第五十四髪 後悔を 胸に秘めつつ 進む道

「それで、あれからどれくらい時間が経っているのかね」


 例の羽衣スーツに着替えた慎太郎は、会議室へと向かう道中で大巫女だいみこに現在の状況を確認していた。


「実は……、すでに四日以上経過しております」

「やはりそうか。色々とすまない」

「いいえ、そんな。お戻りになられたこと自体が奇跡としか言いようがないので、慎太郎様のお気にむことではございません」


 大巫女の心底しんそこ安心した顔を横目で見ながら、先日行われた会議で伝えられたスケジュールを思い返す。

 計算が確かなら、本日はついに決戦の日だ。

 慎太郎の主な行動スケジュールは、地下迷宮とハーピィの里でもう少し時間がかかるだろうという前提で組まれていたため、若干の余裕よゆうはあった。

 が、与えられたその猶予ゆうよを少しでも状況を確実にするために使うことは出来ただろう。

 やはり、やまれる。

 が、終わったことをくよくよしても仕方ない。

 慎太郎は、向こうで言葉にした決意を胸に、前を向く。

 開け放たれた会議室のとびらの向こうでは、多くの人が彼の到着を待ちわびていた。

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