『メトリカナエの電話』
『メトリカナエの電話』というものがあるらしい。自分に叶えたいことがある時、非通知着信から電話がかかってくるらしい。それに出ると、
『もしもし。私メトリカナエ。君、今○○にいるでしょう?会いに行くわ。』
と、『メトリカナエ』と名乗る者は自分の居場所を言い当て、一方的に切ってくる。しばらくしてまたかけてきて自分の居場所を教えてくる。その場所は段々近づいてくるらしい。
『私カナエ。君の後ろにいるのよ。』
最終的にその人の後ろにいると言うが後ろにはいない。ホッとしたところに電話が入る。
『私カナエ。話をしましょう?』
「・・・・って背後を振り返るとぉ・・・わぁ!!」
「キャァァァア!!!!」
後ろで姦しい声がする。うるさい。
「・・・」
なんだよそりゃ、『メリーさんの電話』のパクリかよ。てか今掃除してんだからさっさと手伝えよ。
「何見てんのよブス!こっち見んな!」
「・・・」
はいはいそうですね。私が悪ぅございました。てか私そっち見てたっけ?ただ彼女らには関係ないだろう。気に入らない奴がいると排除しなければ気が済まないのが彼女らのような人間である。私は彼女らから見れば排除しなければならない奴というカテゴリに入っていて、私はここ一年いじめられている。水をかけられたり仕事を押し付けられたり。先生も対応をしてくれない。
「・・・」
帰ろう。掃除も終わったし。帰って勉強しよ。私はさっさとあの喧しい陽キャ共を横目に帰路についた。
*
その夜、私は数学の宿題をしていた。それほど得意ではないからこそ提出物くらいはちゃんと提出しないと。しかしわからない。
「・・・しまった・・・あんな奴らにキレて帰らなきゃよかった・・・」
今更頭抱えてもしょうがない。私には宿題の疑問点を聞けるような友達もいない。明日にならないとどうしようもないのだ。
「もう知らない。明日聞くしいいもん。」
ちょっと不貞腐れながらも少し乱暴にノートを閉じた。
その時、ピロンピロンと電子音が入る。私のケータイの着信音だった。
私は首を傾げた。私に電話をかけてくる可能性があるのは家族くらいだし、そもそも今電話をかけないといけないところにいる家族はいない。画面を見ると、非通知電話だった。
「・・・間違い電話・・・かな?」
電話を出ずに切ろうとした。なのにボタンを押す前にケータイが勝手に電話に出たのだ。
「・・・は?」
私が少し絶句している間に声が聞こえてきた。
『もしもし、私メトリカナエ。君、今君の家の部屋にいるでしょう?会いに行くわ。』
電話はそこで一方的に切られた。
「・・・私、スピーカーモードにしてないんだけど。」
電話の相手は『メトリカナエ』と名乗った。悪戯か本当かはわからないけれど、これが奴らが言っていた『メトリカナエの電話』だろう。私はオカルトチックなものはそれほど信じているわけではない。けれど、それじゃ勝手に電話に出たのと勝手にスピーカーモードになったのが説明がつかない。押し間違えじゃないかって言ってしまえばそれまでなのだが。
ピロンピロン。
またかかってきた。今度もケータイが勝手に電話に出る。
『私カナエ。今○○駅にいるの。待ってて。』
また切れた。○○駅は私の家の最寄りの駅だ。やっぱり『メリーさんの電話』に似ている。
ピロンピロン。
結構な頻度でかかってくるな。
『私カナエ。今ローソン○○店の前にいるわ。もう少しよ。』
『メトリカナエ』はそう言って切った。○○店は私もよく使う最寄りのコンビニだ。確かに近づいてきている。本当ならの話だが。
ピロンピロン。
・・・本当にこのペースで動いてるとしたらとんでもない速さなんだけど。そもそも駅とコンビニの間も電話のかかってくる間隔じゃ
徒歩や自転車、車でも無理だ。私は数学が苦手だし距離がわからないので速度を割り出すのは無理だが。
今度もケータイが勝手に電話に出た。
『私カナエ。今君の家の前にいるのよ。やっと着いた。』
切れた。私はそれとなく窓から玄関の方を見る。誰もいない。
「・・・悪戯かぁ・・・」
ピロンピロン。
ホッとしたのも束の間、非通知電話がかかってきた。
『私カナエ。今君の後ろにいるの。』
振り向くのは怖かった。でも振り向かないと悪戯かどうかわからない。
心の中で3カウント数えてバッと振り向いた。何もいない。私しかいない部屋だった。
「・・・」
しかし安心できない。姦しい奴らの話だと・・・
ピロンピロン。
このあともう一度かかってくるんだった。
『私カナエ。お話ししましょう?』
「・・・」
怖かった。怖かったけれども私にはそれよりも興味が湧いた。
「・・・ええ、カナエさん。お話ししましょう。」
『・・・』
『メトリカナエ』が初めて電話で黙った。そのうち、
『・・・フフッ。フフフ・・・』
という笑い声が聞こえてきた。
『ありがとう。面白い子ね。気に入ったわ。』
気に入られてしまった。その時、肩を掴まれたような感覚を感じた。私の目をチラリと向けると、そこには人間の手があった。少し血のひけたような青白い肌の冷たく細い手だった。
「・・・ひっ・・・」
『ごめんね。それよりも、君の願いはなんだい?』
「・・・願い?」
そんなことは喧しいあいつらは言ってなかった。最後まで聞いてないだけかもしれないが。しかし願い事ね・・・。今だと数学の問題を教えて欲しいが・・・
「・・・えっと・・・」
『あぁ。声に出さなくていいよ。目を閉じて。私が君の心の中の願いを読むから。』
彼女のいう通り目を閉じた。
『ふぅん・・・なるほど。それが君の願いか。私が叶えよう。』
と言うと、肩を掴んでいた手が離れ、私の閉じた目蓋をスッと撫でた。
その時、強烈な眠気に襲われ、やがて意識を手放した。
*
その後聞いた話だがこのことがあった翌日私をいじめていた奴らが一斉に自殺したらしい。全員飛び降り自殺で、顔がぐちゃぐちゃになっていたらしい。さらに不思議なことに、全員の死体に眼球が無かったらしい。この事件で、私の行っていた学校がてんやわんやになっていたというが私はもうしばらく行っていない。彼女らが自殺した日と同じ日に入院したのだ。その日私が起きた時、目の前が真っ暗になっていた。そして彼女の名前の意味を知った。
最後に私が言っておきたいことがある。
メトリカナエは意地悪だ。そして悪魔だ。逢わないことを願うが、逢ってしまったら彼女と話してはいけない。大事なものを彼女に取られてしまうから・・・。
都市亜伝説 戯言遣いの偽物 @zaregoto0324
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