第8話

 なんでしたっけ、釣りでお魚1匹も釣れないこと……カナヅチ?違う気がします。


 はい、1匹も釣れませんでした。


 アラクネさんも、お魚釣りは苦手なのか、1匹しか釣れてないみたいです。これは他の方法を考えないといけません。


 と言っても、野草の知識なんて持ってませんし……移動して人の住んでるところとか探すべきなんでしょうね。


 でも、闇雲に移動して、昨日のあの声の正体みたいな、危なそうなものに出会うかもしれないですし、あんまり動きたくもないですね。まあ、今日はとにかくこの辺で生活に必要なものを頑張って探してみましょう。


 あと、木の枝、しっかり乾かしてちゃんと火がつくようにしましょう。真っ暗はやっぱり怖いです。


 そうときまれば、アラクネさんと一緒に周辺の見回りです。アラクネさんは食べれるかどうかわかる人なので、ついて行って荷物を持つくらいはやりますよ!


 まあ、アラクネさんの方が力持ちなんですけど。


 はぁ、ほんと、これからどうしましょうか……



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 お昼くらいにはなったでしょうか?2、3時間時間をかけて周りを見て回った結果、特に何も無いことがわかりました。


 いえ、動物性タンパク質は発見に至らずですが、植物は大量なので、とりあえず生きるには困らなさそうなんですけど。


 カブっぽいころころした根菜みたいなものや、昨日の葉っぱや、トゲトゲした木の実や、いい香りの花や、とにかく色々集めました。


 あと、燃やせる枝が欲しいと呟いたら、アラクネさんがいくつか拾ってくれました。どうも、私が拾ってた枝は道具用だと思ってたらしく、薪に使うとは思ってなかったらしくて、ちょっと残念な子を見る目で見られてしまいました。


 キャンプすらろくに行ったことないので許してください。あと、そんな目で見ないでください喜んじゃいますよ。


 冗談はさておき、これで火が使えます。


 火打石っぽいのをカンカンやったら、あっという間に火種が出来ました。見回りの間に拾った手頃な小石を並べて、それっぽい枠の中に、枯れた葉っぱや、枝を重ねて置いて、できたばかりの火種を突っ込めば……


「ついた!」


 ぱちぱちと音をたてながら火が広がります。またちょっと、気持ちが落ち着きますねこれで。別に火を見て和む趣味とかないですけど、何故かたき火を見てるとほっこりしちゃいます。


「とりあえずは第1目標完了です。あとは食料です」


 お魚がダメだったので(アラクネさんのお魚はアラクネさんが生でいってました。頭から)どうにか食べれるものを確保しないといけません。


 うーん、お肉と言っても、動物を捕まえるなんて無理ですし、お魚も、料理はするのできったりはできるでしょうけど、捌いたりはできませんし……


 あれ?これ詰んでます?


 なにやら背後でアラクネさんが虫を捕まえてる気配がするのはきっと気の所為ですそうです。


 な、なにか考えなければ……!しかしこういった知識はさっぱりですし……と、とりあえずもう一度釣りでも……



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「はふはふ!んみゃんまっ!」


 お魚美味しいですおいしいすごく美味しいです!


 あの後、夕方になるまで粘った結果、なんと3匹も釣れました!


 釣れた時はとにかく嬉しくなって小躍りしちゃったくらいです。またアラクネさんの視線が生暖かった気がしますが、気にしませんよ。


 で、釣った魚の処理なんて分からないので、ナイフでお腹をさいてワタを取って枝をさして直火焼きです。あの塩辛い謎肉も一緒に炙ってしゃぶりながらお魚食べればちょうど良い塩梅で大変よろしいです。


 しかし今日も何も出来てませんね。まあ、火もあって、ご飯も食べれるだけ、マシなのかもしれないですけど。


 まだ寝るには早すぎますし……そうですね、串替わりの枝をもっと作っておきましょう。ナイフで先をちょこっと尖らせて、ゴツゴツしたところを削ってならすだけですけどね。


 10本くらい削りましたが、すぐ手持ち無沙汰になっちゃいました。今日は火があるので夜更かしできるのでなにかしたいんですけど……


「アラクネさん、すごく暇です」


 困った時のアラクネさんです。まあアラクネさんは時々虫とか葉っぱを採ってはちびちび食べたりしてるんですけど。


『ゥゥ?ゥー……』


 少し考えてから、アラクネさんは手首の裂け目から糸を出して、木の枝にからませて何かを作り始めました。


 2代目釣竿でしょうか?


『ゥゥゥ!』


 たっぷり時間をかけて何かを作ってるのを眺めつつ、暇なので串作り再開です。何となくまっすぐになるようにカリカリザリザリ削っていきます。


 あ、ちょっとここ削りすぎ……ああ、ここはもっと削らないと……


 そうこうしてるうちに、結構時間が経っていたのか、アラクネさんに肩をトントンされます。


『ゥゥゥ!』


 じゃじゃーんと出てきたのは、えーっと、なんでしょう?


「弓?」


 なんか複雑な形した弓のようなものが出てきました。これをどうしろと?


『ゥッ、ゥッ!』


 私が削ってた串もどきを掴んで、弓のようなものに引っ掛けるみたいにして構えてます。


 え、え、それ、串なんですけど……


『……ッ!』


 びゅっと音を立てて飛んでいく串……まあ、音だけで、ころんっと落ちてますけど……


『ゥー!』


「あ、ありがとうございます……?」


 差し出された弓のようなものを受け取ります。そんなに重たくは無いですね。アラクネさんの糸を使って木の枝をいっぱい束ねて、それっぽい形にしてあるだけなんですけど、ちょっと理解できないくらいかっちかちなんですけどこれ。

 弓の弦って部分は、ちょこっとゆるめで、私の力でも引っ張れそうですが……


 ちょっと気になるので、見様見真似で引っ張ってみます。


 そうすると、アラクネさんがちょこちょこと腕やら顎やら触ってきます。くすぐったいです。


「な、なんですか?あ、構え違います?あ、はいはい……」


 気づけば構えの指導が始まってしまいました。それから眠くなるまで、手取り足取りたっぷりと構えの指導をされてしまいました。


 まだ矢をうつことすらさせて貰えない下手っぴさに軽く絶望しながら、なんでこうなったのかと思ってしまいます。


「ただの串なのに……」


『ゥッ!?』


 そんな驚いた顔で見ないでください。弓なんて使うつもり無かったんですし……


 ま、まあ、自衛の手段になるかもですしいいですけど……これ、アラクネさんが使った方がいいのでは……あ、必要ない?そうですか。非力でごめんなさい。


 はぁ、明日、頑張りましょう。

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