第一章 出会い 【秋彦の場合】


 翌朝。6時。目覚まし時計の音に目覚めた俺は、モソモソと布団から這い出て、洗面所へ向かった。


そう、俺は、低血圧。朝が弱い。洗面所の前に立ち、鏡に映る自分を見る。ボサボサの髪の毛、ボォーとした顔。そして、眉間にシワ。


『秋彦ってさ-。いつも、眉間にシワを寄せて、不機嫌な顔をしているよね。笑顔も卑屈だし-。』


俺は、眉間に寄ったシワを指で押さえる。

仕方ねぇーだろ、これが俺の顔だ。

笑顔が卑屈って、何だよ。

だいたい、楽しくもねぇーのに、笑えるかよ。


そんなことを考えていると、余計に眉間にシワが寄る。

いかんいかん。朝から不機嫌になるところだった。


俺は、鏡をジィーッと見つめ、ニィーッと笑う。

…………キモッ。


水道の蛇口を捻り、水を出すと、顔を洗う。

俺は、いろんなことに、いちいち考え過ぎるところがある。何でも、深く考え過ぎるし。


うん、そうだ。いろいろ言われても、俺は俺だ。

これが俺なんだ。

今更、変われないし、変わろうとも思わない。


キッチンへ向かい、トースターで食パンを焼きながら、冷蔵庫から、紙パックのアイスコーヒーを取り出し、コップに注ぐ。


アイスコーヒーを一口の飲む。ああ、身体に染み渡るぜぇ~。

あっ、因みに、コーヒーは、ブラック派だ。

そんなことは、どうでもいい。


軽く朝食を済ませ着替えると、俺は、部屋を出て鍵をかける。夏でも、朝は、いくらか風があり、心地好い。さぁ、今日も、一日、気合い入れて、頑張るかー。


アパートの階段を下りた俺は、103号室の部屋のドアが開き、そちらを見た。白いTシャツに、ジーンズ姿の勇気が俺の方を見て、にっこりと笑う。


「おはようございます!」


「あっ…お、おはよう。」


勇気は、俺をじっと、見つめ、何かを考えている面持ちをする。

な、何だ?何か、俺、変か?まさか、寝癖ついてるか??


髪の毛を手で撫でる俺に、勇気は、優しく微笑む。


「日曜日も、仕事なんですね。気をつけて、行ってらっしゃい。」


「あ…ありがとう。行ってきま………す?」




ちょっと、待て。今、日曜日だと言ったな?




「今日って………日曜日なの?」


「ええ。日曜日です。」


俺は、上着のポケットから、スマホを取り出し、曜日を見た。

ほ、ほんとだ。今日、日曜日だ。


「どうかしましたか?」


眉を寄せ、見つめる勇気に、俺は、引きつった顔で笑う。


「あっ、いや、そのう……。そう!そうそう!忘れ物だ!忘れ物したから、取りに戻らないと。」


俺は、そそくさと、勇気の側を離れ、階段を上る。

部屋の鍵を開け、ドアを閉めた俺は、手に持ったスマホを畳に投げつける。


「アホか-!俺は!」


はぁ-はぁ-と、息を切らせ、靴を脱ぐ。

はぁ-あー!まただ!また、やっちまった!

そう、俺は、たまに、日曜日でも出勤する時がある。

会社は、日曜祭日は休み。なのに、俺は、出勤してしまう。

もちろん、会社に着いても、鍵がかかっていて入れない。そこで、ようやく、日曜日だと気づくのだ。



今日も、それかー!!



勇気に言われないと、俺は、きっと、一人、会社に出勤していた。無駄な交通費を使うところだった。


いや。いや、そんなことは、どうでもいい!

きっと、勇気は、変に思ったはず。

あいつ、間違って、日曜日に出勤しようとしてたんじゃねぇ?とか、思われてる。

いや、ぜったーい、思っている。


ああぁぁぁ-あー!


………………まっ、いいか。


これも、俺だ。


そう、俺は、開き直りも早い。

だけど………………………














めっちゃ、恥ずかしい!














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こんな恋愛も悪くない こた神さま @kotakami

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