第五十九髪 守り抜く 覚悟を決めた 男達

 一方、地上では――。


「第一防衛線ぼうえいせん決壊けっかいしております!」

「第二防衛線ぼうえいせんも、完全かんぜんにはおさえきれておりません!」


 戦況せんきょうかんばしくなかった。

 黒き神から生み出されるけものの物量は、もはや黒い津波つなみしており、なく東門へと殺到さっとうする。

 個体としては強いわけでは無く、一撃いちげきたおすことが出来る出来るとはいえ、次から次へとすり抜けていく。

 かといってその突撃をまともに受けてしまえば、カピツル神の加護かごがあるよろいを着ていても、たおされるくらいの衝撃しょうげきを受けてしまう。

 したがって取りうる手段は、じりじりと後退こうたいしつつそれぞれの隙間すきまめていくしかなかった。


「ここがりどころだ!」


 最終防衛ラインまで後退したルビンが、声をり上げる。

 横を抜けようとする黒きけもの長剣ちょうけん横薙よこな一閃いっせんし、さらに正面から来た一匹をひざで打ちくだく。

 が成功すれば、黒き獣達の動きも止まる。

 そこまで命をしてここを守り続けること。


大神官だいしんかん様の言葉を思い出せ! あの御方おかたは必ずややってくれる!」


 上空での戦いを見余裕よゆうもないが、時折ときおり大気たいきを大きくふるわせる轟音ごうおんがここまで鳴りひびいてくる。

 一瞬いっしゅんだけ、ルビンの脳裏のうりかれとの思い出がよぎる。

 やさしい表情をした男である。

 およそたたかいとは無縁むえんの、自分とは全くことなる人生を歩んできたであろう。

 だが、何か壮絶そうぜつ運命うんめい背負せおって生きてきた、とも思わせる強さがあった。

 物理的な力ではられない、心に宿やどしんの強さが、そこにはあった。


「手が、足が動く限り、命をやして黒をれ! 一匹いっぴきでも多く!」


 左右から同時におそかる黒いかげを、両手に持った剣をるい、確実にしと留める。

 さらに一群がかたまりとなって、やってくる。

 もはや、完全に守ることの出来る数ではない。

 だが、それでも、と男は自らにかつを入れる。


 その時。


 厚い雲でおおわれ、昼間だというのにやけに暗い戦場に、赤い閃光せんこうまたたいた。

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