リハビリ記録(第五回こむら川振り返り)
第五回こむら川朗読小説大賞に参加しました!
「イン・ジ・エンド」
https://kakuyomu.jp/works/16817139557833798791
「【生配信】夏だし怖い話するぞ〜!」
https://kakuyomu.jp/works/16817139557913684132
上記2本で参加したのですが、1本目が締め切り前日の夜、2本目に至っては締め切り時間15分前に投稿となってしまい、評議員の皆様には大変ご迷惑を……おかけいたしました……。
小説一覧を見ていただくとわかるのですが、カクヨムに小説を載せたのはかなりひさびさでした(直近は自作の二次創作だったのでオリジナル新作としては21年10月ぶり)。
かなり苦しかったのですが、せっかくなのでリハビリ記録として残しておこうと思います。
●そもそもなんで書かなかった(書けなかった)のか
シンプルに滑った(期待した評価が得られなかった)からです。
前回の第四回こむら川に出した「わたしの女」という作品がド滑りして、そのことの気持ちの整理ができないまま書けなくなりました。
初参加した第二回から、毎回百合×ホラー作品を書いてそこそこ評価いただいていたのですが、3作目にしてド滑り。星の数は第二回「擬態女」が190、第三回「シュレディンガーの消えた猫」が170に対して「わたしの女」は50(2022/9/5現在)。まあでも、他にも星50前後の作品はあるのでこれだけが直接的な落ち込みの理由ではないです。
前回の覚え書きから引用するのですが、当該作品を書く時にこういう思いがありました。
>やっぱり、評価されたり人に好かれたり刺さったりする話って「展開が面白い」ことよりも「感情的に刺さる」方が強いんじゃないかな、と思っていました。
これ。評価されたり人に好かれたり刺さったりする話を目指してしまい、自分にとって面白いと評価できる、自分が好きな、自分に刺さる話を書く努力を怠りました。他人に評価されるために書いたのに、自分が好き勝手書いたやつより評価されなかったことがトラウマになったようです。
とはいえこれに気付いたのはごく最近で、当時は単純に「ああもう終わったな、おれの小説はクソつまんねえんだな」みたいな感じで闇堕ちしてたので、小説を書こうという気にもならずズルズルとここまで来てしまいました。
●とはいえやるぞ! となるまで
書かなかった期間、自主企画に出そうと思っては期間内に書き上げられずに諦めるということが何度かあり、ひさびさに二次創作に戻ったりもしながらだらだらと過ごしていました。
ですが、こむら川は初参加で大賞をいただいたという大変なご恩があり、どうしても参加したいとは開催前から思っていたので、「とにかく2作品出す」と限りなくハードルを下げた目標を設定しました。
企画開始日が7月7日、で、「もう逃げられない」と思ってネタ出しを始めたのが8月7日。まる一ヶ月経ってます。正直、「小説を書くぞ」という気持ちに切り替えるまでのハードルがめちゃくちゃ高かった。「書くぞ」と「また滑るぞ」「おまえの小説なんか誰も読みたくないんだよ」がセットで想起されるので目を逸らし続けていました。「書いて出す」だけが目標だから……と自分に言い聞かせてなんとか覚悟を決めました(余談ですがこの間に28,000字の二次創作すけべを書いたりはしていた)。
ネタ出しで最初に出ていたのは実は2本目の方でした。「男性の一人称小説」で「対象作品はVtuberの方が朗読する」と決まっていたので、安直に「配信中に何かが起こるホラー」を書こうと考えました。ただ、気持ちが弱っている時ってマジで怖いことが思いつかない(自分の人生が一番怖いから)ので、肝心の内容が思いつかずに後回しに。ちなみにこの発想は絶対かぶるからホントは早く出さなきゃいけないな……と思ってたのですが、実際かぶってたんでしょうか? まだ参加作品ぜんぜん読めてないのでのちほど確認したいと思います。
もう1本はホラーじゃないやつを手癖で書こうと思い、日頃思いついたフレーズとかアイディアを散漫にメモしているものを見直しました。多分2020年の秋頃にメモしていたのが以下のフレーズ。
>ここで雨でも降ってくれていたら完璧なのに、生憎と空はカンカン晴れで、おまけに気温は39度だ。くそったれ。
このフレーズは気に入っていたので、ここから書き出そうと思いました。
●「イン・ジ・エンド」の話
メモには上記のフレーズのみ書いていたのですが、思いついたときの意図としては、「雨が降ってて物悲しい雰囲気であってほしいようなシーンなのに正反対の天気で、自分は悲しい気分に陶酔することも許されないのかという自虐的な気持ち」的なニュアンスだったのを覚えていました。最終的にこれが話の軸になりました。
