1話 赤ちゃん

 階段を昇り詰めると急激な光に包まれ不思議な感覚に陥っていった。

 なんというか物凄く温かい。


 そう温かい。


 優しいぬくもりに包まれる。今までこんな気分になったことはなかった。


 次の瞬間。光が差し込んできた。


 視界がはっきりとしないがやたらと眩しい。


「よくっ! よく頑張ったな! エーラ」


(なんだ?)


 俺の耳元でスピーカーみたく大音量な男の声が響いて聞こえてきた。

 そして女性の吐息音が聞こえて深く深呼吸をしていた。

「はぁ、はぁ……。そっか、よかった。出てきてくれたんだありがとう」


(出てきてくれて?)


 なんのことだかわからない。

 そして視界がどんどんとクリアーになっていく。

 先に見えたのはブロンドで20ぐらいの女性が物凄い汗を流しぐったりと表情をしていた。

 そして次に男の方が女性の方へと駆け寄っていた。


「大丈夫かエーラ?」


「えぇ、少ししたら大丈夫よシモン。赤ちゃんはどう?」


 赤ちゃん? なんのことだ? それにここは一体どこだ?


「あぅ、あぁー」


 手のひらと足をバタバタとバタつかせる。

 

 ん? 体が動かせる? え、ちょっと待てどうゆうことだ?

 状況が全くつかめない。


 すると男はニヤッと不気味な笑みを微笑んでいた。 


「ほーらパパですよ!」


 おい、待ってくれ状況がつかめないんだが説明してくれ。それとその顔やめてくれ。


 手で払おうと再び手をバタつかせる。


「あぅ! あぁー!」


 すると男は満足そうな顔をしていた。


「エーラ喜んでくれたぞっ!」


「あら、そう良かった」


 喜んでねぇよ!

 本当にこっちは話を聞きたいっていうのに……。


「ねえシモン。抱かせてくれない?」


「そうだな」


 なにも抵抗を出来ない俺を男が抱きかかえるとすぐさま女性の方へ抱きかかえられていた。


 怖い……。怖い、知らない女性に抱き着かれて本当に怖い。


「「うわぁぁぁぁぁっ!」」


 そのまま女性は俺の体をトントンと優しく叩いていた。


「あら、あら。ミラといい。元気がいいわね」


 俺はすぐさま泣くのをこらえその言葉を聞き逃さずにいた。

 

(ミラ? 誰のことだ一体)


 すると女性は手を伸ばし。その方向へ目を向けるともう一人の女の子が眠って頭を撫でていた。


「あなたの弟よ。姉弟仲良く元気で過ごしてね」


(…………)



 なんども俺を赤ちゃんということ、そして姉弟とそう告げた。


 多分だが、予測を立てるとしたら俺は赤ちゃんになっていた……。



 

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 異世界で第二の人生を歩む 二髪ハル @2kamiharu

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