第21話 大好きな二人。

 九月の連休から二週間が過ぎた。あれから美希さんは体調を崩す事なく、元気に毎日を過ごしている。


「じゃあ行ってきます。九時ごろに帰ってくるからね」


 そう言ってかあちゃんは家を出て行った。俺と美希さんは玄関でかあちゃんを見送った。


 今日は近くの公民館でご近所が集まり、年に一度の『秋祭り』という名の飲み会の日。


 今は午後六時半。つまり、家にかあちゃんが二時間半いない。


 隣には美希さんがいる。ここ一週間はかあちゃんが美希さんを独り占めしていた。お風呂も一緒。寝るのも一緒。


 我慢の限界だ。俺がそう思っていると、美希さんが手を繋いできた。


 恋人繋ぎの絡まれた指。体温を感じながら美希さんも俺と同じ気持ちだと確信した。


 ——ピンポーン。


 玄関のインターホンがなり扉が開く。咄嗟に手を離した。


「こんばんは〜」


 凛子さんだった。くっ、お邪魔虫さんめ。


「凛子ちゃんどうしたの?」


 美希さんが問いかける。今日は凛子さんと約束はしていない。何の用事だ?


「えっへっへ〜」


 ん? なんだか嬉しそうだぞ? どうした?


「とうとう私も彼氏できました〜」


「「え⁉︎ 相手は⁉︎」」


 美希さんとハモってしまった。


「同じ部活の一年生の男の子で〜す」


「年下か!」


「そう。今日告白されちゃった。とってもかわいいの。キュンキュンしちゃってオッケーしちゃった」


 幸せそうに語る凛子さん。うーむ。他人のノロケは退屈だ。


「じゃあ、恋愛の先輩方、いろいろ相談乗ってね〜」


 ノロケるだけノロケて凛子さんは帰って行った。彼氏ができた事がよっぽど嬉しいんだろうな。


 凛子さんが帰って、玄関にいた俺と美希さんは畳の部屋に移動した。


「凛子ちゃん幸せそうだね」


「そうだね」


「一護君」


「何?」


 隣に座っている美希さんが俺を見つめる。


「大好きだよ。ずっとそばにいてね」


 凛子さんの幸せな姿に触発されたのかな?


「俺も大好きだよ。ずっとそばにいる。約束する」


 笑顔になる美希さん。頬をそっと触ると彼女は目を閉じた。


 俺は美希さんに顔を近づけ、優しく唇を重ねた。


 ◇◆◇


 貧乏美少女との同居生活。——完。

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貧乏美少女との同居生活。 さとうはるき @satou-haruki

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