俺のことを好きすぎるストーカー女が怖すぎるので催眠アプリを見せて擬似寝取らせでフラグ回避し円満解決をしようと思ったら全力で抵抗してきた件

くろねこどらごん

俺のことを好きすぎるストーカー女に催眠アプリを見せて擬似寝取らせで円満解決をしようと思ったら全力で抵抗してきた件

「ついに ねんがんの さいみんあぷりを てにいれたぞ!」




オッス、オラ貴幸鳴海たかゆきなるみ!全力全身全霊で探し出した催眠アプリをたまたま持っていて、ちょっとイケメンだから女の子にストーカーされることが日常と化しているだけの、どこにでもいるごくごく普通の高校生だ!


もちろんこんなアプリを持っている以上、自重するつもりなんぞサラサラない!悪用する気満々です!


この催眠アプリでどんなことをするか考えただけで、オラすっげぇワクワクしてきたぞ!


「くけけけけけけ!」


おっと、つい心のプリティーボイスが漏れちまったぜ。


イケメンフェイスにそぐわないゲスのような声だったが、まぁ仕方ないことだ。俺の寛大な心に免じて許して欲しい。


なんせこのアプリの入手には随分と骨を折ったからな。精神的にも物理的にも。

考えてみて欲しい。こんな男の子の欲望の権化ともいえるアイテムが天から降ってきたり、たまたま偶然いつの間にかスマホにダウンロードされている可能性なんてあると思うか?答えはNOだ。


前世で徳を積みまくった聖人であろうと、海に逃げたメダカに石を投げて当てるくらい確率が低いことだろう。なら行動あるのみである。男は度胸、なんだってやってみるもんさ!


思い立った俺はこの数ヶ月で数々の違法なアングラサイトに潜り続け、ウイルスや踏んではいけないブラクラトラップに幾度も引っかかりながら、ようやくこのアプリを手に入れるに至ったのである。


いやはや全く苦労した。思い出すだけで涙がちょちょ切れそうだ。


「へっ、これでこの傷も報われるってもんだぜ…」


俺は絆創膏の貼られた頬を軽く撫でた。ま、ちょっとした勲章のようなものだな。


このアプリを入手する過程で、架空請求サイトから金を振り込むように催促された俺は、ほんの少しだけビビってしまい、必要経費と割り切って親のカードをこっそり拝借して支払っただけだというのに、親父のやつめ。

バレたらしこたま殴りやがって…息子の未来は既に栄光が約束されたも同然なのだから、少しくらい大目にみてもよいものを。とんだクソ親父である。

いつか必ず家庭内DVで訴えて慰謝料を請求してやると、俺は固く心に誓っていた。






おっと、話が長くなったな。そんなことはどうでもいいんだ。

親とはいえ所詮他人の金。小遣いが減額されたことも含め、嫌なことは忘れるに限る。

青春真っ只中の高校生としては、過去を振り返るにはまだ早い。重要なのは未来であり、これから先のことであった。


そんなわけでこの催眠アプリをどう有効活用するかが今後の課題となってくるわけなのだが…実は使い道に関しては、とっくに決めていたりする。


ん?催眠アプリなんだからどうせ女の子に使いまくってハーレムでも築くつもりなんだろうって?


まぁ鉄板だもんね、そう考えるよね。




男の子だもん、わかるわ。




「ハハッ!ワロスwwww」


おっと失敬、つい失笑が漏れちまった。

いや、別に否定するつもりはないんだが、あまりに在り来たりな発想だなと思ってな。

実際俺も手に入れた当初はその考えが浮かんだし、健全な男子にとっては女の子に囲まれてモテモテになりたいというのは、間違いなくひとつの夢であることだろう。




でもさ、考えてもみてほしい。俺が入手したのはあくまで催眠アプリ。

現実を改変するほどのチートアイテムではないのだ。できることは個人の認識を書き換えることだけであり、ぶっちゃけハーレムを作るにはハードルがかなり高いといえる。


クラスの美少女にアプリを見せて俺のことを好きだったと記憶を書き換え、強引に付き合ってイチャコラしたところで、他者からそれはおかしいとでも指摘されれば当然認識に齟齬が生まれることだろう。そのたびに催眠をかけていたらキリがない。嘘はいつか必ずバレるものだし、罪を重ねてもいいことなんてひとつもないのだ。


それに、記憶を取り戻した女の子にキレられるだけならまだいい。

むしろこれが最善のケースであり、下手すれば絶望して自殺。あるいは逆上した女の子に刺されるなんてことも有り得るわけで…想像するだけで身が震えてしまう。

この歳でまだ死にたくない。女の子から拒絶されるなんて、席替えのときだけで充分だ。


性にも生にも未練たっぷりな高校生男子は、まだまだ生きていたいのだ。

ベッドの上で大往生が俺の人生における最終目標である。他人の人生を奪う代償とリスクを背負うには俺はまだ若すぎた。

ぶっちゃけもっともっともーっと、遊んで暮らしたいからね!縛られる人生なんてゴメンだぜ!あ、でも物理的に縛られるのは大歓迎です。Mだからね!