ただの晴天だとパンチに欠けるので、100倍にして砂漠化SFみたいな感じにしよう、というのは割と早く思いつきました。「今日が晴れなだけじゃなく実はずっと雨が降ってませんでした」とか「いる感じで話してた恋人が実は死んでました」みたいなミスリードと最後の情報開示をやろうかと最初は思っていたのですが、上手くまとまらずに断念。後者は「帰郷」という作品で過去にやってますしね。
内容がなかなか固まらないので、雨に関係する/雨っぽい雰囲気の音楽をかき集めて聴いていました。その中にドレスコーズのtowaieという曲があったのですが、先述のメモに「towaieの小説」というのがありました。多分これは夢で見た内容のメモだと思うのですが、
>別れるみたいな話
>とはいえ、
>いつも入れてるスパイス
>カレーには関係ないけど入れる
>とはいえ、のスパイス
>ほんとは五香粉
>ちょうど良くなるみたいなふわっとした話
という割と意味不明なメモでした。「別れ」に関する話にしようかとはぼんやり思っていたので(雨が降っててほしいシーンで真っ先に思いついたのが別れだった)、これも使うことに。
あとは、昔から自分の中で「アンチドラマチック」「ドラマ(フィクション)で拾われない瞬間をドラマとして扱いたい」みたいな考えがあったのでそれも混ぜて……とばらばらの要素をなんとなーく組み立てて、あとは手癖でわーっと書いたのが「イン・ジ・エンド」です。
元がそれぞれ別の要素なので、ガタツキ感が出ちゃうかなと思ったのですが、読み返してみると思ったよりは形になっているかなという印象。同じことを繰り返しすぎているフシはありますが、それでガタツキが補正されてるのかなとも思います。
Twitterでも書いたのですが、この作品、相手の性別を確定する記述が一切ないのですが、評議員の皆さん全員相手が女性だと思っていたのが面白かったです。本人はなんとなくBLのつもりで書いてました。
ちなみにタイトルはこの曲から取りました。
ln The End - Justin Bond & The Hungry March Band
https://youtu.be/6iUb31toUAA
●「【生配信】夏だし怖い話するぞ〜!」の話
「イン・ジ・エンド」を書き終わったのが締め切り前日の23:20。この時点で2本目の内容は先述した配信者の一人語り形式ということ以外何も思いついていません。
最初に書いたネタ出しメモに「☆しゃべってる体でオチがわかる&面白いのは?」「スパチャ怪異orヒトコワ←けっこうすきかも ストーカーだと陳腐か」と書いてあったので、もうこの方向で突っ走ることに。
そこからあれが出力された経緯は……正直なにも覚えてません。書きながら嫌な方へ嫌な方へ振っていったという感じです。奇跡的にうまくまとまったなと思ってます。これが火事場の馬鹿力か。
普段生配信ってツイキャスの禍話くらいしか視聴しないので配信者の解像度が不安でした。こんな感じでよかったのでしょうか……?
一人称の主人公が実はゴミ野郎だったパターンがめちゃくちゃ好きなのでやれてよかったです。
●朗読のこと
2本目が顕著ですが、両作品とも基本的に「朗読用」と思って書いています。目で読むのではなく耳で聞くことに最適化しているつもりです。
1本目は言葉選びや言い回しなどを、音を重視して決めています。先に引用した書き出しのフレーズも音を考えて若干変えています。同じことの繰り返しに関しても、半分はなりゆきですが、もう半分は耳で聞く場合のリフレインの効果を狙っています。あと結構感想で触れていただいた「モジャモジャ」、これは一応元ネタがあって、松尾スズキの戯曲『まとまったお金の唄』の「(略)うちは、背負い込むねん……一生ね。……地獄の底までね。蒼木家のモジャモジャをね」という台詞から取っています。これも音にするのに非常に良い単語だなと思って入れました。傍点が多いのも、読み方の演出みたいな感じです。
2本目は更に振り切っていて、小説というより台本に近いです。が、台本と違うのはト書きがない点。動きもなければSE(効果音)もなく、台詞に当たる部分のみですべてを伝える必要があり、不自然な説明台詞にならないように情報を制限しながらことの顛末を伝えることに腐心しました。字下げしていないのも、あくまで話し言葉である(小説の文法ではない)ということで意図的です。
●講評へのお返事(2本分まとめて)
【謎の有袋類さん】
今回も主催ありがとうございました!
「イン・ジ・エンド」、「もろびとほろびて」との類似性に書いてから気付いたのですが、終焉系SFシリーズとして気に入っていただけてとても嬉しいです。
お墓に水をかけて後悔するくだり、実はこの作品の本質みたいな部分だなと思うので、そこがハマっていただけてよかった!
