第五回 それは小さな冒険でも……僕には大いなる冒険。


 ――出た!



 ついに、ついに出たの、お外に。


 窓の外。そして今、お家の外へ。



 感動するほど暑い。

 ほんのりと、僅かばかりに涼しい風は、心地よい汗を誘ってくる。


 それに穏やかな音。それは素敵な音階。

 蝉の調べも、僕には感動の一種。



 ポエムポエムポエムと、書き綴る。――僕は決して地球温暖化を侮ってはいない。なぜなら対策を施しているの。……赤いリボンの白いハット。それに合わせた同じく赤いリボンを胸元に飾った半袖の白いワンピース。丈は膝下まで。


 それからね、白い靴下と赤い靴……ちゃんと履けたよ。


 肝心なのは、白は熱を弾く色。

 ……ということなの、たぶん。



 赤いポシェット……大き目で、女の子のお荷物は多めなの。第一に水分。スポーツドリンクは欠かせない。僕はこれ……ポカリスエット。熱中症対策にはお勧めだよ。


 そして小さな前輪と、頼りになる大きな後輪……車椅子。

 それが、僕の両脚の役割を担う。それからノート。そしてペンなの。


 僕の小さな冒険の……ううん、きっと大いなる冒険の予感がするの。


 だから僕は書く。


 これから起こる僕の冒険。このポエム擬きに記すのだ。

 それは僕……星野ほしの葉月はづきという女の子が、生きてここにいたという証を……。



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