今度妹に頼もっかな、まぁこれくらいならセーフだろう。

オヤジに殴られた後も「お兄ちゃんは悪くないよ」と甘やかしてくれた妹だ。

ちょっとアプリの実験台として俺に対する好意を反転してもらい、「死ねクソ兄貴!」という罵声を貰った時は興奮したなぁ…ご褒美あざっす!




あ、すまんすまん。また話が逸れたな。


まぁこれは極端な話ではあると思うが、アプリの効果を全て把握してるわけでもないし、人数を増やすことはあまりにリスクが高すぎる。


そう判断した俺はとりあえず使用相手をひとりに絞ることにした。

というか、このアプリを入手した理由にそのひとりが大いに関わっているのだ。ぶっちゃけこのために苦労したといってもいい。




その相手はズバリ、俺をここ数ヶ月ずっとつけ回しているストーカー女である。


先ほどいったように俺はストーカーされており、そのことがずっと悩みの種であったのだ。


朝や帰りの通学路で視線を感じるなんて日常茶飯事。女の子と話していたら時々寒気を感じることすらあった。後は消しゴムやシャーペンが無くなっていて、代わりに新品のものが用意されていたりなんてこともしょっちゅうである。


まぁこれは俺がイケメンであることが悪いのだが、それを差し引いてもさすがに我慢できない域に突入しつつあったのだ。だって女の子と仲良くできないなんて耐えられないじゃん。俺は絶対悪くない。


なのでいい加減こちらからもアクションを起こし、ストーカーなんざやめろ迷惑だくらい言ってやろうと意気込んだわけなのだが…ぶっちゃけ真正面からストーカー女と話すとか怖すぎた。


いや、これは別に俺がヘタレだからって訳では断じてないよ?

俺は常に勇気凛々、元気百倍な男だ。女の子相手だし、最悪喧嘩になろうともまず間違いなく勝てる自信だってある。


だけどさぁ、何ヶ月も無言でつけ回してくる相手とか、なにしてくるかわかんないじゃん?

さっきも言ったけど俺はまだ死にたくないし、人生終了コースだなんてごめんである。


だからできるだけ俺に被害が被らずに穏便に俺への興味を逸らす方法を考えた結果、催眠アプリを使用して他のイケメンに俺に対する好感度をすり替えちゃおうっていう、悪魔的アイデアに行き着いたのである。


これに気付いたときは体中に電撃が走ったね。自分は天才だと本気で思ったし、ついでにノリで超電磁砲が撃てないか試してみたけど無駄だった。

もう思い出したくない黒歴史である。一刻も早く忘れようと心に誓った。






閑話休題。






要は寝取らせだ。擬似寝取られと言ってもいい。自分に好意を寄せる女の子を他の男にあてがうという、選ばれし者にしか許されない高度なプレイ。

それをこの歳でやれるやつなんて早々いないだろう。俺はドMでもあるのだ。


俺以外のイケメンにストーカー女が靡いている姿を見るだけでご飯三杯はいけるし、なんだったら自分の記憶をアプリで操作すれば寝取られだって堪能できる。


というか、ストーカー女の件が片付いたら俺は催眠アプリを思う存分自分に対して活用するつもりだ。女の子だけに使うべきだなんて法律はないからな。

俺のささやかな楽しみのために使うくらい、許されないはずがない。


美少女と付き合っていた存在しない記憶を自らに植え付け、彼女が他の男と仲良く話す姿を見て血涙を流す未来の自分を想像するだけで絶頂ものである。


しかも記憶を消せば何度でも屈辱を味わえるというんだから、まったく催眠アプリさまさまだぜ!


