさにホラーですよね。
先生のホラーを読んで、やはり私の書いていたのはホラーではなく、おかしなミステリーだとわかりました(泣)
今回も、どうもありがとうございました。
作者からの返信
九月さん、コメントありがとうございます。
動画見てみました。主人公が思いっきりモーパッサンに寄せてきてますね。思わず笑ってしまいました。あと家具が出ていくのがやっぱり……笑 どうせなら行列にしてくれるともっと面白かったんですが。
「誰ぞ知る」って、結局のところ誰も分かってくれないだろうってことですよね。相手も分かるつもりもない。それが主人公を精神的に孤立させて、妄想(あるいは本物)を助長するんでしょうね。
先生のホラーは精神世界を視覚的に書いているものが多いですね。ストーリーより闇の深さの方が際立っていると思います。
家具たちが自分で動く場面は「美女と野獣」のアニメを思い出し、カラフルで楽しい画像で想像しちゃいました。(^o^)
モーパッサンの死因は知らなかったので驚きました。
才能が溢れ出て、おかしくなってしまったのでしょうか。
凡人にはわからないことです。
月頭男は、モーパッサンの脳内にいたのかもしれませんね。
作者からの返信
陽咲乃さん、コメントありがとうございます!
家具たちが出ていくところ、動物の動きになぞらえてあるのでどうしても笑ってしまうんですよね。ディズニーアニメ風な動きでやられるともっと面白くなってしまう(笑)
モーパッサンは若い頃から梅毒で目が悪くて、そのうち精神にも支障をきたすようになってしまいました。健康ならもっと長生きして書けたのに、と思います。。心理的に迫る怪奇譚はこの人の脳内を覗くようなところがありますね。
柊訳も面白いし解説もついててありがたいんだけど、だからこそ、原書の感じを自分で読んで理解してみたいなあ、と思うこの頃。
この作品は特にそう思う。文章から滲み出る狂気を感じられるか、とか、全くそういうのは無しに書かれてるのか、とか、自分で直接感じたい。
……さすがに今さら新しい言語の習得は無理ですけど。笑
原書と訳との違いって大きいですよね。空気感、みたいなものとか。「居酒屋」のディスカッションの時にそのことに気づいてしまって。
作者からの返信
月森さん、コメントありがとうございます!
自分で直接感じたいって、めちゃめちゃ分かります。翻訳には限界がありますよね。フランス語はわりと理論的な言語だと思います。それで、日本語はもっと情緒的なので、理論的に書かれている狂気や感情の機微を日本語にすると雰囲気がカタく感じて入りづらくなる、という気がします。
多分うまい翻訳者は文章そのものを訳すより原書の空気感をもう一つの言葉の空気感に合わせて訳せるんだと思います。でもそうすると多少の意訳も入りそうで、そうすると訳者のフィルターがかかるので……うーん、難しいですね……
柊さん、こんにちは😊
前半を読ませて頂いた時は、家具の行列が、あたかも「おもちゃのチャチャチャ」を思わせ、夜になると待ってましたとばかりに動き出すおもちゃを想像し、家具にも意思があって自由を求めているのかと思いました。
しかし、この作品を書いたその3年後にモーパッサンが精神病院で亡くなったことを思えば、彼の中で見えていた幻覚だったのかとも思えます。
恐怖に怯える毎日だったのかもしれないと思うと、「誰ぞ知る」は彼の苦悩の叫びとも受け取れます。
作者からの返信
この美のこさん、こんにちは😊 コメントをありがとうございます。
家具の行列のくだりにしろ、古道具屋の男の描写にしろ、この辺だけ見るとシュールな可笑しみを感じるんですが、物語全体としては主人公の錯乱して弱り切った精神状態が強く印象に残ります。
モーパッサンの怪奇譚は現象そのものよりも、追い詰められる心理の書き方が凄まじいんですよね。
色んな物語を生み出す裏側には不安や苦悩を抱えた孤独な男が見え隠れするようです。
僕この作品短編集で読んだの思い出しました。
不思議な家具の行列、そして戻ってきた奇怪。先生の見た幻覚の一部を垣間見たような感覚ですね。恐怖はその人にしかわからないものだから精神病棟に入ってしまった不安な気持ち分からなくもないけれど、病院に入ったからと言って不安は取れなかっただろうな…
作者からの返信
りくさん、コメントありがとうございます!
