「わたしの女」でやりたかったこととか諸々
第四回こむら川小説大賞に参加しました!
https://kakuyomu.jp/user_events/16816700426089065660
参加総数なんと118作……すべての作品に丁寧な講評をつけてくださった闇の評議員の皆様、ありがとうございます!
わたしは2作品で参加させていただきました。
「異能と凡才」
https://kakuyomu.jp/works/16816700426093082377
「わたしの女」
https://kakuyomu.jp/works/16816700426852109865
1本目は一応一番槍狙いでスピード勝負で頑張ったのですが全然間に合いませんでした。シンプルな着想をとにかく早く完成させる、ということだけで書いたのでここに書くようなことはそんなにないのですが。
2本目の「わたしの女」はひどい難産でした。というのはかなりたくさんの要素をなんとか回収しようとしたのですがなかなかプロットが固まらず、結局本文を8時間くらいでわーっと書くことになってしまいました。
出来上がったときはハイになってるので「RTAなのにめちゃくちゃおもしろい! これはイケる!」と思ったのですが、いただいた講評や反応を見ていて「ああ、ここはこうすべきだった」と反省がむくむく湧いているのでここに反省文を認めます。
色々思うところや挑戦したことがあり、かなり長めになっています。ご笑覧いただければ幸いです。
講評へのお返事は最後にあるので、長かったら最後まで飛ばしちゃってくださいませ!
●やりたかったこと
わたしはもともと二次創作BLを書いていました。一次創作ではどんでん返しや構成を褒めていただくことが多いのですが、二次創作ではもう少しエモいものも書けていたと思います。二次創作でやってたような、切なかったり悲しかったりあるいは喜ばしかったりという感情の部分が主眼になる作品を一次創作でも書きたい。これが1つ目のやりたかったことです。
この点に関しては、自分の二次創作だけでなく、他の人のカクヨム作品を見ていても強く感じました。
やっぱり、評価されたり人に好かれたり刺さったりする話って「展開が面白い」ことよりも「感情的に刺さる」方が強いんじゃないかな、と思っていました。
二次創作ではできていたはずだし、小説や映画などでも自分自身感動したり悲しくなったり泣いたりといった反応はするのですが、一次創作のネタを考えていると、そういうものがさっぱり出てこないのです。
「展開が面白い」一本で突っ張るのは限界があるなと感じており、なんとか人に好まれる、感情を動かすような話が書きたい、と、今振り返ると結構邪悪な動機なのですが、そういったことに挑戦したいと思いました。
もう一つは「百合ホラー」を書くことです。
初参加させていただいた第二回こむら川、この冬にあった第三回こむら川、どちらも百合要素とホラー要素がある作品を書きました。ありがたいことにどちらもご好評いただいており、今回も同じく「百合ホラー」で行きたいというのは最初から決めていました。
さらにこれはあとから出てきたのですが、「恋愛としての百合」を書くというのも今回のテーマになりました。
過去2作品はストーキング(恋愛感情かは不明)と強い友情という感じの百合で、そこに性欲を噛ませていませんでした。
一次創作でBL作品も書くのですが、BLの方は当たり前にセックスしてる前提で書くのに、なんで百合からセックスを抜いてるんだよ!? と自分に対して腹が立ってしまい、ちゃんと性欲も含めて描くと決めました。
●「エモ」に対するアプローチ
「二次創作でやっていたようなことがやりたい」ですが、直近で書いてたジャンルはわりと特殊な前提があり、ぼかしてざっくり言うと「前世の記憶がある設定にすると色々といじれて捗る」というものでした。幸い今回のテーマが「異能」だったので、もうそのまま「前世の記憶がある異能」にしようと思いました(杏菜の霊能力的なやつは、二人が出会うために付与されただけで、メインで想定していた異能はマリの「前世の記憶」の方でした)。
要は「前世で因縁ある二人が生まれ変わって、どっちかが覚えてたり覚えてなかったり、両方覚えてたりすることによってすれ違ったり憎み合ったり愛し合ったりしてエモいね」みたいなことがやりたかったわけです。
主要登場人物をA、Bとして、どっちが覚えてる・覚えてない・その結果どうなるの組み合わせを洗い出しました。
同時に、「人はなにで感動したりエモいと思ったりするのか?」を考えました。二次創作はやはりオリジナルのブーストが大きい・キャラに対してすでに思い入れがある状態なのでエモい話も思いつきやすいのですが、一から「いい話」「エモい話」を思いつくためのシナプスがわたしにはありません。