脳内にしか存在しない偽りの記憶ということもあり、ハーレムからの複数寝取られプレイも思いのままだというのだから、まさにドM垂涎。俺のためのアプリと言える。


「俺の夢…自己催眠セルフ寝取られがようやく実現するんだ。こんなに嬉しいことはない…」


誰も傷つくことのない、理想的な寝取られソロプレイ。


寝取られの永久機関が完成しちまったなぁ!!希望の未来はすぐそこまできているのであった。






「フッ、我ながら天才すぎて怖いぜ…ま、俺だから当然だがな」


俺は軽く髪をかきあげた。うん、今日も理想的なサラサラヘアーだ。俺は常にイケメンでなくてはならないからな。

角度だって意識して45度の手櫛を常に意識しているくらいに決めているつもりだ。周りに人がいないからって手を抜くのは、俺の主義に反しているからな。

これはイケメンに生まれた義務でもあり、枷だ。

イケメンではないやつにはきっと分からないことだろう。




ちなみに現在は放課後。誰もいない空き教室で、俺はひとりの女子生徒を待ちわびていた。

その待ち人とは言わずもがな、俺をストーカーしている女である。


顔を直接見たわけではないが、数ヶ月の付き合いだ。既に犯人に当たりはつけており、確信できるだけの証拠もある。

それを突きつけ、動揺して隙が生じたところで催眠アプリを見せることで彼女を洗脳するのが俺のプランだ。何度も脳内シュミレーションを重ねたし、上手くいく自信もあった。


「あー、早くこないかな…」


とはいえ、やはり直前になると急に不安の虫が顔をのぞかせるのが、人間という生き物だ。

こんなことに誰かを巻き込むわけにはいかないし、アプリの存在を知られるわけにはいかない。

これは俺が今後有意義にセルフ寝取られ一人プレイを楽しむために必要なものである。


バレたら女子に白い目で見られることは確実だし、それはそれで興奮するのだが、やはりある程度の好感度がなければ寝取られというものは成立しないだろう。

悪評が立たないようこれでも日頃から気を遣っているため、女子の評判は上々だ。


「口を開かなければいい人っぽい」という評価も貰っているし、やはりイケメンは得をする生き物である。


カーッ!美形はつらいね!まいったなぁもう!




まぁそんなこんなで俺はひとりでストーカーと対峙することを決めてここまできたのだが…冷静になって考えると、女の子を呼び出すなんてこれが初体験だ。

さっきからソワソワとウズウズが止まらない。気付くとなんだか妙に居た堪れなくなっている。


ぶっちゃけこの段階で、俺はビビり始めていた。


ヘタれたわけではないぞ、うん。


(や、やっぱりやめておこうかな…)


とはいえ、日を改めたほうがいいかもしれない。

ほら、今日は星座占いで1位だったし、間が悪いんじゃないかなぁ。


そんなことを考えていた時だった。

ガラリと大きな音がして、教室の扉が開いたのだ。

その音に反応して咄嗟に視線を向けると、そこには待ち人の姿があった。


「あ…」


「おお…」


互いに短い言葉を紡ぎ、自然と視線が交差する。

綺麗な鳶色の瞳が、真っ直ぐ俺を射抜いていた。僅かに揺れるその目は、どこか熱っぽく潤んでいる。


その目には見覚えがあった。いや、知っているといったほうが正しいか。

俺は気付かないうちに、その子の名前を小さく呟いていた。


「来たか、真波…」


いつもは背中越しに感じるそれが面と向かい合ってだとこうも情熱的に感じるとは。


俺の目から視線を外すことなく、今も見つめ続けてくる同級生の女子生徒―真波葉留佳まなみはるかは口元をほころばせながら、やがてゆっくりと口を開いた。


「えっと、貴幸くん、だよね。同じクラスの。私を呼び出したのは、キミなの?」


確かめるように、区切るように話す真波。

いつも教室で見るハキハキと喋る彼女とは違い、どこか自信がないように見えるのは、俺の気のせいではないだろう。


(うーん、やっぱり真波は美人だな)


改めて見ると顔立ちはとても整っており、滅多にお目にかかることのない美少女である。ぶっちゃけ好みのタイプだ。


まぁ頭おかしいストーカーだから、付き合うとかは無理だけどな。


繰り返すが俺はドMであり、執着してくる女の子は趣向から外れている。

熱の篭った目で見られるより、罵倒されたり冷たい目で見てくれたほうが、俺は幸福を感じる男だった。


(せめてストーカーでなければ…いや、落ち着け俺…)


とはいえ顔だけみればドストライクなことに変わりはない。

その姿に不覚にもドキリとしてしまうが、落ち着かなければいけないだろう。

これからの数分間が、俺の今後の命運を左右すると言っても過言ではないのだから。


「ああ、急に呼び出して悪かったな、真波。お前を呼んだのは、確かに俺だ」


俺は逸る心を静めるように、目の前の少女の問いに応えた。

改めて状況確認をすることで、自分の中で今後の計画に整理をつける意味合いもあったのだが…




「ああ…ああ!やっぱりそうだったんだね!」



なんか真波――俺を長らくつけ回していた、ストーカー女の様子がおかしかった。



「えっと…真波さん?」


「分かってる!私もう全部分かってるから!」


いや、ごめん。俺にはなにも分からない。


君がなんでそんなにギラギラと目を輝かせ始めたのか、俺にはサッパリ分からないよ。


「私の想いが伝わったんだね!今朝の占いで蟹座が1位だったし、ラッキーデーだもん!絶好の告白日和だし、私も今日がいいって思ってたんだ!」


っかしーなー。俺まだ呼び出した要件一言も喋ってないんだけどなー。


真波はあれか、脳内にスキップ機能でもついてんのか。

俺はお前の質問に頷いただけだというのに、なんで俺が告白する前提で話してんだ。

ギャルゲーだって告白シーンで選択肢あるゲームは早々ないぞ、なんで直前でフラグ経って即座に成立してんだよ。クソゲーにもほどがあんだろ。


「貴幸く…えっと、鳴海くん…ううん!なるくん!私達、絶対幸せになろうね!!」


おい、なんで今二回噛んだ。


そしてなんで一気に呼び方が変わってんだよ。親愛度上がるにしても秒単位とか間がゼロに近いぞ、ワープ進化か。


しかもなんかこいつの中では既に俺とのカップルが成立してるっぽいし、お前はストーカー究極体にでもなるつもりなの?

話が飛んでるってレベルじゃねーぞ。


やっぱストーカーってこえーわ。嫌だよ、もう逃げ出したい。この子怖い。


「ふえええ…」


「あ、なるくん。そんな、泣くほど嬉しがらなくても…私もとっても嬉しいよぉ♪」


俺の涙混じりの嘆きに反応するも、真波の反応は相変わらずあさっての方角にカッ飛んでいた。


どうやらこいつにはデフォルトで都合のいい現実しか見えないフィルターが備わっているらしい。

羨ましいことこのうえなかった。俺は全力で目を背けたいというのに、神様は理不尽極まりないと切に思う。


スルースキルくらいくれてもいいだろうがよぉ、畜生!


「あ、あのさぁ…実はさぁ…俺、真波のこと呼び出したのは、告白目的じゃ…」


「え!?じゃあキス!?キスなの!!??」


それでもなけなしの勇気を振り絞り、なんとか話を進めようとしたのだが、やはり真波との会話が成立することはなかった。

とことん便利な耳をしているらしく、濃厚接触厳禁な今のご時世に、何故か物理的は繋がりを持とうとしてきやがる。目もなんか濁ってきてるしヤバい気配がプンプンするよぉ…


「ファッ!?いや、違っ」


俺も思わず素っ頓狂な叫び声をあげてしまったが、無理からぬことだろう。

人がいない放課後を選んで良かったと、つくづく思った。


「しょ、しょうがないなぁ。なるくんから求めてくるなら、しょうがないよねぇ!」


「だからおい、こっちくんなぁっ!」


否定しようとする前に、真波はズンズンとこちらに向かって歩いてくる。

鼻息を荒くした美少女というのは迫力満点なものであるということは知りたくなかったし、そんな機会なんてこなくてよかった。綺麗なところだけ見たかったのに、俺は汚れてしまったらしい。


だけど本当に汚れるのはこれからで、このままでは大人の階段をエスカレーター方式で上がってしまうことだろう。それくらい本能に訴えるなにかを、ストーカー女は放っていた。


(く、食われる…俺食われちゃう!)


真波の目が怖い。ギラついている。もとより肉食系女子を前にしては、草食系男子に勝ち目はない。


生物としての面構えが違うのだ。今の真波は獲物を前に今にも飛びかかろうとしているライオンも同然である。


このままでは俺の貞操はあと数分もしないうちに奪われること確実だろう。

天井のシミを数えるには、LEDに変えたばかりのこの教室の空はあまりにも眩しすぎた。


(なんとかしないと俺のビューティフル寝取られタイムがパーに…ど、どうすれば…)


なんとかしなければと灰色の脳細胞をフル回転させ、迎撃の手段を考えるのだがまるでいい案など浮かんでこない。そうしている間にも、着実に驚異は近づいていた。


「ふ、ふふふ、ふふふふふふふふ。ぐへへへへへへ」


「ひぇぇぇぇぇ」


とても美少女とは思えない欲望ダダ漏れの声をあげて真波が迫る。よだれをたらしながら両手をわきわきさせるその様は、どこか食虫植物のそれを思い起こされるものだ。何度も繰り返すようだが、美少女がしていい手つきじゃない。


俺はジリジリと後ずさるも、当然真波も追ってくるため、自然と隅に追いやられてゆく。

包囲網は既に完成されつつある。まさに袋のネズミという言葉がピッタリだ。


いや、あるいは彼女を呼び出したそのときから、俺は釈迦の手のひらから逃げようとする孫悟空のごとく、最初から詰んでいたのかもしれない。


くそっ、ストーカーの証拠だけでなんとかなると考えていた俺が浅はかだった!


明らかに今の彼女は正常な様子ではない。論理的な説得など無意味だと、俺の直感が告げている。

暴力に頼ろうとしても、今の真波の尋常ならざる迫力の前では俺などまな板に乗せられた金魚同然。研ぎ澄まされた包丁の如き視線の前に、俺は勝てる気がまるでしなかった。


「なるくんは恥ずかしがり屋さんですねぇ。怖くないですから、早く私と濃厚接触しましょうねぇ♪」


「ち、畜生…」


そうこうしているうちに、俺は壁際まで追い込まれてしまう。

無論打開策など思いつくはずもない。俺は哀れな子兎だ。オオカミさんに勝てっこない。


「そ、そうだ!俺、今日は歯を磨いてなかったんだ!だからやめ…」




ドン!




せめて最後まで抵抗しようとしたのだが、言葉を終える前に俺が背にした壁に勢いよく真波の左手が叩きつけられた。

俗にいう壁ドンである。されるほうになるとは思ってなかったし、微塵も嬉しくなんてない。


むしろちびりそうになった。というか実際少し出たわ。怖いもん。


「あ、あの…真波さん?」


ちょうど俺の顔の真横をすり抜けるように真っ直ぐ伸ばされたその腕は、プルプルと小刻みに震えていた。間近に見える彼女の口も、震えながら開けられていく。


「ありがとうございます。私、そういうの大好きです」




あ、こいつ変態だ。




俺は改めて絶望した。救いなんてどこにもなかった。この世はいつだって、理不尽で残酷だった。


「では、頂きます♥」


ついに宣告はくだされた。真波は俺の肩を両手でガッシリと掴むと、少しだけつま先だけで立ち上がり、ゆっくりとその端正な顔を俺へと近づけ始めたのだ。


真波の目にハートマークが浮かんでいるように見えるのは、俺の目が恐怖で現実を受け入れきれないからかもしれない。


「うわぁぁぁ!」


なんとか手を振りほどこうとするのだが、真波の力は尋常じゃない。

もがけばもがくほど、彼女は制服の上から指を肩に喰い込ませてくる。


「おとなしくして!」


「っつ!」


その痛みに俺は顔を顰め、思わず手を下げてしまうのだが…その拍子に指先がポケットに当たり、硬い感触が僅かに響いた。


(……!!)


その瞬間、俺は弾かれたように思い出した。


これだ。なんで今まで忘れていたのだろう。


本当の切り札は、ずっと俺の手元にあったというのに。


「ようやく大人しくなったね。それじゃ…♥️」


俺が動きを止めたことで抵抗する気をなくしたと思ったのか、真波は再び顔を近づけてくる。文字通り、もう目と鼻の先の距離だ。少しだけ鼻先が触れ合って、少しだけくすぐったい。


「待て、真波!」


だけど、そんな感触を楽しむつもりはさらさらなかった。

いくら可愛かろうと恐怖心が上回っていては意味がない。

たとえ美少女とのキスの機会を不意にしようとも、男には成し遂げなくてはいけないことがあるのだ。これは男の意地だった。


「え…」


間近で発せられた声を、さすがに今の真波でも無視することはできなかったようだ。

固い決意を示すようにポケットに突っ込んだ手を素早く抜き取り、俺は手に持ったスマホを真波の眼前にかざしていた。


「なに…」


「これを…見ろ!」


キィィィィンと金属が擦れるような不快音が、電源を入れたスマホから響く。

アプリは最初から起動状態にしていたため、即座に動いてくれたらしい。


「っつ…これ、は…」


画面を直視した真波は、その動きを止めていた。

目もトロリとまどろみの中にいるかのように生気を失いつつある。上手く催眠にかかったらしい。


だけどまだだ。安堵する間もなく、俺はすぐに声を張り上げた。


「そして聞け!お前は、俺に興味なんてない!他のやつのことが好きなんだ!それが現実だ!」


俺の叫びに呼応するように、再び鳴り響く金属音。

これで第二段階が完了し、命令したことで俺への興味を失うはずだ。

俺はゴクリと唾を飲み込み、真波へと話しかけた。


「真波、俺の声が聞こえるか?」


「はい、聞こえます…」


返事が返ってくる。思考しているわけではく、言われた言葉をそのまま返しているような感じだ。どうやら催眠にかかっていることは確からしい。

(こ、怖かったぁ…当分トイレは妹に付き添ってもらう必要があるかもなぁ…)


俺は彼女の腕から抜け出すと、安堵のため息を密かに漏らす。

ついでに今夜は妹のベッドに潜り込もうという決意も、どさくさ紛れに誓っていた。


「なら、さっきの命令を復唱してみろ。できるな?」


「はい。私はなるくんに…」


真波はまた言われるままに口を開いて復唱していく。この時点で俺は半ば勝利を確信していた。

催眠アプリとはそれほど絶対的なものなのだ。

美少女であれば、その効力から逃れられるはずもない。

美少女は催眠の毒牙に必ずかかるのが世界の理なのである。誰が否定しようと、それがこの世の真実だ。


(へへへ、誰に寝取らせちゃおっかなー)


そんなわけで切り替えの早い俺は、誰にこの頭のおかしいストーカー美少女を押し付け、寝取らせ屈辱プレイを堪能しようか思案を始めたりしていたのだが…ここで異変が起きた。


「わ、私は…」


「ん?どうした」


何故か真波は次の言葉を言わずにいたのだ。

全身を震わせ、何故か顔からは汗が伝っている。まるでなにかを我慢しているかのようだった。


「おいおい、あんまり待たせるなよ。ほれ、真波葉留佳は他の男子のことが好きですって言うだけだろ?早く認めて楽になっちまえよ」


実際は早く楽になりたいのは俺のほうだが、これは些細なことである。

先ほどのトラウマを払拭し、さっさとこの場を立ち去りたかった俺は続きを催促し続けた。


「わ、私は…」


「うんうん、私は?」


それがどれほどの過ちだったかに気づくのは、このすぐ後のことであった。


なにも気付いていないこの時の俺は、なにも理解しないまま、ただ上機嫌に首肯していたのである。


「わ、わた…わた…」


「ん、綿?」


なんだこいつ。綿でも編むのか?蚕を飼うつもりなんだろうか。


脳天気にそんなことを考えていると、彼女の震えはより一層強まっていく。

ブルブルというよりガクガクと激しく揺れる彼女の体に、流石の俺もいい加減異変に気付いた。


だがこの時には、既に手遅れだったのだ。


「お、おい…まな…」


「う、うわぁぁっぁぁぁぁぁ!!!」


突然のことだった。

真波は絶叫をあげ、目の前の壁に突進したのだ。


ゴンと鈍い衝撃音が、空き教室に響き渡る。長い黒髪に包まれた彼女の額が、白いコンクリートに激突していた。


その光景を俺は呆然と見ていることしかできなかったのだが、本当の衝撃映像は、この後に待ち受けていたのだ。


「あの、真波さん?」


「違う…」



ポツリと、彼女は何事かを呟いた。



「違うって…」


「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うちがうぅぅぅぅぅぅ!!!!!」




ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!!!!




そしてそれは起こった。


否定の言葉とともに、突然猛烈な勢いで真波は自分の額を壁に打ち付け始めたのだ。




「え、ええええ!?」


Why!?何故!?


俺の理解はまるで追いついていなかった。というかいきなり始まったホラーショーを脳が認識するのを拒絶していた。


だって先ほどの衝撃音とは比べ物にならない勢いで、ゴンゴン壁と濃厚接触を繰り返していくんだぜ?それはさながら地獄のスプラッタムービーだ。

ヘビメタのヘッドバンギングのように首を振るたび、美少女の額から鮮血が鮮烈に飛び散っていくのを見て、平常心を保てる人類がいるならお目にかかりたいものである。


少なくとも俺はそいつとはお友達になれない自信があった。

こんなんトラウマにならないはずがない。俺がその場で腰を抜かしてしまうのも、無理はないと断言しよう。


いや、マジ無理やってこんなん…




「あわわわわ、あわわわわわわわ」


「キエロォッ!キエロォォォォォォ!!!キエサレェェェェッッッッ!!!!!」


俺が心底ビビっている間にも、真波の刻むビートはさらに激しさを増していた。

デスメタルのような咆哮と金切り声に、痛烈な打撃音が奏でるハードロックは、まるで煉獄の中で奏でられるレクイエムのようだ。

今は白目まで剥いており、とてもこの世のものとは思えない凄まじい気迫を今も絶賛放出中である。


美少女が台無しってレベルじゃねーぞ!


いや、むしろ美少女だからこそ下手な幽霊よりよほど怖い。どこぞの悪霊だって、今の真波が視界に入れば目を合わせることを避け、井戸へと引っ込んでいくことだろう。


「デテイケッッ!デテイケッッ!ワタシのアタマカラデテイケェェェェェッッッッっ!!!!」


「ふぇぇぇぇぇ…怖いよぉ……」


事実このままでは俺のメンタルは昇天するまで数刻と時間を置くことなく、崩壊待ったなしである。

とっくに腰は抜かしていたし立ち上がる気力もない俺は、誰の助けもなく孤独に耐えるほかないロンリーウルフそのものだ。

二度と体験したくない地獄の時間が過ぎるまで、俺は頭を抱えて身を縮こませるしかなかったのである。










「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏悪霊退散アブラカタブラチチンプイプイ…」


どれほど時が流れたかは分からない。


ただ俺はひたすら思いつく限りの呪文をまくし立て、精神の均衡を保っていた。

目は固く瞑り、現実を否定することだけが俺にできる唯一のことだ。


「あの、貴幸くん」


「神様、これからはいい子になります。もう親の名前で通販でDVDなんて買いません。これからは妹に買いに行かせますのでどうか許して…」


神頼みなんてこれまでの人生で腐るほどしてきたが、それでもここまで真剣に祈ったことはない。これだけ頼み込んでいるのだから、願いを叶えてくれても罰は当たらないに決まってる。


「貴幸くん。ねぇ貴幸くんったら」


「それでも足りないっていうなら、秘蔵の妹コレクションを見せても…」


なにより俺はイケメン。顔がいいやつの査定は甘くなるのはこの世の真理であるはずだ。

そんなことを必死に考えていたのだが、なんだかさっきから世界が揺れている気がする。まるで誰かに揺さぶられているかのようだ。


「たか…」


はっ!まさかこれが平行世界への移動ってやつか!?

