第三十七髪 わだかまり 解ける素敵な おもてなし  

 夕食を兼ねたうたげは、里の中心にある広場で行われた。

 日中通り過ぎた時は、人もまばらで閑散かんさんとしていたその場所だが、今は木製のテーブルや椅子いすなどが設置され、篝火かがりびが場を明るく照らす中、多くの人だかりでにぎわっている。

 一行は席に着きながら、食事をとる。

 彼らハーピィ族は、慎太郎が当初頭に思い浮かべていた例の『凶暴きょうぼうな肉食キャラのイメージ』とは全く異なっており、基本的に肉類を好まないようで、穀類こくるいや野菜、木の実や果物等を食べているようだ。

 目の前のかごには、ミカンほどの大きさと色をした丸いふさがたわわに実った、まるでぶどうのような果実が山盛りに置かれている。

 ハーピィの人々はそれをもぎっては、そのまま口に放り込む。

 堪能たんのうしている顔を横目で見ながら、慎太郎も同じように口に入れる。

 シャリシャリとした食感は、まるで瑞々みずみずしいなしのようであるが、味は芳醇ほうじゅんなぶどうそのもので、生のぶどうを冷やしてシャーベットにしたようなおもむきだった。

 他のものも、見た目と味や香り、食感に多少のズレはあるものの、そのどれもがエビネの神殿料理にまさるともおとらない料理の数々に舌鼓したつづみを打ち、肉体労働で十分に減った腹を満たしていく。

 また、ハーピィ族もエビネの生活には興味津々なようで、族長と同じような姿の若い娘達が大巫女やクオーレ、マリーナに質問し、答えては妙に盛り上がるさまは、まるで昨日のことが嘘であったかのように仲睦なかむつまじく、打ち解けあったものであった。

 慎太郎は優しく微笑ほほえみながら、そんな光景を見守っている。

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