>「スパイス」が、生きていく上でのスパイス的な刺激と、二人を終わらせるきっかけになった五香粉にかかっている
これ、全く意識していなかったのですが、かっこいいのでぜひそういうことにさせてください。
「【生配信】〜」、ピックアップありがとうございました! hiddenさんの名前がジワるのはそれはそう……と思って笑っちゃいました。実はhiddenって名前すらも大して考えていなくて、こういう名前のネットユーザーいそう〜を適当に上げてたうちの一つでした。ほんとは怪異はhiddenさんじゃなくて別の人にしようと思ってたんですが、登場人数が多すぎて削ったんですよね。それでなんとなくhiddenさんが犯人役になってしまいました。
同接10人行かないくらいの配信でも転載されて炎上するもんなんですかね? しれっとなかったことになるかな〜と思いながら書きましたが、炎上して変死して、考察系の人に事件の考察動画あげてほしいです笑
【謎のお姫様さん】
講評ありがとうございました!
「イン・ジ・エンド」は言葉選びをかなり意識的に行ったので、綺麗と言っていただけれ嬉しいです。
ご指摘いただいた日常パートの推進力のなさなのですが、ここは半分意図的、半分力不足といった認識です。意図的な部分をご説明しますと、ここに「物語のゴールへ向かう矢印」を付与してしまうと、「日常パートがドラマ化する」≒ドラマチックではない日常をあえて取り上げるという主目的に反してしまうと考えています。あとから振り返った時に必要な要素ではありたいが、そのシーン自体からドラマ性を極力排除したい……ですが、推進力がないせいで冗長になり、単純に読んでて面白くないのであればそれはわたしの力不足です。研鑽していこうと思います!
>”主人公の視点ではドラマチックではない”けれど”私たち読者からするとドラマチック”
これは「アンチドラマチック」をフィクションでやろうとした時に逃れられない業だと思い、メタ的にはこれもまた一つのテーマだったので、感じ取っていただけて嬉しかったです。
「【生配信】〜」については、先述したのですがあくまで配信者の話した言葉のみに情報を制限するという縛りプレイだったので、読みにくかったらすみません! たぶん耳で聞くと割と自然かと思います。hiddenさんのコメントが読者に表示されないというか、配信者が拾って口にしたコメントしか読者は知ることが出来ない、という感じのつもりでした。
冒頭のドッキリはただ導入のためにやったのですが、結果的にうまく回収できたのでまぐれですが良かったです。怖いと感じていただけたならとても嬉しいです!
【謎の原猿類さん】
講評ありがとうございました!
「イン・ジ・エンド」について、
>逃げられるはずのない普通の日々が、非日常パートへと切り替わり、普通の日常の方から逃げられてしまう
これ、ほぼ同じようなことをメモに書いていたので、ちゃんと意図していた内容が書けていたのだなとホッとしました。
>良いと思っていたところが嫌な部分に変わり、決定的な言葉を吐いてしまうのは諸々の何かを思い出してグサグサくる描写でした
何かを思い出させてすみませんと思いつつ、こういう日常の話をする時に、読者の心当たりを刺せるというのはすごく目指している部分ではあるのでやった!と思ってしまいました。全く同じ経験はしていないが知っている質感、を出せていたならとても嬉しいです!
「【生配信】〜」の放送事故感、たしかに! こういう類型って面白いよな〜という肌感覚はあったのですが、やばい放送事故をYoutubeで検索して見ちゃう感覚ですね。あの感覚を文字で表現できていたなら嬉しい限りです。
>生配信は同じ時間に誰かとどこかでつながっている楽しさがメインだと思っているのですが、hiddenが現れた後は、見えている側と見えていない側で距離がどんどん開いており、配信者とリスナーの関係性が断絶した決定的な瞬間
このあたりも明確に言語化して意識していたわけではないのですが、同じものを見ているはずなのに実はそれが違った、断絶があったという恐怖、みたいなイメージはありました。
hiddenさんはジャスティス・ゴースト(生きているヤバな人間に鉄槌を下すオバケ)だと思っているので、配信者が今後ちゃんと痛い目に遭うといいですね!
●おわりに
で、今回も星的には少なめだけどどうなの? というところについて。今の星数は「イン・ジ・エンド」52、「【生配信】夏だし怖い話するぞ〜!」45(2022/9/5現在)。
でもやっぱり人目を気にして書いてないのでそこまで落ち込んでないですね。イベント参加数がとんでもなく多いので、まだ読まれていないだけだと信じています(読んで星入れてくれた方はありがとうございます!)。
ということで小説は書きたいものを書くに限りますね!!!!
今後の抱負ですが、今回はリハビリだったので次回は本気出して大賞をとって三冠王になろうと思います。
それでは!
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