真夜中のクリスマス

 彼氏のいる部下の代わりに、残業をした。


 疲労した脳も寂しい心も甘いものを欲しているけれど、クリスマスの夜にコンビニでケーキを買う女なんて悲しすぎる。

 お弁当をレジに持っていく。


「板野先輩ですよね?」


 店員の顔を見ると、大学時代の吹奏楽部の後輩だった。


「三浦くん! ここでバイトしてるなんて知らなかった」

「僕、夜勤なんで。深夜に来たことありますか?」

「ううん。今日は残業してきたから、たまたま」


 封筒を手渡される。


「定期演奏会のチケットです。聴きに来てください。それと、もしかしたら運命かもしれないって思うので……」



 家に帰って封筒を開けると、チケットと一緒にメルアドが書かれたメモ用紙が入っている。

 三浦くんはトランペットで、私はフルートだった。パートも違うし、学年も三つ違う。親しく話をしたことはなかった。

 けれど、真面目に練習する三浦くんが好きだった。


 メールを送る。


『言い忘れてた。メリークリスマス! ケーキ買い忘れちゃった。まだ売ってる?』


 すぐに返信がくる。


『メリークリスマス🎄ケーキあります。バイトが終わったら、届けに行ってもいいですか?』


 仕事を頑張る私達に、サンタさんが再会という名のプレゼントをくれた。

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