怪奇集に入ってるのかな。僕はふざけた書き方しましたけど、全体的にはひっ迫した雰囲気が流れてますよね。この作品は晩年に近いものなのでかなり本人の感覚が投影されているんじゃないかと思います。モーパッサンの場合は持病の先天性梅毒が進行して体に不調をきたして、そこから精神も蝕まれたということですが、自分の意に反して外側から来る脅威を書くのが上手いのはそういうことなのかなとも思ったりします。本当は健康でいて船に乗ったりしたかっただろうな、なんて……本当はもっと書けたでしょうにね……。
この主人公は自分からシェルターに入ったようなものですが、何かが追ってくるような不安はどこへ逃げようと消えない、というのが最後の行まで書いてありますね。
ご感想くれて嬉しいです、ありがとうございます ^^
近況ノートにコメントありがとうございました。
このエッセイのなかで、この「誰ぞ知る」がいまのところ、いちばん印象深いというか、単純に楽しめました。
月頭男がいいキャラで、鮮明にイメージが浮かび、作品の世界へ入り込むことができたためのようです。
オチも妙なリアリティがありますし。まあ、その理由は、本文に書かれていることが作用しているのでしょうね。
いま、Amazon Kindle Unlimitedで、モーパッサンの短編集が読めるので、この作品を読んでみようかなと考えています。
作者からの返信
青切さん、改めてレビューをありがとうございました!
この短編はどうしようか迷ったんですが、楽しめたと言って頂けると取り上げた甲斐があります。
主人公にとりついた強迫観念みたいなのが月頭男に象徴されているんでしょうか。モーパッサンの幻想怪奇譚はやっぱり心理描写の上手さに尽きますね。ぜひ原作でお楽しみください。
安寧の場が崩れていく、しかも、他者に奪われるのではなく、安寧の場が自ら自分をみ限るようにして消えていく。なんとも孤独な恐ろしさです。
何が恐ろしいって、自らが壊れていく、それを呆然としながら眺めている。これ以上の恐怖があるでしょうか。一見するとコミカルな描写が、コミカル故に誰にも理解し得ないという絶望が、柊さんのご解説からひしひしと伝わりました。
モーパッサン先生がどのようなお気持ちでこの作品を書かれたのか。なんだか、襟を正したくなる気分です。
天国にいらっしゃる先生に、安寧あらんことを。
作者からの返信
呪文堂さん、最新話まで追いついてくださり、あたたかい評価をありがとうございます!しかもレビューまで頂けるとは!このようなマニアな作品に光を当てて下さって本当に嬉しいです。
モーパッサンの晩年を思うと、その狂気と恐怖はいかばかりだったか...。まさに自分にしか分かり得ないことで他人が想像できる範疇ではないですが、こうしてその片鱗を「作品」として遺すところにプロの作家を感じます。作家としてだけでなく人生も短距離走者だったなと思うのですが、その分ひとつずつの作品が濃いなと思うのです。
いつも深い洞察のコメント、レビューともにとても励まされます。本当にありがとうございます!感謝と一緒に早くのご回復をお祈りしております。
編集済
柊さん、お疲れ様です。更新ありがとうございます。
前回のコミカルなミュージックからは想像できなかった結末でした!
