第七十三髪 朝を無事 迎えるという ありがたさ
「う、ううむ……ここは……」
強い
少し目を閉じ、早くなっている
そして再び目を開けると、そこは眠る前と同じ、
「戻ってきたな……」
ここに来てはっきりと分かる。
人生で数えるくらいのレベルの疲労を感じていると。
もう一度まぶたを閉じ、脳裏にあの光景をフラッシュバックさせる。
なぜか懐かしく感じた、勇ましく頼もしい白き獣ルピカ。
人々の作戦、最大の危機にあって見出した
封印される黒い神。
厚い雲間から降り注ぐ、
そして、すべての力を投げ打った代償として、大地に捧げられた
そっと頭を
何も無くなってしまったそこは
知らず慎太郎の口から、
悲しいわけでもなく、
ひとしきりそうした後、落ち着きを取り戻した慎太郎は寝室へとゆっくり足を
ベッドを見ると、
心の中で申し訳なさと、同じくらいの
思った以上に
最後にほんの少しだけそのあどけなさの残る、というよりヨダレで
そして、ソファーでまた一眠りすることにした。
今度こそ、少しゆっくり出来そうだ──。
*
「たろうさーん、しんたろうさーん」
「ん……あと十分……」
「あと十分じゃないです、起きなさい!」
「
耳を軽く引っ張られ、慌てて目を開く。
目の前に居たのは、
「
「何を言ってるんですか。あなたの可愛い
「あ、ああ、すまない……」
妻はくるりと背を向けると、バレッタで束ねた茶髪をたなびかせ、いつものように
大きな縦長の窓から、秋の朝日が一気に差し込み、リビングは
その光景と妻の後ろ姿に、ようやく日常へと帰って来れたのだと、慎太郎は改めてしみじみと感じ入った。
「ところでー、慎太郎さん?」
「……む、何かね」
「さっきの『ダイミコ』ってなんですか? まさか……っ?!」
息がかかるほど顔を寄せて問いただす妻に、夫の側頭部から、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます