第11話 黒のプレイヤー

 ちょうどいい敵は……お?


「で、でっかい蛇だな……」


 アナコンダ見たいな、でっかい蛇がぬかるみの奥にのたうつように動いてるのがみえた。


「よし、とりあえずあいつを倒せ」


 邪教者に指示を出す。でかさだけでいえば子供くらい丸呑み出来そうな蛇だが……もし、邪教者で倒せないレベルだといきなり印璽を使わなくちゃ行けなくなる。それはさすがに勘弁願いたい。


『ヴァァア!』


 命令された邪教者が何も持っていない腕を掲げ、唸るような声を上げたかと思えば、その手から黒い玉が飛び出し、蛇の胴体に命中する。


「シィァアァ!!」


 ゆったりと動いていた蛇が、激しく暴れ、そのままビクビクと大きく震えたかと思えば、急に微動だにしなくなる。


「……死んだのか?」


『ヴァ』


 当然と言わんばかりに首を動かし、蛇の死体をつかみ、引きずるようにこちらへと持ってくる。


 見れば、玉が当たった場所は丸くぺちゃんこになっており、力なくだらりとした体は、泥の汚れを抜きにしても生気が全く感じられない。


「よし、よし……近くで見るとまたでっかいなおい……」


 とりあえず、アナコンダレベルの巨大蛇でも、攻守が1あれば倒せることがわかった。さすがに人間や、他の生き物も同じとは限らないが、最低限、戦えることがわかったのは大きい。


「よし、邪教者は俺と一緒にいろ。一族は、安全な場所を探してきてくれ。ヤバそうな奴がいたら逃げてこい」


『ヴァ!』


『ハッ!』


 邪教者は俺のそばで周囲を警戒し、一族はまっすぐどこかへと向かった。


 最悪、一族が死んでも後続を呼ぶ手段は確保出来てる。結構大胆に動いてよさそうだ。


 しばらく待ってみるが、特に変わり映えはしない。ジメジメした空気はあまり気分のいいものでは無いけど、安全と明言されてた以上、気を抜けるのは楽でいい。


「あとは、食べ物と水……沼があるってことは、川とか近くにあるんじゃないか?」


 とりあえずは一族を待ちつつ、沼地をゆったりと見て回る。


 アナコンダもどきみたいな生物がこの沼地には結構な数住んでいるらしく、時折大きく沼の水面が揺れるのが見て取れる。その度にちょっとビビりつつ、15分くらい歩けば元の場所に戻ってくる。


「まあ、わかっちゃいたけどそんなに大きな沼じゃないよな」


 一周するのにそんなに時間もかからないし、生き物もそれなりにいる。正しく安全圏である。


 これで水場とか、食べれるものがとれれば文句なしなんだが……


 それから30分ほど待って、一族が戻ってきた。足元が泥で汚れてる以外は特に変わった様子は無いので、安全な場所を見つけたのだろう。


『ハッ!』


 一族の先導のもと、沼地を後にする。邪教者もしっかり着いてきてくれているので安心して進める。これで明日以降の安全も確保できる。


「よし、幸先がいいな!」



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「と、思ってた時期がありました……なんだよあれ……」


 しばらく進んでみれば、沼地から少し深めの森に変わり、そこにあった一族の発見した洞窟にたどり着いた。生き物が住んでるような痕跡もなく、せいぜい小動物が出入りした可能性がある程度で、雨風を凌ぐのにはもってこい。文句無しの拠点だった。


 そこに荷物を置いて、一族に薪になる枝だとか、食べれるものを探しに行かせた。そして俺は邪教者と地形把握のために1時間くらい見て回っていた訳だが……


「やばいだろアレは……」


 ズシン、と歩く度に軽い揺れすら感じる巨体を持つ……恐竜としか表現しようがない、デカブツが悠々と闊歩していた。


 幸い、こっちに気づいてる様子はないが……あれはない。あれを無視して洞窟に籠って生活なんてできない。


「倒すしかない……よな」


 攻守、活力がどれくらいは想像できないが……少なくとも4以上はあると思う。あのアナコンダもどきは攻守0か1、活力1だろうから、4倍以上はあるだろう。


 今使える魔力は黒魔力2点、無色魔力1点。手札は

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《こじ開け》

《黒い血染めの頭蓋骨》

《奇縁》

《黒い血の首領》

《武器仕込みの刺客》

《暗殺》

《黒い血の始まり、ヴィルハイス》

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 の7枚。


 使えるカードは《奇縁》のみ、印璽を使えばここにあるカードは全て使えるが……《暗殺》は切り札的な1枚、ここで切りたくはない。


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《奇縁》【破棄】

 必要魔力:黒〘2〙

 能力:【人間】一体を生贄に捧げる。生贄に捧げた【人間】の必要魔力に+2した数の魔力を持つ【人間】か【悪魔】一体をデッキから選び召喚する。その後、召喚したモンスターの活力分のダメージを受ける。

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 やっぱりこれしかないか?必要魔力が3の【召喚】でも、悪魔ならかなり戦える。邪教者もいるから、勝負にならないってことはないと思う。


 ……候補の魔力3点を思い出す。ここは戦闘力重視で行くか、効果で行くか……


 手札に来てる武器仕込みの暗殺者は外していい。こいつは対人や格下相手にしか使えない。


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《荒くれ者の殴殺者》【人間】【狂戦士】

 必要魔力:黒〘3〙

 攻守:5 活力:2

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 能力は特にない代わりに、敵を叩くだけで十分なメリットをもたらすわかりやすい脳筋モンスター。


 それに対してもう一体は


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《首裂き魔》【悪魔】【暗殺者】

 必要魔力:黒〘2〙無色〘1〙

 攻守:2 活力:3

 能力:召喚した時、相手一体に2点のダメージを与える。

 無色〘1〙:1時間攻撃できなくなる代わりに対戦相手か【召喚】一体に1点のダメージを与える。

 黒〘2〙:活力3以下の【召喚】一体を破壊する。この能力は1日に1度しか使えず、24時間使えなくなる。

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 逆にこっちは攻撃力が低い代わりに、敵に傷を与える嫌がらせモンスター。


 どっちにするか……これは悩む。いや、まあ、まだ戦うと決まったわけじゃないけど……


「二人はどう思う?あのでかいの、倒せると思うか?」


『ハ……』


『ヴァ……』


 2体は首を振って否定する。現状の戦力だとやはり無理だと判断している。まあ当然か。


 恐竜のような化け物は、木に体を擦り付け、そのまま傾けてしまう程の巨体で、ティラノサウルスをもうちょっと小柄にして、もっとシュッとさせたような容姿をしてる。


 攻守もそうだが、デカイ分活力が高そうだ。


「ここは……」


 そして、俺はついに決心をするー……

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