あたしのおめめはどこ?

 暗い地面の中で、永遠を感じるぐらいずっと探している。


(あたしのおめめはどこにあるの?)


 目がないから、自分の体がどこにいったのか分からない。

 手はどこにいったの? 

 脚は?

 長くて美しい髪はどこにあるの?



「くそったれ女! お前には死がお似合いだ!!」

 

 苛々とした悪意ある声が聞こえる。その声は、疲れ果ててヒリヒリしているあたしの心に、懐かしく沁み込んでくる。


(あたしに会いに来てくれたのね! 嬉しい。ずっとあなたに会いたかった)


 あなたが綺麗だと言ってくれた手。

 色気を感じると言ってくれた脚。 

 あなたのために伸ばした髪。

 そして、あたしの体の中で一番好きだと言ってくれた目。


 あなたは穴掘りに夢中で、あたしに気がつかない。

 誰かを埋めるつもりなのね。

 昔、あたしの体をバラバラにして埋めたように――。


 あなたの顔を見たいと願う。あなたを心から愛していたから。殺されても、愛することをやめられない愚かな女。


 あたしは見つけた手を地上に伸ばして、あなたの足首を掴んだ。


「ひぃぃぃーーっ! 骨がぁぁぁぁっ!!」


(あなたの目はふたつある。ひとつ、あたしにくださいませんか?)


 あなたを一目見ることができたなら、成仏できそうな気がするわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る