第7話
かれこれもう3時間以上歩いています。普段の登校がだいたい2キロくらいで、徒歩で30分くらいの私で計算すれば、最初の休憩からだいたい6キロくらい歩いた計算ですね。
こんなに歩いたのは行事の登山くらいですよ。疲れました。
日も少し傾いてきてますし、割とやばい気がします。
木の間隔が広くなってる方向に向かって進んでるつもりですが、こっちに人里なり安全な場所があるかなんて分かりませんし、なんだかとっても心細くなってきました。
「アラクネさん的には、こっちでいいと思いますか?」
『ゥァ?ゥゥ……』
足を止めて考え込むアラクネさん。両の腕を顎とこめかみに当てるポーズは考えるポーズなのでしょうか?あ、蜘蛛型の前足?腕?も腕組するみたいになってます。
少しすると、ちょこっとだけ向きを変えてこっちと言わんばかりに顎を突き出してきます。
「こっちですか?じゃあそうしましょう」
角度的にいえば20度くらい傾いたでしょうか?まあ、これでダメでも元々ですし、アラクネさんに従いましょう。
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「おぉ、川です。川ですよ。素晴らしいです」
アラクネさんすごい。水場です。
見晴らしのいい、木もまばらに生えた程度の草原?です。夕日が目に痛いくらいに眩しい時間なので、結構危なかった気もしますが、とりあえずここで今日は休みましょう。
「アラクネさん、今日はここで休みましょう」
『ゥゥ』
アラクネさんが拾ってくれたいす石に腰掛けてほぅっと息を吐きます。足がちょっとだるいです。
喉も乾きましたし、水筒のお水をちびちび飲みつつ、今後のことを考えます。
「いやそもそも今後って何すればいいんでしょうか?」
パソコンにはとりあえず生きて勝てって書いてありましたけど、誰と戦うんでしょうか?
同級生?現地の人?何か他に敵になるような人がいるんでしょうか?
「うーん、さっぱりです……」
とりあえず喉も潤いましたし、晩御飯を気にしましょう。携帯食をとりあえず食べてみます。
「うーんモサモサ……」
想像の下を行く無味さと想像の上を行く粉っぽさに悲しくなってきました。
アラクネさんは虫と葉っぱを取りに行ったみたいで、視界の端にちらちら見えてます。
しかしこれだけじゃ足りません。ついにこれに手を出すべきでしょうか……
私は謎肉の干し肉を睨みます。匂いは塩の尖った匂いがします。
「……ええい、ままよ!」
女は愛嬌です!あ、度胸です。
……しょっっっっっぱ!
「ぅ、ぅうぇ……しおっかふぁぃ……」
塩キツすぎでしょう!こんなもの食べれません!
騙されました……味が塩しかない……うぐぐ……
ん、ん、食べさしを流石にアラクネさんにあげるわけもいきませんし……
とりあえずそっとしまいます。見ない見ない。
あ、虫はちょっと……え、え、いや、さすがに……美味しいから?いや、私はお腹がもう……
〜ぐぅー〜
「……」
お、女は愛嬌ですぅぅぅ!
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夜です。
はい、真っ暗です。
虫?はは……知らないですよなんのことですかあはは
今は拾った枝に火を点けようとして全然火がつかなくて焦ってるのと、火がついたと思えば煙がすごくて断念しました。
漫画やアニメではあんなに簡単に薪にしてるのに、この世界は不親切です。
まあとにかく今は毛布を被って寝る用意です。寒くは無いですが、他の生き物から見つけられにくいかもしれないですし、薄手とはいえ1枚布があればクッションになってくれますし。
アラクネさんもそばにいてくれますし、安心して眠れそうです。
では、おやすみなさい。
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はい、何事もなく朝です。明るいって素晴らしいです。
アラクネさんは……まだ寝てます。起こさないようにそっと顔を洗ってきましょう。
ふぅ、水が冷たくて気持ちがいいです。
あ、そうだ、1日経ったので魔力が溜まってるはずです。これで魔力が2点のカードを使えますよ!
手札の2点のカードは……
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《蠢く泥濘》
《活性化》
《樹木枯らし》
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この3枚ですか。
戦力に厚みを持たせるなら泥濘を呼び出すべきですが、現状、アラクネさんで対処できない状況では無いですし、魔力の確保を優先すべきでしょうか?
《活性化》に関しては、3日間【召喚】で呼び出したモンスターを攻守1、活力2アップさせる、すぐに使える切り札的カードです。これはまだ温存でしょう。
んー、効果をおさらいしておきましょう。
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《蠢く泥濘》【軟体】【粘体】
必要魔力:緑〘2〙
攻守:1 活力:2
無色〘1〙:魔力2点以下の【遺物】を破壊する。
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《樹木枯らし》【魔力】
必要魔力:緑〘1〙無色〘1〙
戦場の自分の【召喚】【遺物】【戦友】1枚を生贄に捧げるか、手札の【詠唱】【破棄】【付与】2枚を生贄に捧げる。
緑魔力2点、無色魔力4点を生み出す。
その後、ライフを2点失う。
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前者は遺物を破壊でき、後者はモンスターや手札、ライフを引き換えにして魔力を生み出す効果です。
ライフが減るのは怖いですけど、4点も魔力が増えるのはとても美味しい気がします。
ただ、魔力を使った場合、アラクネさんは生贄にしないことは確定してるため、《活性化》と《生き餌の罠》を生贄にすることが決定してしまいます。
アラクネさん強化のために取っておく、というても無いわけではありませんが、やっぱりアラクネさん以外のモンスターを呼び出せる可能性が出てくるのは魅力的です。
むむむ……ここはアラクネさんのご意見も聞いてみましょう。
いつの間にか起きて周りを見てるアラクネさんに寄って聞いてみます。
「アラクネさんは、魔力を増やして、強いモンスターを呼ぶのと、今の魔力で他のモンスターを呼ぶのと、現状維持で、いざと言う時に取っておくの、どれがいいですか?」
『ゥゥゥ?ゥー……』
例のちょっとヘンテコなポーズを取り考えるアラクネさん。しばらく待ってると、そのままでいいと手を横に振ります。
「なるほど、現状維持ですか……わかりました、じゃあ、今日はここで食料でも確保しましょうか」
川があるのです。お魚とかとれるかもしれません。
……アラクネさん、糸ください!
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