第五十二髪 胸秘める 決意を口に 出す勇気
下北沢の問いかけに対して、慎太郎は真剣に考える。
正直、怖い思いもそれなりにしたし、これから先は黒き神との最終決戦となるだろう。
無事、こちらに戻ってきても、
それに、当たり前のことだが、こちらの世界の方が生きるには便利だ。
食事の
現代と比べてしまうと、どうしても
得られるものは、はるかに少ない。
だが。
「ああ、
慎太郎は一呼吸おいて、下北沢の
「私を
その言葉は、
下北沢はそんな慎太郎の
それは、何の変哲もない御守りだった。
何か入っているのだろう、
「これは……?」
「私の家に代々伝わる御守です、持って行って下さい」
「気持ちはありがたいが……、急にどうしてこれを」
「室長、お聞きしますが、こちらに帰ってきた後、あちらの世界へ戻れては
いますか?」
「いや……、少し眠ったはずだが、そのままだったな」
「もしかすると、室長はこのままだと、もうあちらの世界には戻れないかもしれません」
「何、そうなのか?!」
にわかに信じがたい話だが、下北沢の表情は真面目そのもので、しかも明らかに何かを知っている様子であった。
「ルミーノとの間で二度も無理やり引き戻され、しかも時間がさほど残り少ないとなれば、今の
「下北沢君、君は一体……何者なんだ?!」
「私のことはこの際どうでもいいでしょう。室長、貴方の成すべきことは何ですか」
「あの世界を救うことだ」
「そう。そのために、この御守がある。この御守はただの御守ではありません。私の母方の一族である
「赤き竜の、力……」
「信じてもらえなくても構いません。とにかく次に眠る機会には、必ずその御守を握りしめて眠って下さい。ただし」
一呼吸おいて、下北沢は続ける。
「御守の封を開けて、中を見てはいけませんよ」
まるで昔話の決まり文句のような口調でそう言うと、ちょうど運ばれてきたアイスコーヒーを静かに
慎太郎はただただ、うなずくしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます