物証探偵
葵流星
物証探偵
いきなり突拍子がないのだが…。
俺は、死体を目にした…。
2020年8月22日
桜田門前ホール
この日、とあるeスポーツの大会が開かれていた。
そして、これまたとあるプレイヤーが殺された。
「…計画的な犯行ではないね。」
先輩は、なぜかそう言った。
なぜ、こうなったのか…とりあえず、話しておこう。
一週間前…
「なあ、GABBR(ガベル)ってゲーム知ってるか?」
「知ってるけど?どうしたの?俺は、プレイしてないぞ。」
講義のあと、友人の長瀬(ながせ)が話しかけてきた。」
「それがさあ…頼む、チケット2枚5000円で買ってくれ!」
「いや、それ転売というか…なんで急に?」
「実はさあ…俺、大阪で開かれるeスポーツの大会の抽選に当たってチケット購入してたんだけど…ちょっと行けなくなっちゃって…。」
「そうか…。」
「あっ、うん…それでさあ…どうよ?。」
「えっ…ああ、どうしようかな。」
「それじゃあ、わかった1万円かしてくれ。必ず返すから…チケットは貰ってくれ!」
「わかった、後で返してね。」
「ありがとう!」
ということがあり、チケットを貰った。
一体彼がどうしてその結論に至ったのかよくわからない。
その後、サークルに行った俺は友達の羽柴を誘ったが断られ…。
徳川さんを誘ったところ、織田先輩に強引に取られ一緒に行くことになった。
徳川さんは、和歌山に行く予定だったので結局、行けなかったので問題ない。
さて、このeスポーツ大会には国内の有名なチームが参加しており盛り上がっていた。
GABBRとは、Gun and Blade Battle Royaleの略で名前通りのバトルロワイヤルだった。
そして、大会終了後事件は起きた。
「さて、帰りますか先輩。」
「いえっ、秀明(ひであき)くん選手に会ってみない?」
「それは、無理だと思いますけど…。」
「そう思う?実は、このホールの総支配人は私の叔父さんなの昨日、電話で許可もらったからしばらくしたら挨拶して行っていい?」
「いいですよ。」
ステージ上では、撤収の為にスタッフが動いていた。
俺と先輩はと言うと、先輩の叔父さんに彼氏かと聞かれ違いますと答えていたところだった。
そして、女性の叫び声ともに事件が発覚する。
駆けつけたところ既に人が倒れており、慌てて先輩の叔父さんを呼びに俺は走った。
しばらくして、救急車に彼は運ばれて行った。
死因は頭部への打撲であり、骨は陥没、凶器は会場にあるポールだった。
しかし、肝心の凶器には指紋がなく監視カメラの死角となる通路で遺体は発見されたため取り調べには100人以上のスタッフがいる。
先輩はと言うと何やらスマホで調べていた。
「すまないが、話を聞かせて貰っていいかい?」
「はい…。」
「秀明くん、私犯人だけがわかったわ?」
「どういうことですか!」
「…犯人だけ…とは…。」
さて、先輩はどうやって犯人を見つけたのだろう?