なので、過去に書いたエモいであろう二次創作の話を逆に要素分解して行きました。(これは皆さんにとっては当たり前かもしれませんが)「別れ」「死」「自己犠牲」らへんがやはりエモいのではないかという結論に達しました。
先に洗い出したパターン✕自己犠牲や別れをクライマックスに持ってくる構成、を何パターンか考えました(この時めちゃくちゃ音楽の力を借りました)。
結局4パターンくらい考えたのですが、締切が迫り、文字数の関係・現時点で見えている景色のクリアさなどから以下のメモ案が採用になりました。
------
ポジティブ別れ系
Bが死ぬんだかなんだかで二度と会えない
「でも次でまた会えるんでしょ」「見つけてくれるんでしょ」
わたしが死んだあとのこと知りたいからちゃんと生きてよ また次に会おうね
的なやつ
------
ここからもう少し話を詰めていく過程で、B=杏菜が前世の記憶がない設定からある設定に変わったりするのですが、とにかく本作の主眼は「死ぬけどそれはポジティブなもので愛情ゆえである」という点で感動を誘いたい、というものでした。
●「ホラー」に対するアプローチ
上述のように「エモ」に対する比重が高かったので、ホラー要素は後付で考えています。どちらかが死ななければならない状況を作るための困難の要素としての取り扱いです。
ですが、わたしは「ホラーじゃなくていいものにホラーを利用する」のが大嫌いです。
この時点で実は破綻していたのですが、もう時間もなかったので「ちゃんと怖くする」という線引きで押し通してしまいました(ギリギリまで近未来の戦争みたいな設定にするか悩んだ)。
ホラー要素以外のプロットがある程度固まって「杏菜がマリの身代わりに死ぬ」という展開が必要になりました。わたしはどちらかというと実話怪談系のホラーを書くことが多いので、「身代わりに死ぬ」みたいな展開の引き出しがありません。また、二次創作ではないので、マリと杏菜が仲を深めるエピソードも本編中で描かなければなりません。
これらの要素が入っているのは「Jホラー」であると気付きました。過去に見た作品を見直したり、あらすじを読み直したりして参考にしました。具体的には「着信アリ」「仄暗い水の底から」です。
Jホラーの基本的な骨子
主人公が怪異に遭う→協力者に出会う→怪異の原因・呪いの解き方を探る→その間に怪異がひどくなる→原因特定し呪いの解除に挑む
というものを踏襲しました。
●「エモ」に対するアプローチ2
前世の部分についてです。単に前世で付き合ってて再会して相手が覚えていなくて……だけでは別にエモくないし弱いかなと思いました。
前世での因縁がある二人だからその記憶を引き継いでいる、という方がいいかなと思い、まあわかりやすい因縁だとやはりどちらかが相手を殺したとかかなと。
転生モノということもあり、前世はある程度昔、でもわたしは日本史に疎いので近代以降にしたいと思いました。近代以降で百合と言えばエスだろうと。
調べると、エス流行に伴い、女性同士の心中が多くあった時期があるそうです。なので心中で行こうと思いました。
相思相愛ではあったが決して幸せになれない二人だから(無理)心中した、来世で一緒になろうと約束したから記憶を持って生まれてきた、その二人が再会して、でも命の危険にさらされて、前世で相手を殺したほうが今度はその身を呈そうとした時に、殺されたほうが全部わかった上で身代わりになる……こう書くと結構エモいと思うのですが……エモいはずだったのですが……。
●反省点
講評でも指摘いただいている点なのですが、大きく3つあります。
・エモさが全然伝わらなかった
・ホラーとしても中途半端になった
・ご都合主義な展開
「エモさが全然伝わらなかった」
これは致命的です。わたしとしては杏菜が身代わりになって、マリに嫌味混じりの手紙を残しつつ再会を前提としているところがめちゃエモだと思って書いているのですが(深夜だったのでちょっと涙ぐんで書いてた)、たぶんそこは全然伝わってないっぽいです。
言うたら「泣けた」「いい話」「切ないけど云々」みたいな感想をいただける作品を書くはずだったのですが……。
これはたぶん、杏菜の内面がわからなすぎたかな? とか字数に対して出来事を詰め込みすぎて、ここでエモを感じられるだけの緩急が作れなかったかな? とか手紙だけのネタバラシだと弱かったかな? とか色々考えています。
ここが失敗しているので、今回やりたかったことは全面的に失敗と言ってもいいかもしれません(自分で読むとエモいんですが!!!!)。
