柊さん、こんにちは。
モーパッサンの解説を読ませていただくだけで充分なのですが、実際に読んだり聴いたりしてみると、また別のおもしろさが感じられる作品がありますよね。
これはそのひとつだと思います。これは読んで参加型になって、楽しみました。
食べること、飲むこと、人とのおしゃべりが大好きなでぶの居酒屋の主人、ワーヌおじさん、世の中のすべてのことに文句を言っているマダム・トワーヌ。マダムは雌どりを育てるエキスパートですが、生まれつきそういう性格なのでしょうね。ふたりの喧嘩は、村のエンタテイメント。
さて、おじさんは脳溢血で、半身不随に。
とあることがあり、トワーヌが鶏の卵を抱いて育てることになります。最初はもちろんいやがるのですが、マダムが腹をぼこぼこ叩くし、スープも作ってくれないから仕方なく始めます。すると、トワーヌにだんだんと母親のような愛情が湧いてきて、夢中になります。トワーヌだけではなく、村人も、読者(私)もです。鶏小屋では雌鶏が七個産んで、三個失敗。では、トワーヌのほうは? 六個生まれて、二十分後にもう一羽。みんなわくわくです。さらに二時間待って、ひょっこり一羽が。十割の成功率。まるでテニスのマッチポイントを見ているようなおもしろさ。
トワーヌおじさんなんて、さいごのヒヨコに愛情が湧いてしまって、明日まで一緒に寝かせてほしいと言うくらいなのですが、マダムはノー。
さみしくなってがっくりしていると、友達が最初の鳥が育ったら、ソテーにするのはどうかなんて言うと、もともと食べ物大好きなトワーヌ、このところ食べていなかったこともあり、食欲のおじさんに戻り「もちろん」と大笑い。
これyoutubeにありました。
https://www.youtube.com/watch?v=qkkgtNoc69U
最初の部分は、見る価値ありだと思います。
鶏小屋が三角形の藁葺屋根だったり、その少し上にある居酒屋には、ブランデーの樽とか、瓶とかがたくさんあり、ノルマンデーの田舎ってこんなふうだったのだろうかと想像させてくれて、とても興味深かったです。ただドラマでは、最初に出てくる鶏を買いにきた夫人がすごく太っているので、トワーヌがそれほど太ってみえないというのが難点かしら。
下のはついでに見つけたのですが子供用の話で、足をけがしたトワーヌおじさんが、卵を抱いていたら、ヒヨコに愛情を感じてしまうというかわいいアニメでした。映画のトワーヌも、このおじさんくらい太っていたらよかったなと思いました。
https://www.youtube.com/watch?v=jeEIyJv6fPc
作者からの返信
九月さん、コメントありがとうございます。
ドラマシリーズのエピソード、この機会に観てみました。トワーヌはなかなか適役ですね。底抜けの明るさが出ててよかったです。確かに鶏を買いに来る女の人がトワーヌに負けないくらい太ってますが。。
ノルマンディーの田舎の風景がやっぱり絵になりますね。こういう場所がまだ残っているのがすごいです。映像にすると、セットとか衣装とかも見どころで、例えば男たちが来ている青い労働服なんかも知らないと想像できないものだなと思います。
あとセリフがノルマンディー訛りで、いかにも田舎の人って感じが出てますね。モーパッサンは小説の中でもノルマンディー訛りを変な綴りで書くので、解読が難しいです(笑)
モーパッサンの話はどうしても毒っぽさがありますが、この短編は単純に馬鹿馬鹿しくてシュールで、だんだんトワーヌが可愛く見えてくるのが好きです。
編集済
柊さん、こんにちは😊
トワーヌの熱量で鶏のヒナを孵すなんて、まるで漫画か童話のようなお話ですね。
母性が目覚めたトワーヌが可愛いです。
小さい頃、子供心に毎日卵を温めたらヒナが孵るのかなって思ったことがあります。
そんなことを思い出しました( ´艸`)
最後のオチはさすがモーパッサンと思いましたが、こんなお話しもモーパッサンは書いているんですね。
そう言えば、エトルタ、ググってみました。
石灰質の断崖が続く海辺は美しくて圧巻ですね。
有名画家たちが魅了するのも頷けます。
作者からの返信
この美のこさん、こんにちは。コメントありがとうございます😊
この話はただただ馬鹿馬鹿しくって好きです(笑)大の大人が卵を温めるって……なんでこんなシチュエーションを思いつくんでしょうね。ほんと漫画みたいです。でも子どもの頃って確かにそういうこと考えるかも知れないですね。どうしても毒っぽいオチにはなりますけど、この話は罪がなくていいです。
エトルタの画像ご覧になったんですね!真っ白な海岸線、絶景って言葉がぴったりです。画家が惚れる風景というのも分かりますよね!
