時代の方位


 煙が消える岸辺の湿度が、熱を纏う雲になるまでの一日は、境目を越える冒険の日々と同じだった。甘くかよう街道から外れて、窓の近くに小さな星を見る。その心よりもはるかに小さな一瞬が、煙を作るには満ち足りた幸せをもたらしている。裏切りではない身体の奥からの変貌を、皆はどう思うのか。わからないという行動の鈍い音は、街道の中で小さく反響して完結する。目的地へのエンジンの動きは単調で、代わり映えの無い身体が影のように乗車した。好きは観念のままオイルに浸して、夕暮れまでには黒くなっている。


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雨の幻想 フラワー @garo5

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