第3話担任
学校に登校して、上履きに履き替えると自分の新しい教室へと向かう。足取りはとても重く、教室のドアはさらに重い。ガラガラとゆっくりドアを開けると、新しいクラスメイトたちが楽しそうに談笑をしていた。
俺は気づかれないように、そそくさと前に張り出してある自分の席の場所が書かれたプリントを見に行く。
「えーと……」
人差し指で自分の席の場所を確認すると、俺はそこへ向かう。席に着くと、背負っていたカバンを横に引っ掛けると、椅子に座る。これで落ち着ける。そう思っていたのだが、俺の人生というものはいつもうまくいかない。
座って一息つこうとした瞬間、明らかに嫌悪感丸出しの声が後ろから飛んでくる。
「うわ、インキャが前とかまじ萎えるんだけど」
そんな失礼極まりない言葉を発しているのは、俺がこの世で一番嫌いな陽キャの頂点に君臨している女、
目立つピンクの
前はこいつと俺の間にもう一人女子生徒がいたんだが、今年はいないらしい。最悪だ。本当に最悪。こいつとだけは同じクラスになりたくなかったのに、どうしてこう俺の人生は不運の連続なんだ?
俺は小高のムカつく発言を無視して机に伏せる。この寝たふりを何度この高校生活のなかで行っただろう……。
大変お世話になっている技だ。まあこんなことしなくても、誰も話しかけてこないけど。そんなことを考えながら、朝のチャイムが鳴るのを待っていた。
それからしばらくして、ようやく朝のホームルームの開始を合図するチャイムが鳴った。チャイムと同時にガラガラと扉を開ける音が聞こえ、俺は顔を上げる。ツカツカとヒールと床のぶつかる音を鳴らしながら教卓の前に立ったのは、去年俺のクラスの副担だった大津先生だ。
ボブヘアーが特徴的なとても可愛らしい先生で、どんな生徒にも分け隔てなく接するとても人間ができた素晴らしい教諭だ。後ろのゴミ女もこの先生を見習ってほしい。
「はいちゅうもーく。私がこの度このクラスの担任になった、
好きなものは運動と映画。みなさんとのこの最後の一年、とても充実した日々を送れるよう頑張ります!」
はははっとはにかみながら、先生はそんな自己紹介をする。とても気軽で接しやすそうな印象を与えられた。自己紹介の模範解答といっても過言じゃないほど、彼女のそれは生徒の心を鷲掴みにしていた。
「しずかちゃん彼氏いるのー?」
「何部の顧問?」
「かわいいよーしずかちゃん!」
生徒たちに冷やかされ顔を赤らめているが、それでも律儀に応答している。去年は副担だったからあまり接する機会が多くなかったが、それでも多くの生徒に信頼されていた。そんな先生の姿が、少し……羨ましかった。
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