ここに関しては、ぜひこういう理由でエモさを感じにくかったなどご意見いただけたらとてもうれしいです(言いづらいかとは思いますが……)。
「ホラーとしても中途半端になった」
この点は本当に落ち度だなという感じです。エモくしようということに集中しすぎて、エモいシーンが終わったから終わりー! と筆を置いてしまいました。あとエモが目的だったので、一応怪異は対消滅したことになってました、自分の中で。
ですが講評でもご指摘いただいた通り、まあ「怪異は終わってないぞ」的な大オチをつけるのが、Jホラーとしてもセオリーだったなと思います。
「ご都合主義な展開」
これもご指摘いただき、まあその通りだなと……。エモいラストに向けて必要なシーンだけで構築しているのでこういうことになります。これは難しいですね。どうやったら解消できるのだろうか……。
ちょっとまた既存のホラー作品を見て研究してみようと思います。
●自分的にうまくできたところ
反省だけってのもなんなので、自分的に気に入ってるところもいくつかあげておきます。
・謎解きホラーの展開はわりとうまく転がせた気がする
・怪異の原因の女性の心中と前世の心中を絡めてわりとうまく情報開示ができた気がする
・溺れさせてくる怪異はわりと新鮮だったのではないか
・怖がりながら欲情させるの結構無理あるな〜と思ったけど頑張れたのではないか
・前世のところ
・よくわかんないけど書いてる時楽しかったので良いのではないか
●講評へのお返事(2本分まとめて)
【謎の有袋類さん】
主催お疲れさまでした!
「異能と凡才」気に入っていただけて、ピックアップもしてくださってうれしいです! 「異能」ってこういうことを念頭に置かれたテーマかなと思ってました笑
前半後半でグルンがあるやつをいつも褒めていただけるので、今後もグルンを極めていきたいです!
「わたしの女」について、怖いと言っていただけたのが実は意外でした!(怖くしようとはしたのですが、エモメインだったので怖さは控えめかな〜と思ってました)やっぱりちゃんと怖いものが書きたいのでうれしいです。
エモい百合に振るにはホラー展開をしっかり入れてしまった気がするので、ちゃんとホラーとしてのオチをつけるべきだったな! とご指摘いただき気付きました。ありがとうございます!
あとアンの口調、わたしも気に入っているのでうれしいです。かわいいですよね!
【謎の野草さん】
講評お疲れ様でした!
「異能と凡才」、自分では気付いていなかったのですが、おけパ流行を引いて講評していただき、なるほど! と思いました。確かに昨今、創作者あるあるが流行っていますね。無意識ですが流行りに乗れてよかった!笑 半ば私小説ですが、共感していただけたのならうれしいです。
「わたしの女」、主人公の認識を疑いながら読んでいたとのこと、なんだか申し訳ないです……!笑 上にも書いたのですが、テーマの「異能」を「前世の記憶がある」で解釈しており、それは特にミスリード要素ではなくそういう前提として書きたかったのですが、やはり普段の作風的にも、そのファンタジックな設定を納得させる工夫が足りていなかったかなと思いました。
>アンの深い愛情表現かつ前世の顛末へのちょっとした「意趣返し」にもなる
ここを読み取っていただけたのがとてもうれしいです! 今回の主題はここだったので。
あと蛇足ですが、アンがメモを書いたのはタクシーの中と考えています(不自然に一人になる時間を作ったつもりだった)。流石にもっと前から予想はしてない(してたら回避してほしい)と思うのですが、もう少しわかりやすい工夫ができたらなと思いました。
【謎の機械さん】
講評お疲れ様でしたロボ!
「異能と凡才」の講評の
>その異能の説明文が単なる能力を書き出しただけの文章ではなくて説明文だけで小さな短編みたいになってるんロボよ
この部分、とてもうれしいです! 流石に1話まるまる設定のみってキツイよなあと思って、少しでも読み応えがあるようにと考えたので……!
前向きな話にしたかったので、終わり方も気に入っていただけてよかったです。
「わたしの女」ですが、まず濡れ場をしれっとスキップしたこと、大変申し訳ございません! カクヨムのレーティングがよくわからないのでビビって書けませんでした……百合エロの修行をして拡張版が書けたらと思います……!(ちなみに前世のときは十代なので現世のほうが成熟した肉体になります)
書き出しの部分も「短編のスタートダッシュ」を意識したので触れていただいてうれしいです。銃口はちょっとズルだったなと我ながら思いますが笑
●悔しいので改稿します!!!!!
そのうち!
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