第六十一髪 解き放て 白き剣の 一撃を  

 慎太郎達は、後方から赤い光が横薙よこなぎにする瞬間を見た。

 その光の奔流ほんりゅうは黒き神を貫通し、そのまま減衰げんすいすることなく果てに見える山脈をき飛ばす。

 凄まじい爆発をき起こし、遅れて轟音ごうおん衝撃波しょうげきはがやってくる。

 その一撃は、完全に黒き神の両足を分断していた。

 バランスをくずした黒き神は、ぐらり、と上半身が前のめりにたおれていく。

 まさに、この時こそ慎太郎達が待ちわびた瞬間であった。


「ルピカ!」

「おうとも!」


 慎太郎の声に、白きけものは応じる。

 一瞬で五体の分身を一つにし、みるみるうちに巨大化すると、瞬時に体勢を整え、ななめ上にけ上がるように、黒き神めがけて突撃していく。

 目指すは、前のめりにかたむいた黒き神の胸部。

 加速していくルピカに、慎太郎は渾身こんしんの力でヤナギノクみ上げる。


 おいかけて

  しらがくろかみ

   うちひかり


 刹那せつな、慎太郎は全身に圧倒的あっとうてきな熱量と力の流れを感じた。

 それらはかぶっているラーズに集まり、その黒い毛髪は逆立ち、白く、激しくスパークする。

 白炎はくえんは次々と光のおびとなり、ルピカへと吸収されていく。

 それにより巨大な光のかたまりと化した白き獣は、彗星すいせいのような勢いで突き進んでいく。

 黒き神に衝突しょうとつすると、激しい衝撃音が場にひびき渡る。

 ルピカはその勢いのまま、黒き神と共に、空高くへ駆け上がっていき、大きな放物線をえがいて、南東はるか向こうの森林帯へと共に落下していく。


「やったか……!」


 の完璧な内容であった。

 慎太郎の脳裏には、最終ブリーフィング後のマリーナとの会話がよぎっていた。

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