第十九回 ……涙と、決断。


 ――それは、本当に葉月はづきがしたいことなのか?



 頷く。こくりと。


 鏡がないと、今の僕の顔……表情はわからないけど、

 きっと涙目。……涙が溢れていることだけはわかる。



 そして、パパは言う。


 ――思い切りやれと。


 あなた? と、ママは驚く。

 いいじゃないかと、パパはママに温かな眼差しで、


 ……こうも言うの。


 葉月が初めて、自分からしたいことを見つけたんだと……


 先生、お願いしますとも。


 笑顔の見本の笑顔で、令子れいこ先生は……


 後悔なんかさせませんよ。

 きっと、きっと輝ける思いこれからを、お約束しますね。



 笑顔の中にも涙……


 令子先生は少し泣いていた。まるで……


 まるで、僕の事情を知っているかのように。


 ――僕は確信と決断をする。


 令子先生が、僕の生涯で一番に残る先生なのだと。


 そして周りにも。


 体操着の千佳ちか先輩。制服の梨花りか先輩。同じく制服の藤岡ふじおか……可奈かな先輩。僕と同じ星野ほしのの系統で結ばれた先輩たち。きっと、きっと生涯で、これほど素敵な出会いはないよ。



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