世の中の男なんて口ばっかり!子供の一人も生んでみなッ!という強烈なお叱りかと思いきや、最後の落ち。参りました!
お話として面白く、しかしなんだかもやっとしたものをそっと置いていく。手練れですねえ。主張が強くなれば説教臭いし、なければないで薄っぺらいし。実に勉強になりました!
『愛情?欲求的現象だろ?』・・そこまでブラッキーじゃないですよね、モーパッサン先生・・( T∀T)
作者からの返信
呪文堂さん、コメントありがとうございます!
これは先生には珍しいというか、ギャグ満載のドタバタですね。にもかかわらずしっかりモヤっとさせるところがさすがです。正直なにが言いたいんだ?と思うんですけど、メッセージをこじつけないところがいいですね。
『愛情?欲求的現象だろ?』おお、これは鋭い!そこまで考え至りませんでした!読み込みの深さに感服ですm(__)m あながちそうではないと言い切れないかも……( T∀T)
この話、文庫で読んだときは今一つという感じでしたが、本作はとても面白かったです!
コメディは語りが重要ですね。
作者からの返信
いつもお読み下さり、コメントもありがとうございます。
文庫で読まれてたんですね!原作をご存知の方に読まれると緊張します。後で知ってよかったです。
ダイジェスト版ですが面白かったと言って頂けて光栄です!
コメディの語り口は本当に大事ですね。
オチ、まさかのブラックでしたね。
ある教室で豚を飼って、それを食べるという教育が日本で話題になりましたが、生徒たちは泣いてしまったそうです。
トワーヌ親父、ドライです。
作者からの返信
いつもお読み下さり、コメント、ありがとうございます。
自分で孵したヒヨコに母性愛が生まれるところが笑えます。
昔の人って家畜を普通に食べていたんでしょうね。愛情とドライな感覚と両方持っていたのかしら。
でもこのヒヨコはおかみさんが絶対守りそうな気がします(笑)
風曲がり村で起こった風変わりなコメディ❤ トワーヌが卵を慎重にあたためている姿を思い描くと滑稽ですが、生まれし雛鳥にとっては産みの親ですよね。なのに親の食欲が愛情を上回ってしまう……オチは本当に「微妙に黒い」と思います!
ところで「生まれつき不機嫌で、それをキープしたまま現在に至っている」トワーヌの奥さんみたいな人、社会に一定数、存在すると思います。脇役にもリアリティーと存在感がありますね。ところで『女の一生』は如何でしょうか? 不意に思い出しました(^.^)
作者からの返信
ひいなさん、ふた晩続けてお付き合いくださりありがとうございます。
巨体の男が卵を孵す図はシュールで笑えますね。母性に目覚めたかと思いきや最後の一言。人は簡単に変わりませんね (笑)
奥さんの性格描写ユニークですよね。確かに一定数いますねえ。短編が多いからかキャラを印象づけるのが上手いですね。
実は『女の一生』また読み返しているんです。長編だからこの連載とは別枠で取り上げようかと思っていて...。ただ書くのにはこの連載以上に時間と労力が必要ですね。
とりあえずもう一度最後まで読んでから考えるつもりです。
この連載の今後もまだ決めかねてます。
覚えていて下さってありがとうございます。嬉しいです ^^
こちらの短編、オチは微妙にブラックですが、思わず笑ってしまうような展開でした。私が読んだ新潮文庫のものより柊さんの訳の方が絶妙なセンスを感じました(*^^*) 夫婦関係がリアルで、こんな感じの老夫婦見た事があるな〜と思いました(奥さんがよく動く人で常にイライラしているのです)。
あと…私、小さい頃に友達が家庭で飼育していた鶏の卵をもらい、こっそり布団で温めて夜中に割ってしまい、両親に怒られつつも慰められたコトあります。「あの家の卵、無精卵なんだよ」って(笑)。懐かしい記憶が蘇りました(≧∀≦)
作者からの返信
葵さん、コメントありがとうございます。
重たい印象の強いモーパッサンの作品の中では、拍子抜けするほどおバカなお話ですよね。個人的にけっこう好きです。
文庫本だと真面目に訳さなきゃいけないでしょうけどね、この連載は(一応原文は尊重しつつ)自分の感じた雰囲気で好き勝手に書いてます。お褒め頂いて嬉しいです(*^^*) なんかこういう夫婦いそうですよね。
それにしてもまさかトワーヌと同じことをした方がいるとは思いませんでした(笑)無精卵でよかった……可愛い思い出のエピソードもありがとうございます(≧∀≦)