第4話推薦
自己紹介というのは誰しもが平等に通る道であり、それは俺も例外ではない。でも別に難しいことじゃない。たった40人近い数の人間の前で、好きなものとかを簡潔に述べればいいだけ。こんな簡単なことはない。変に受けを狙って失敗したりしなければ、簡単なことだ。
ほら、その証拠に俺の番まで
「えーとじゃあ次は……菊池くんだね」
大津先生に呼ばれ、俺は重い腰を浮かして教卓の方へと進む。自己紹介なんて簡単だ。なんたって俺は、二年前から喋る内容が決まっていたんだから。
「出席番号14番、
教室中がざわつく……。そして。
「誰がお前になんか関わるかよ!」
「インキャまじきもいから!」
そんな言葉をかけられる。去年と全く一緒の反応を、今年もされる。だから別になんとも思わない。嫌われるためにやったことだ。ぺこりとお辞儀をして、早足で席に戻る。俺が席に戻ってからも、俺の陰口は休むことなく続けられた。
大津先生も苦笑いを浮かべ、「つ、次の人〜」と言っている。
これには少し罪悪感を感たが、それでも俺はこう言わずにはいられない。他人に迷惑をかけず嫌われるには、この方法が一番だ。
と言っても、もう嫌われ者なのでわざわざこんなことを言う必要性もなかった気がするが、すでに手遅れ。
クラスメイトの俺に対する不快感に拍車をかけただけだったようだ……。でもこれでいい。嫌われるって言うのは、失う恐怖がないだけ楽だ。それに好かれるって言うのは、色々と気を使うから疲れるしな。
言い訳がましいことを心の中で考えながら、俺はクラスメイトの自己紹介を聞いていた。
そして一通りクラスメイトの自己紹介が終わると、次は委員会決めに移る。まあ去年、一昨年とあまりものを適当にやってきたから、今年もそれでいいか。
「それじゃあ次は委員会の方を決めたいと思うんだけど……委員長やってくれる人はいるかな?」
大津先生がクラスメイトにそう問いかけると、ある一人の女子生徒が元気な声で立候補した。
「はい! 私がやります」
立候補したのは俺と三年間同じクラスの
「男子で立候補する方いませんかー?」
なんて、可愛げに問いかける。男子はその天使のような笑みに癒されていたが、手は上がらなかった。正直以外だ。去年や一昨年なんて、花道とお近づきになるためにクラスのほとんどの男子が立候補したと言うのに……。でも考えてみれば意外じゃないのかもしれない。ほとんどの男子にとって、花道は高嶺の花だ。この二年間で、多くの男子が玉砕してきた。だからどうせフラれることがわかっているのに、わざわざめんどくさい委員長なんて立候補したくないのだろう。
「うーん……誰も手を上げてくれないかー」
ぽりぽりと頬をかきながら、花道は困惑した表情をしている。それでも男子の手は上がりそうにない。そして、誰も手を上げそうにないのを見かねた大津先生は花道にある提案をした。
「このままじゃ誰も立候補してくれなさそうだし、もう花道さんが推薦していいよ」
全部花道にぶん投げた。そんなことをいきなり言われた花道は当然のように困っていたが、それでもすぐに俺たちの方に顔を向けるとある一人の男子生徒を指差した。
「それじゃあ菊地幸助くん! 君を推薦します」
そんなことを言い放ち、クラスは困惑していた。そして誰よりもこの俺が、一番困惑している……。
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