広がり


 粘膜を過ぎたばかりの広場では、大きな荷台を曳いたトラックが止まっている。帰る場所が新しくなるまでと、脈を数える青年の顔の困惑と楽観。二つの声が混ざりながら、人気のない午後には雲がかかっていた。エンジンが何気なく音を立て、粒のような泥水が飛び散る光景を、皆は見ていた。時代の眠りが鈍い雲を連れて街を閉ざすとき、青年たちは宛もなく新しい広場を目指して去るはずだ。沼のように冷えた都市は、彼らに捨てられる。彼らが捨てるのは都市だから、雲の行く手には彼らがいる。トラックは自由に駆けて、不合理な場所へも突き進み、雲を遮るものは何もなかった。

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