第6話
『『ギョアアアアアアアアァァァァッッッッ!!』』
うわぁ……びっくりするくらいやばそうな声が。一体どんな怪物が……
「と、とりあえず進むのはやめときましょう……」
アラクネさんの腕をクイクイひっぱって別の方向に誘導します。アラクネさんもさすがにやばいと思ったのか、大人しく進路を変えてくれます。
しかしどうしましょうか?アラクネさんがみつけてくれた水場は、さっきの鳴き声の主の縄張りなんでしょうか?
うーん、安全な場所に行って落ち着きたいです。
「あっ、そういえばドローの確認をしていませんでした」
うっかりさんです。手札は基本的に7枚になるようになってるんでした。どれどれ……
《家畜呑み》ですか。今は使えないですね。まあ、魔力不足でどれも使えないんですけども。
……声の主がこっちに来るとかはなさそうですが、やっぱり不安が拭えません。なんであんな文章を信じたんでしょうか。
「アラクネさんが見つけたのは川ですか?湖ですか?」
川なら人がいるかもしれない方角がわかるかもしれませんし、湖なら、頑張らないといけないことがわかります。
……死にたくないなぁ。
あれ?なんで私こんなに落ち着いてるんでしょう?今更ながらどくどくって心臓が痛いくらい脈打ってます。
「こわい……」
思わず、口をついて出る言葉にハッとします。
普段の私なら、こんなことになったら、それこそ震えて動けなくなるくらいビビりですのに。
……深く考えるのは、なんだか良くないことのような気がします。まずは安全なとこに行きたいです。
「アラクネさん、そばに居てくださいね?」
思わず、ぎゅっとアラクネさんの腕を掴みます。アラクネさんは嫌な顔せず……いや、表情全く読めないですし見上げると首が痛いですけど、とにかく、振りほどいたりしないで一緒に居てくれます。
ほんと紳士的。女の人ですけど。
ぼちぼちと声のした方とは逆方向に進んでいきます。アラクネさんは食べれるものの見分けが着くのか、謎の葉っぱや、手の届かないところの木の実とか、たまに飛んでる虫とかを捕まえてます。
……虫、食べれないですよ私?アラクネさんのご飯ですよね?そうですよね?
「そういえば、お腹がすきました」
今が何時なのかも、どれくらい歩いたかもわかりませんが、ほんのり血色が良くなってるおててが見えます。それなりには歩いたみたいです。
「アラクネさん、休憩しましょう」
『ゥゥ』
アラクネさんに声をかければ、そっと音を立てずにどこかに行きました。
えっ、置いてかれた?
っと思ったら、座るのに良さげな石を取ってきてくれました。
やだ……紳士……
アラクネさんの持ってきた石に腰掛けて、もそもそした固形物を手に取ります。
「どこからどう見ても粉っぽいカ○リーメイトです」
見た目は正しくカロリー○イトで、匂いとかは特にありません。
謎肉の干し肉よりかは、食べることに忌避感はないですけど……
「ここはやっぱり、アラクネさんがとってくれたものを食べましょう」
ころころとした木の実を、背負い袋の中のナイフで切ってみます。プチッと言う音と共に、ちょっと赤っぽい果肉が見えます。あ、甘い匂い。
たぱぱと溢れてきた果汁を、ちょっとはしたないですけど舐めとってみます。
「!すっぱぁまいです!」
酸味がかなりきついですけど、甘みもあって悪くないです。でも酸っぱいです。
果肉に歯を立てますが、結構硬いので、果汁をちゅうちゅうするだけになっちゃいます。酸っぱいので休み休み吸ってますが、どんどん溢れてきます。
「ふは、逆に喉渇きますねこれ……ん」
皮の水筒に口をつけます。うーん、ぬるい。皮独特の臭さとかはないので、味は普通なんですけど、個人的にお水はしっかり冷やしたグラスにクラッシュアイスをザラザラいれて、飲みながら氷をガリガリやるのが正義なのでちょっと残念です。
ちなみに、この間にアラクネさんは謎の葉っぱに虫を包んだものを食しておられました。詳細は伏せます。
アラクネさんにそれを差し出された時は丁重にお断りをさせて頂きましたが、いよいよの時は覚悟をしないといけませんよね。絶対に嫌ですけど、しなければいけないんですよね……
そうならないよう、食料をどうにか確保しなければ。やることが増えてしまいました。まだ安全な場所とか、見つけてないのに。
「ごちそうさまでした。喉潤しただけな気がしないでもないですけど」
結局、果汁を吸い終わった果肉をちびちびかじってたら満足しちゃいました。甘いものはやっぱり女の子の1番のエネルギー源ですね。
「さて、それではアラクネさん。安全な場所か、水場か、とにかく、危険のないところを探しに行きましょう」
『ゥゥッ!』
頼もしい限りです。あ、いす石持ってってくれるんですね。私もうアラクネさんなしじゃ生きていけない気がします。
そんなことを思いながら、再び2人で歩き始めます。
早く落ち着きたいですね。
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