お題:求めていたのは殺人犯 必須要素:小指の爪
この世でいちばんかわいそうなのは、足の小指の爪だと思う。
ぶつけられて砕けて、それからしばらくは気を付けてもらえるけど、忘れた頃にまたぶつけられる。
私の小指の爪は、その責め苦に耐えかねたように小さく小さくなってしまっている。
殴られた腹が痛む。
こうして部屋の隅に座って膝を抱えていても、なんにも良くはならないというのに。
この疼痛が退いたとしても、またすぐに新しい打撲痕をもらうことになる。
私だって小指の爪を虐めている。
そこに生まれてしまった以上、どうしようもないのだ。
私も小指も、そういうふうに作られた。
もし小指の爪が意志を持ったら、私に反抗するのだろうか。
自ら剥がれて、激痛を以って私への復讐とするのだろうか。
小指が腐り落ちたとしたら、その毒が全身に回って私を殺せるだろうか。
そうだったらいい。死なばもろとも、悪くない。
目線を上げる。
見据えたテーブルの上に、三徳包丁が乗っかっていた。
私はそれを手に取って――
即興小説 喜屋懐 @kiya_idaku
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