第8話集う狼の群れ
「……………ねえまだー?ぼっちゃーん、はーやーくーぅ。」
「………だぁぁ!うるさぁい!そんなに見つめられながら急かされたら、できるもんもできないでしょお!おとなしく待っててよぉ!」
進化の眠りから目覚めたぼっちゃんは、進化の眠りとは別に普通に寝ていたゴールドさんに急かされ、人間用の衣服を縫わされているところである。
あ、ちなみにもちろん洞穴を見えないように仕切って縫っている。一応ぼっちゃんも女の子だからね。
「なんか今すごく失礼なこと言われた気がする。」
「いいからいいから、口より手を動かそうよぼっちゃ~ん!」
「なぜそんなに偉そうなのさぁ!もうちょい待ってよぉ!!」
「も~、早くしないと、アタシがぼっちゃんの裸に欲情しておそ……。」
「超全速力で作らせていただきますおまちくださいませ!!!」
なんかやばそうな発言が聞こえてきた気がするけど、とりあえずあそこは二人でも大丈夫だろう。
その間、私とスズネさんはこの森の見回りを行っていた。あるものを探していたのだ。
そのあるものは、今日ゴールドさんが話したことであった。
今朝朝食を食べていた時だった。ゴールドさんは、ハッとした表情を浮かべ、その後唐突に叫んだのだ!
「あーーーー!!!忘れてた!!!」
いきなりの大声に全員驚く。ぼっちゃんなんて咳き込んでいたよ、まったく………。
「…………また何か大事なことを忘れていたんですか……?怒らないとは限りませんがとりあえず聞かせてください……。」
「それ絶対怒るやつじゃん……まあいいや、スズネちゃん達と出会ったきっかけのあの巨大ゴリラを見つける時、カウちゃんの魔法でアタシは森を高い所から見渡すことができたじゃん?」
巨大ゴリラがスズネさんとぼっちゃんを追っている時の地響きで、私がゴールドさんを
「その時さ、当たりそうをぐるっと見回したんだけど……一瞬だけどかなり遠くに煙が上がってるのが見えたと思うんだけど……。」
「え~、それって今までゴールドさんやカウちゃんがキャンプしてきた場所の煙がまだ消えて無いとかそういうんじゃないの?」
「んなわけ無いでしょ。私達のキャンプ地の跡は大抵煙消えてから出発だし、消し忘れだとしてもそんなに遠くのキャンプ跡地の煙が消えて無いのはいくらなんでもおかしいでしょー。」
「……………つまり………私達以外にも火を起こせる程の知恵を持つ何者かがそこにいるかもしれない………ということでしょうか?」
「うん、そゆこと~。」
「…………なんでそんな重要な情報忘れとんじゃい!!!」
とりあえず私はゴールドさんの頭にチョップをかます。もちろん狼のモフモフな腕のフワフワチョップだけどね。
「ぐは!ちょっと!結局怒ってるじゃーん!ひどいなぁ~。」
またお説教するのももう面倒くさいので、今日はとりあえずぼっちゃんは衣服製作に着手しゴールドさんはそれの付き人をすることに。
私とスズネさんでそのキャンプをしていた跡地、もしくは他の知恵を持つ生物を探すことにした。
そんなわけで、二人でキャンプ地からかなり離れた場所に来た。
ゴールドさんが言うには、この前巨大ゴリラと戦ったあの崖とは反対の方向に、それらしきものが見えたらしいので現在はその方向に進行中。
太陽が前の世界とおんなじ原理なら、こっちは西かな?
「ん……?あれは………。カウさん、あそこに見えるのって……!」
高台に少し登り見渡していた時、スズネさんは何かを発見し指差した。あれは……………!
「煙!?てことは……!」
「何かいます!行きましょう!」
すぐに高台から降り、私達はその煙の元まで近づいた。
そして発見したのだ。そこには、所々燃えている枝が中央に集められ、黒い煙をあげていた。間違いなく焚き火の跡!
「これは………確実に近くに何かいる!」
「ですね………!これは、一度二人を呼びに戻った方が………。」
焚き火の元をよく調べようと、スズネさんが焚き火に近づいた時だった。
木の上から何か白く鋭利なものがスズネさんに向かって飛んできた!
「スズネさん危ない!」
「!?」
間一髪で、それを避けるスズネさん。しかし、避けた先からさらに黒く丸い物体が落ちてきた!
さすがにあれはやばい!
