第五髪 祝宴で 杯あおる彼に 皆笑顔
程なくして、一行は都まで戻ってきた。
馬車は徐々に高度を下げ、城門近くの芝生へと降り立つ。
ようやく地に足がつけることが出来て
黒き
それでも、損傷部分に木の
そんな門をくぐると、大神殿まで真っすぐ大きな通りが走っている。
荷台に
高さのある建築物は
城壁の四辺にある物見の
上部が吹き飛んだ建物群はかろうじて残った部分を布で
「あの黒き神の
大巫女の顔には少し
慎太郎も、想像した以上の壊滅的な状況に表情が
幸いなことに、高所に上り
だが、少し直したとしても再び襲撃にあっては、彼らの努力も無駄になるのだろう。
そして、ゆっくりとであるが確実に迫る黒き神。
慎太郎は東門の上空に再び目を向けた。
先程と変わらず、青空を切り裂くように、
ここからだと、まだ遠くに見えるのがせめてもの救いであった。
*
地上から見る大神殿は、実に見ごたえのある建物であった。
正面はいくつもの
さすがにこのエリアまでは眷属の侵入を許していないのか、他の建物に比べ傷もほとんどなく、長き時を
大巫女の先導で入り口の大きなアーチをくぐると、一辺が100メートル以上はある大広間になっており、
奥では銀色に
テーブルに近づくほどにそれらが放つ
「すまん……」
「うふふ、お気になさらないで下さいませ。ここまでの間ずっと、お腹に何も入れてませんもの。もう少しだけ、お待ち下さいな」
大巫女の言葉に救われつつ、慎太郎は長テーブルの一番奥にある席に案内される。
慎太郎はそこに座ると、今まで経験したことの無い、ほどよい弾力と柔らかさに感動を覚えた。
会社で普段使っている、やけに硬く、ごわごわとしていて
*
大広間中央にある一段高い
「皆、楽しそうだな」
慎太郎の何気ない
「喜んでいるのです。大神官様をお呼びし、この宴を無事開くことが出来て」
「そうなのか?」
「ええ、作物の実りも
でも、今は違います、と大巫女の手が、慎太郎のそれに重なる。あまりにも自然な動作なので受け入れてしまったが、
そんな慎太郎の気持ちを知ってか知らずか。ただ、大巫女は彼の目をしっかりと見つめ、言葉を
「慎太郎様。先程の、黒き獣や黒き巨人を一撃のもとに打ち倒したあのお力こそが、私達に希望と勇気を与えたのです」
「……そうなのか」
ここまでの間、ただ求められるがままに行ったあれがそんな意味を持つことになるとは、と慎太郎は驚きを隠し切れない。
大神官という名の下、過剰な期待をされているのも、中身はただの凡人であり小市民だと自覚している彼には少し荷が勝ち過ぎるというものだ。
だが。
大巫女の目に
慎太郎は目の前にあるほのかに甘い匂いのするクリーム色の液体が入った杯をあおると、
「どこまでやれるかは分からないが。その、やるだけやってみることにするよ」
目の前の少女に、その瞳の
人々はひと時を大いに
入れ代わり立ち代わりの宴は、夜分遅くまで途切れることなく続いていく。
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