自分からすすんで療養施設に入るという結末。モーパッサン先生は御自分の神経が追い詰められていく予兆を感じて、それを作品に投影されたのでしょうか。月頭の古美術商とあわせて読むと家具の行進も幻視っぽくて、他人様に知り得ない領分を淡々と魅せる御話と云う感じもしました。
神経を苛まれながら書くというところは、芥川龍之介先生と重なります。神経衰弱に陥りつつ、客観的な視点で執筆するというのは凄絶ですね。それができる凄さ、覚悟を感じます。本当の意味で怖いです。
作者からの返信
ひいなさん、こちらこそ後半もお付き合いくださりありがとうございます。家具の行進も月頭男もクスっと笑わせるような書き方をしてあるんですけど、それでも全体のムードは半狂乱になりそうな自分をなんとか抑えて語るという重たいものがただよってますね。モーパッサンは自分の人生経験を作品に入れ込むタイプだと思います。船とか、役人とか、女性関係とか…。この作品も本人と切り離しては考えづらいですね。まあ作家の人生を知って読む必要もないのでしょうが、投影するタイプの人だとどうしてもついて回るものですね。
「神経衰弱に陥りつつ、客観的な視点で執筆する」病状が悪化するほどどれだけ辛いものかは当人にしか分からないですよね。芥川の例え勉強になります。
昨日はコメントをありがとうございました。ぶれていた気持ちが真っ直ぐになりました。私が一方的にわーわー騒いでいるだけなのに、寛大な心で話を聞いてくださってありがとうございます。柊さんの優しさに甘えていますね。すみません。柊さんは上手にリフレッシュして気持ちを安定させているようなので、私も見習いたいです。
モーパッサン先生の「誰ぞ知る」
ストーリー的にはそこまで怖くないし、映像化したら楽しい感じになっちゃいそうです。
なのに、お腹の奥がゾワゾワとなる怖さがあります。
家族が病気になったとき、やはり幻覚を見たのですが、生が弱まって死が近づいているときの状態って、ちょっとこの世のものではないんですよね。そういうときの錯乱状態で文章を書いても支離滅裂だと思うに、ひとつのストーリーとして書き上げたモーパッサン先生はやはり才能があるし、頭のいい人だと改めて思います。でもだからこそ、幻覚に溺れながらも、それを客観的に眺めている自分がいる。自分に見えているもの、感じるものはどうやら現実的ではない。だったら自分の感覚と理性が捉えている世界はなんなのか。
そうやって読み解くと、「誰に分かる? 誰にも分からないだろう」というタイトルに私も、モーパッサン先生の切羽詰まった心情を感じます。
自分の見えている世界を話しても、誰にも分からない。でも、自分はその幻覚の世界に生きている。モーパッサン先生の恐怖と、それを眺めている冷静な自分とが混ざり合ったような感じが作品から伝わってきます。死と自分が自分ではなくなるって最高のホラーですよね。
ってね!こうやって読むから、気分がジェットコースターになるのよね。お口直しには、シモンのパパがいいですね♫
作者からの返信
もともと持病を抱えていた人なので、それが進行して目とか神経を少しずつ損ねていくのは、それこそじわじわとした苦しみだったんじゃないかなと思います。人間の内面をえぐるのが上手いですし、他の怪奇譚も、現象そのものよりそこからエスカレートする自縛や強迫観念をじっくり描いてありますね。この作品は晩年に近いだけに、解説とかも本人の精神状態と結びつけて考えられることが多いようです。
どういう心理状態で書かれたのかは僕にはなんとも言いかねますが、幻覚と現実の間でなんとか自分を保って書くことは相当なものだったのでは。底力というか、やっぱりプロの作家なんだなあと思います。
まあでも個人的な好みで言えば皮肉な人間喜劇とかの方が好きです。
丁寧なご感想ありがとうございます!今度は何かハッピーエンドなものを取り上げてみたいです。
精神病で亡くなった。すごく繊細な神経だったのでしょうね。
幻覚とか苦しかったのに、小説は理性的で現実的でもあると思うのです。もう1人の自分が自分を見つめて、追い詰めているような。
作者からの返信
この主人公の孤独主義はそのまま作家に重なりますね。病気がなければもっと書けたのかも…勿体ないです。もう一人の自分が自分を見つめて追い詰める。まさにそんな感覚があったでしょう。苦しみも作品に昇華してしまう、凄まじい熱量だと思いますね。いつもご感想くださり感謝です。ありがとうございます!
編集済
面白かったです。
読者によって捉え方が異なる話でしょう。
日本の幽霊画のようです。
誰の作品か忘れましたが、「堕胎」を経験した事がある人が見ると恐怖を感じ、全くないと普通の絵として見られるそうです。
頭で読む時と、心で読む時も違いますね。ん? 私もヤバい。笑
モーパッサン先生、最期は大変でしたが、これだけのホラーを書ける才能
いいなぁって不謹慎にも思います。
作者からの返信
とりとめのない紹介でしたが、面白かったと言ってもらえてよかったです!
頭で読むのと心で読むのとでは違う、ああ、そうですね。こういう作品は頭で理解しようとするものではないのでしょうね。こういう心理を物語として書き表す才能はやっぱり文豪だと思います。
コメント嬉しいです。ありがとうございます!
モーパッサン先生が、この3年後、精神病院で亡くなったと聞くと、これは本当に笑えませんね。
モーパッサンほどの人だから、きちんと作品にして世に出しているだけの話で、常人であれば、錯乱しただけの、訳の分からない作品になっていたかもしれませんね。
モーパッサン先生よく頑張ってくださいましたと、ねぎらうしかない気持ちです。
作者からの返信
作品に自分を投影しているものは他の短編でもありますけど、こういう闇の部分を物語として成立させるのは仰るとおり作家の手腕なんでしょうね。結構若いときから病気に悩まされている人ですし、どういう心情で書き綴るのかと思うと壮絶な気がします。
ご感想いただき、ありがとうございます!
ああ、自分の見たものが信じられないという種の恐怖だったんですね。ただでさえ人嫌いで独りでいたい人では、誰かに常に傍にいて支えてもらうことも難しかったでしょう。だからいきなり療養施設なんですね……そう思うと、なんだか寂しいですね。
だとすると、古美術商の男というのも本当にいたのか、あれは自分の内に潜むもうひとりの自分じゃないかという不安かも? と感じてしまいますね。自分の感じている世界が実は現実ではないかもしれない……うん、これはやっぱりホラー、というか悪夢ですね。行進する家具より間違いなく怖いです。。。
作者からの返信
自分から療養施設に入るというのが、避難所に逃げ込むようです。自分の精神状態を疑うよりも、ひたすら男から逃げたいという切迫感ですね。自分で選んだ孤独に自ら煮詰まっていくようにも見えますし。
古美術商がなんだったのかも分からない、色んな解釈ができると思いますが、こんなスパイラルに陥ると、まさに悪夢としかいいようがないですね。丁寧なご感想、ありがとうございます!
あれえ、最初おもしろいな~ディズニー映画かなと思って読んでいたのですが、最後のモーパッサン先生が精神病院で亡くなったくだりを読むと、全部反転して怖くなってきます。これ、先生の告白の書だったのかなあ……という気がしてくるんです。
柊さんの術中にハマっている気もする。
いつもかっちり物語の筋を決めてくる先生にしては、おかしいですよね。本当にあった怖い話だったのかもしれませんね。
とすると、理解者がいなくて悲しかったことだろうなあ……(´-ω-`)
作者からの返信
鐘古さん、コメントありがとうございます。
この作品、家具のくだりみたいに笑わせに来てるような部分もあって、先生がどういうつもりで書いたのかがちょっと不明です。ただこの一連のことが「自分の中の事実」なら、誰に分かってもらえる?というタイトルがはまりすぎますね。発表時はもうかなり病気も進行していたと思いますし。
自分の状態を自分で認めることも、理解者がいないことも残酷ですね。それでも書き残すのは執念としかいいようがありません。