「一体、どういうことですか?」
俺は、そう先輩に聞いた。
「今回の事件は誰でも実行できるわ。」
「本末転倒じゃないですか!」
被害者が見つかった状況を整理しよう。
まず、被害者は有名なプレイヤーの本名吉祥寺(きちじょうじ)守(まもる)であり、プレイヤーネームは「雷(ライトニング)」である。
彼が所属しているチームの名前は「風林陰火山雷」であり、この大会の優勝チームで漢字一文字がそれぞれのプレイヤーネームとなる。
この雷を発見したのが火(ヘルファイア)さんだ。
このチームは、男性3人、女性3人となっており、残りの2人が風(ラファール)、陰(オセロ)となる。
被害者は、スマートフォンを見ていたようで後ろから攻撃されたとされる。
どうやら、SNS「ナイチンゲール」で呟こうしていたのだろう。
アプリが起動していた。
そのため、左手だけ手袋をしていた。
先輩はどうやらナイチンゲールと、彼らのプロフィールを確認していたようだ。
ちなみに、この日の気温は30℃を超えており、このホール自体はかなり冷房が効いていた。
そして、何より俺と先輩は彼らを見ていた。
選手はまず、それぞれのユニフォームに着替え手袋など完全装備して写真撮影をしていた。
また、飲み物が提供されており、氷と水の入ったケースに入れられていた。
「なに、どうしたの?」
「犯人がわかったって?」
スタッフが先輩の声を聞いてようで辺りが騒がしくなった。
そして、件の5人がやって来た。
「犯人がわかったって本当なのか?」
「はい。」
「それじゃあ、誰が犯人なの?」
山(マッターホルン)と、風が先輩にそう聞いた。
「ちょっと先輩!」
俺は、先輩を引き留め後ろを向き。
小声で話し始めた。
「先輩、大丈夫なんですか?」
「うん、確信が持てた。」
「…一体どうして。」
「まず、この開会式と優勝後の写真を見てくれ。」
「これが、どうしたんですか?」
「この写真がおかしいんだ…。」
「どうしてですか?」
「この時、グローブをつけているのが林(ファイバー)と雷で、片方だけなのが山、他の3人は全員素手なんだ。」
「それじゃあ、今はどうだい?」
「5人全員グローブをしていますよ。」
「そう、指ぬきグローブを使っているのは雷と火、陰さんだ。」
「あとは、指先までありますね。」
「なら、話は終わりだ。」
「すいません、では…犯人をお伝えします。」
「ちょっと待った…警察の捜査も終わっていなにのに犯人だけはわかったのか?」
「はい、ですが動機はわかりません。」
「それじゃあ、推理できないじゃない。」
「探偵ごっこじゃないの?」
「推理には、動機は要りません。もう…よろしいでしょうか?」
ふと、周りが静かになった。
「犯人は、林(ファイバー)いえ、森田(もりた)竜介(りゅうすけ)さん…あなたです。」
先輩はそう言った。
「…何か証拠でも?」
そう、森田さんは答えた。
「証拠しかありません、だって殺してからもずっとそのグローブを嵌め手いるんですから…。」
「これは、ついさっき嵌めたから…。」
「アカウント名@satosikikuchiは、あなたですよね?」
「そんなアカウントは知らない。」
「でも、あなたが犯人です。」
「証拠はグローブですよ。」
「あなたは外す理由を失いましたから。」
「なっ…。」
その後、森田竜介は逮捕された。
先輩に殴りかかろうとした後止めに入った警官と警備員を殴ったからだ。
雷こと、吉祥寺守は死亡した。
「ありがとう、志保ちゃん。でも、よく犯人がわかったね。」
「はい。」
「でも、先輩どうしてわかったんですか?」
「そうね、まずナイチンゲールかな。吉祥寺さんはどうやら執拗にダイレクトメールとか送られていたみたいね。それも、最近から…。ナイチンゲールのアカウントはいくらでも作れるから対策も大変だし。でも、一番はグローブだね。雷さんはスマートフォンをいじる為に右手を脱いでいて、山さんは缶を開けて飲んでいたからね。あとは、女性3人が全員素手だったからね。結局のところ、ナイチンゲールの投稿時間の後に殺したんだろう。その後はずっとグローブを嵌めていた。彼のグローブはかなり先端部分の生地が薄くなっているからね。なぜなら、スマートフォンを弄るのには外さなきゃいけない。そこで、グローブをしてもスマートフォンを弄れてかつ、指先まであるのは風さんのグローブだ。それに、各選手ごとにカラーリングと作りを変えているからね。」
「確かに、言われてみれば簡単な話だったのかもしれない。はあ…肩が重い。そういえば、2人とも帰りはどうするんだ?今から、帰るのは大変じゃないか?」
「…そうですね。」
「明日は、日曜日だし今夜は泊まっていきなさい。」
「いいんですか?」
「ああ、娘の千里(ちさと)も志保ちゃんに会えて嬉しいと思うし…君は親御さんが心配するかい?」
「いえ、上京して一人暮らしですので。」
「そうか、とりあえず服を買ってからうちに行こう。…私は、また戻らねばならないから…。」
物証探偵 葵流星 @AoiRyusei
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