神様に祈りが届き、世界線を移動する能力が俺に宿って時空を超えている真っ最中なのかもしれない。いや、そうに決まってる!


「この世に神はいた!」


そんな希望を胸に抱き、俺はカッと目を見開いた。


ウェルカム新世界!オラに元気を分けてくれ!おめぇの助けが必要なんだ!
















「あ、ようやく目が覚めたんだね。心配したんだよ」



「あんぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!」



訂正。この世に神はいなかった。目を開けた先にいたのは、化け物でした。



長い黒髪はところどころほつれて顔を覆いその隙間から覗く鳶色の瞳は赤く充血して悪鬼のような輝きを放っている。さらに額からは血がだらだらと垂れ落ちているという、リアル○子がそこにいた。

言うまでもなく、その正体は真波葉留佳その人である。

目だけは心配そうにこちらを見ているが、その常人のような態度が余計に怖さを引き立てていた。


金網デスマッチを繰り広げたレスラー以上に流血して、制服の胸元まで血がびっしりこびりついているというのに、惨状に対して彼女の穏やかな声色はあまりにミスマッチだ。

これがアニメのオフレコ現場なら、即座に監督からNGを食らうくらいには、場違いすぎる態度であった。


「ち、ち、ち、ちがががが」


「んー、まだ寝起きだから混乱してるのかな?そういう顔も可愛いなぁ…♪」


目の前の幽霊はポタポタと頬を伝う鮮血を意に介さず、ガタガタと震える俺を見てポッと頬を赤らめている。


え、なんで平気なの?それが君のデフォルトなの?血足りなくない?カルシウム取ってる?ヤクルトやろうか?


「せっかくだし膝枕してあげようか?心配しなくても貴幸くん専用だから遠慮しなくていいんだよ?」


「悪いけど遠慮しておきます。全力で」


上手く思考が定まらない俺をよそに、なんか話を勝手に進めようとしている彼女の提案を俺は文字通り全力で断った。

スカートから覗く柔らかそうな太ももは確かに魅力的ではあったが、それ以上に侵食されて白から黒ずみ始めたスカートのチェック部分を見てしまっては心休まる気がまるでしない。後頭部が鉄臭くなりそうだ。


「えー。いいじゃない。せっかくふたりきりになれたんだし…」


「いや、さすがにそんな血まみれの姿に甘えようが…ん、んんん?」


不満げに口を尖らせる真波を見て、俺はある違和感を覚えた。

いや、違和感というなら今の彼女の状態全てがそうであるし、このまま帰路につこうものなら職質待ったなしであることは確かだけど、重要なのはそこじゃない。


「真波さん?つかぬことをお聞きしますが、貴女にはそのぅ、好きな人がいたりとかいなかったりとか、いないほうが嬉しかったりしなかったり…」


「え!?きゅ、急になにを…は、恥ずかしいよ…」


そういって俺の質問に顔を赤らめ、恥ずかしそうに顔を血まみれの両手で覆い隠すのだが、その隙間からはチラチラとこちらをうかがっているのが丸わかりだ。


ついでにいえば、怨霊に呪われてるみたいで心臓が高鳴りっぱなしでもある。

彼女のギョロリと血走った血混じりの瞳が、俺には魔界に巣食う邪悪な悪魔のそれに思えて仕方なかった。


(なんてこった…)


だけどこれは間違いない。この態度を見れば嫌でもわかる。そしてこの熱っぽい視線にも身に覚えがありすぎた。こうなれば、もう直視せざるを得ないだろう。




真波葉留佳のなかから、俺への好意が消えてはいないという絶望的な事実を。




(まさか、勝ったというのか。催眠アプリの力に…!)


同時に俺は戦慄していた。真波は世の理に打ち勝ったのだ。

それが物理的にであっても、彼女が美少女なら勝てるはずのない好意を捻じ曲げるアプリに確かに抗った。これがどれほどの偉業なのか、俺にはわかる。

わかるだけに、このまま野放しにしてはいけないということも、痛いほどにわかってしまった。


(な、ならもう一度アプリを見せれば…!)


