第二十六髪 君は聞く 湖面に映る 物語
里から出た慎太郎達は、手前にある湖のほとりで
テントを
クオーレはというと、手前の一本道で
せめて
「我々はまだ客人にすらなっていないんだ、ここは大人しく外に出よう」
という、慎太郎の説得により、今の状況に至ったのだった。
辺りはすっかり暗くなり、周りの木々からは
慎太郎は湖の前に座りながら、その
その方向に顔を向けると、族長であるあの美しい娘がひっそりと
「こんばんは、おじさま」
先程の
「こんな夜遅くに。女の子が危ないじゃないか」
それが、慎太郎の見た彼女の初めての笑顔だった。
「ああ、ごめんなさい。ここら辺はあたし達の庭ですし、森の皆は仲間ですから、大丈夫なんです。……おじさまは優しい方なのですね」
実のところ、慎太郎は先程の対応に違和感を覚えていた。
里で対面した彼女は、無表情で
が、その冷たい声音とは裏腹に、ほんのわずかに指先が震えているのを慎太郎は見逃さなかったのだ。
それは、人間という種族に対する恐怖ゆえなのか、あるいは──。
族長は柔らかい口調で話を始める。
「先の非礼をお詫びします。あたしはハーピィの族長、セファラ」
「エビネの大神官、慎太郎だ。……と言っても、ここには最近来た新参者だが」
「ふふふ、ようこそ、年老いたルーキーさん」
「……それで、だ。どうしてそこまで嫌うのかね」
「ここに来て間もないのであれば、ご存じないのも無理はありませんね。この地で起きた
セファラは昔話を始める。
また、色鮮やかな羽を持っていたため、人里に下りれば
その結果はあまり良くないものばかりであった。
そのため、里か、里にほどなく近い森の中で生活する者しかおらず、その存在は美しい衣服を仕立てる民、という程度の認識しかされてはいなかった。
だが、十年ほど前のことである。
「私には兄がいました。
若者によくある話だ。
行商人も人里での暮らしを面白おかしく語ったのだろう。
それは彼の好奇心を大いに刺激し、旅立っていった。
だが、それが悲劇の始まりとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます