第5話 Good Idea!…??

 芽里の部屋を出て、シュウとショウ(兄と弟なら、ショウとシュウ?)は足取りも軽く自席に戻った。がんばれば、そんなご褒美が!

 なるべく魂を稼ぐには、やっぱり形体の“省エネ”も必要かも、でも、子どもの姿はまずいでしょ? 始末書のことなどすっかり忘れて(2日後、これで芽里にまた叱責されることになるのだが)、2人は長いことあれこれ話し合った。


「あのさ、思ったんだけど」

 ショウは“弟”に語りかけた。弟! と強く意識したらその心の声が届いたようで、ちょっと嫌な顔をされた。けど、気にしない。だって僕がお兄ちゃんだし。

「…なんだ?」

「この姿は、魂の消費という面ではエコじゃなよね?」

「そうなるな。でも、それはしかたがない」

 繰り返しになるが、告知に子どもの姿では行けない、そうシュウが言うと、ショウは頷いて、でもね、と言った。

「たとえばだけどね、謎の存在であることを強調するような扮装で行ったらどう? ただの子どもじゃないって思ってもらえたらいいんじゃない? それかさ、いっそ、人間じゃない他の動物の姿になるとか?」

「他の動物? 犬とか猫とか?」

「そうそれ! 人語をしゃべる不思議な猫がやって来て告知したら、どう? それっぽいし、聞いてもらえると思わない?」

「なるほど、確かに。魂の消費という面でも、ずっとエコだな。お前、頭いいな」

「お前じゃない、お兄ちゃん! 可愛くない弟だなあ」

「お前もな、いきなり兄貴面すんなよな! 双子なんだから大差ないだろ?」

 …ああ、可愛くない! どうせなら可愛い弟がほしかったなあ―。そう思ったら、シュウにいきなりどつかれた。


        ***


 後日。芽里さんに提案したら、着眼点はいいわね、と褒められた。じゃあ、今後はその方向で、と言おうとしたら、でも無理ね、と言葉を継がれた。

「どうしてですか? 猫の姿では声帯が人間と違うから、人間と同じようにはしゃべれないかもですが、でも直接心に語りかければ―」

「そうじゃないのよ。あのね、こないだレクチャーでも説明したと思うけれど、より魂を消費しない 形体になるには、つまり、今の形から別の姿に変化するには、やっぱりそれなりに魂を消費するの」

「それは、わかっています。でも、いったん 形体を変えたら、その後は少ない消費で済みますよね。長い目で見れば、有益なのでは?」

「…ずっとその姿でいるなら、そのとおりね」

 2人は顔を見合わせた。一体、何が問題だと言うのだろう?


 不思議顔の2人に芽里は思う。やっぱり、まだまだ子どもね。なぜ先輩局員たちが動物の姿じゃないのか、そこまで思い至らない。詰めが甘いわ。

「いい? 仮に、あなたたちが猫になったとします。まあ、告知の仕事は、問題ないわね。だけど、報告書とか申請書の作成はどうするの? 猫の手で、できる?」

「ああ!!」

「そうか、それがあったか!」

 書類作成のため人の姿に戻れば、都度、魂を消費する。毎度毎度そんなことをしていたら、却ってロスになる。

 しまった、そんな落とし穴が! だめかぁ、このままがんばるしかないのかぁ! 大げさに苦悩する2人に、芽里は手を叩いて注意を向けてから、告げた。


「始末書、いつ持ってくるのよ? 早くしなさいよ。それと、そろそろ次の候補者を挙げて、審議にかけなさい。働かなければ魂は増えないわよ!?」

 そういう芽里に、あれ? この仕事って、出来高制なんだっけ? などと言いつつ双子は頭を下げて去って行った。


        ***



 静かになった部屋で独り、芽里は、自分の魂の残高表を確認する。あと少し、あともう少しで、目標量に達成する。そうしたら、転生して、あのひとのそばに―。





FiN

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そうる せ/しぇいばぁ(Soul S(h)avers)~番外編・始末書と幼女と双子 はがね @ukki_392

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