真波は存在してはいけない存在だ。一刻も早く対処しなければ世界がヤバい。


そう思って再度催眠にかけるべく、床に置かれたスマホに手をかけるのだが、先ほどまでの光景がトラウマになっているのか、恐怖と震えでうまく手に取ることができずにもたついてしまう。


「く、くそっ」


「どうしたの、貴幸くん。あ、スマホだね。取ってあげるよ」


俺が苦戦していると、いつの間にか近づいていた真波がヒョイとスマホと取り上げた。そのまま俺に渡すことなく、何故か彼女は電源をつけてしまう。


「あっ!お、おい!待て!それは…」


「せっかくだし連絡先も交換しておこ♪私が登録しておくね…ん?あれ、なにこのアプリ…催眠アプリ?」


あ、終わったわ俺の人生。


もっとも渡してはいけない人間の手に、悪魔のアプリは渡ってしまった。

俺は今日幾度目かになる絶望を、また味わうことになっていた。


「えーと…へー…ふーん…なるほど…」


彼女は今、マニュアルを開いて確認でもしているのだろう。

時折頷いてなにやら得心しているようだ。自分の体を見下ろしたりもしているし、大方察しがついたのかもしれない。


(グッバイマイドリーム…グッバイハッピーフューチャー…)


催眠アプリという代物は別に美少女限定で効くわけでもなく、男にも有効なので無論イケメンの俺にもこうかはばつぐんである。


ひとたび見れば俺もたちどころに催眠の餌食になり、一生真波に従順に隷属する奴隷へと早変わりするはずだ。そんな絶望の未来に、なんの価値があるというのだろう。


(死のう…)


俺が決意を固め、舌を噛みちぎろうとしたとき、真波はようやく顔をあげた。

どうやら少しばかり遅かったらしい。罰は甘んじて受けろという、神様からのメッセージかもしれないな。

俺は全てを諦め、絶望の篭った重いため息をついた。


「なるほど。私がこんなに血を流してるのは、このアプリのせいだったんだね」


「厳密には違うけど、まぁ間違ってはいないよ…それで、俺をどうするんだ?」


貴女がアプリに全力で抗ったうえ、壁さんとセッションの末に地の底から蘇ったゾンビさながらのヘドバンかましたからです、なんていうのは野暮だろう。

事実、彼女は自らの力のみで打ち勝ったのだ。ここは現代日本だが、時代が時代なら戦士として尊敬に値する女傑に違いない。

それが横目に見える壁に真紅のデスメッセージを施したアマゾネスであったとしても、彼女は確かに勝者なのだ。明日の朝、あれを見た先生が卒倒しないことを、俺は心から祈っていた。


「それはね…こうだよ」


力なくうなだれたまま、裁きの時を待つ俺の眼前に真波はスマホを突き付けてきた。


「…だよな。まぁ当然か」


俺は力なく笑う。どうやらすぐに実行に移すようだ。

これまでの自分に、お別れの時間すらくれないらしい。


「せめて優しくしてくれよ。俺、こう見えてもイケメンだからさ」


「知ってるよ。例え貴幸くんがナルシスト入ってるから自己評価高いだけで、ほんとはフツメンでも、私からすれば貴方はとても素敵な人だから」



フッ、冗談上手いぜ。俺はこんなにイケメンだというのに。

ま、最後の言葉としては悪くないか。



なんだか悪い気分はしなかった。よく考えれば流血しまくりのストーカーとはいえ、一生美少女の奴隷とか、結構いいんじゃないかとすら思えてくる。

ポジティブに考えながら真波の言葉を待っていると、不意に彼女が微笑んだ。


「貴幸くん」


「なんだ」



投げられた声。それはひどく穏やかで、優しくて。




「私、道具に頼るのって好きじゃないんだ」





グシャリ





そしてとても綺麗な笑みを浮かべたまま、彼女は手に持った俺のスマホを、催眠アプリごと握り潰した。















……







…………?







…………………????









握り潰した…だと…









「え、おま、うそぉ、え、お、うおえああああああああ!!!!!」



「こんなものに頼って心を手に入れても、なにも嬉しくないよ。やっぱり好きな人の心は、自分の力で手に入れないと!」



なにやら真波がいいことをいっているようだが、今の俺には聞こえやしない。

目の前で行われた衝撃映像に、びっくり仰天の真っ最中だ。



スマホを握り潰した!?人間にできることじゃねぇぞ!?ゴリラかこいつ!!!



あの細指に、一体どんな力が秘められていたというのか。

最悪男女の体格差でなんとかなると思ったけど、あんなの勝てるはずがないよぉ…



「ねぇ、貴幸くん」



「はひぃ!」



あらゆる意味でこの女に勝てない事実を見せつけられた俺は、豚のような情けない悲鳴をあげてしまう。

もはや上下関係というものを魂に刻まれつつあった俺に、真波はまたも微笑んでくる。



「これからもよろしくね。ずっと、ずーっとね…」



その目には先ほどのような光は既にない。

ドロドロした底なし沼のような真波の瞳に吸い込まれるように、俺は頷くしかなかったのだった。






ちなみに後日、スマホは真波ごしゅじんさまに買ってもらった。お揃いっていいよね…ハハハ…

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俺のことを好きすぎるストーカー女が怖すぎるので催眠アプリを見せて擬似寝取らせでフラグ回避し円満解決をしようと思ったら全力で抵抗してきた件 くろねこどらごん @dragon1250

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