全速力で駆け出した私は、ギリギリ強化爪のリーチを使ってその黒い物体を弾く。
黒い物体と共に、何かが飛んで行った。
あれは……………人!?
「チッ、しくった。」
黒い物体と共に飛ばされたその人間は、さらに黒いフードとマスクらしき物も身に付けている。
かなり高い所から頭を打ったにも関わらず、軽く頭をさすっているのみだ。
間違いなく強い。
「たく………おいラモ!!弱かろうと強かろうと、知らん敵は油断したらあかんゆーたやろ!!気ぃつけや!」
先ほど矢が飛んできた方向からは、なにやらエセ関西弁が聞こえてきた。
この口調は………。
「うるさい、油断なんかしてない。タイこそ少しは貢献したらどうだ?」
「あぁん!?」
ラモ……タイ……これは間違いないな。
どれ………『解析』!
個体名:ラモーン Lv6
種族名:ワーウルフ
状態:正常
能力値:HP-228MP-189攻-581魔攻-350防-121魔防-150速-600
所持スキル:魔力感知Lv2強化爪Lv3強化牙Lv2
魔法:
スキルpt残量:270pt
個体名:タイラー Lv11
種族名:ワーウルフ
状態:正常
能力値:HP-401MP-111攻-584魔攻-78防-380魔防-398速-600
所持スキル:敵影探知Lv7万能嗅覚Lv3属性解放【風】Lv8
強化爪Lv10強化牙Lv8威嚇Lv9インファイターLv3
魔法:
スキルpt残量:0pt
「はぁ……お前後で説教やからな。さて、第2ラウンドといこうや野良狼ちゃーん。」
「ちょっ……ちょっと待ってください!」
「あ!?なんや!お前ら会話できるんか!フォレストウルフにしては珍しい奴らやなぁ!」
スズネさんが彼らに話しかけてくれたことで、攻撃をしようとしていたのを止めてくれたみたいだ。
ホッ………一応声は聞こえるみたいだな……。見た目からなんとなくワーウルフだとは思っていたから良かった良かった。
「pack of wolves。この言葉に聞き覚えありませんか?」
スズネさんがそう聞くと、関西弁をしゃべるワーウルフが驚いた表情で言った。
「なんやて?pack of wolvesやと?なんでお前らがそれを………まさかお前ら、ギルメンか!?」
どうやら気づいてくれたようだ。スズネさんナイス判断です。
「ふぅ~。完成~。」
「いやぁ~、早かった。急かしといてなんだけどめちゃくちゃ早かったね。」
ぼっちゃんが手縫いし始めて一時間と少々ってところかな?ぼっちゃんは四人分の衣服を見事作り上げた。
しかし、異常な程に早かった……これが究極パワー、ZYOSHIRYOKUなのか……。
「まあ事前に『集中』っていうスキル取ったから、それでいつもより精度上げられたっていうだけだけどね。」
なんだ……ドーピングか。
「けど良かったの?わざわざ服縫うためにスキル取ったりして。」
「いやまあ、このスキル使えれば僕みたいな臆病でも戦闘時には落ち着いて行動できるようになるかな~?って思ってさ。」
「そう?ぼっちゃんの臆病は中々に治らないものだと思うけど。」
「う……うるさいよ。それよりもさ……早く着てみない?ていうか僕ずっと裸で寒かったから、早く服着たいっていうか……。」
「あ……あぁ!!ごめんごめん、そうだったね!着よう着よう!」
ずっと見ててそれが自然になってた、危ない危ない。
このままではアタシが幼女とずっと裸のまま会話していた変態にされてしまう。一刻も早くぼっちゃんには着替えてもらおう。
そうしてアタシ達はできたてホヤホヤの衣服を、人間体の身に包む。ああ………久しぶりの人間体……!
そして中々にオシャレな服……!ああ……女子心をくすぐられるわぁ~!
「うーん!良いねぇ!ぼっちゃんが作った服最高だよぉ!」
「エヘヘ!当たり前でしょ~!もっと褒めても良いんだよ?」
「お~良い子良い子~!」
ドヤ顔フンスする幼女、なんだこの可愛い生物は……!
思わず頭をナデナデしてしまった……!
「エヘヘ~………て、こ……子供扱いするな!僕は歴とした女子高生だぞ!?」
なんだコイツ可愛いなぁおい!
しばらくこの時間を楽しんでいたい………!
そして何か私のなかで目覚めそうになっていたその時、ぼっちゃんが『念話』にて私達の頭の中に語りかけてきた。
〈ゴールドさん、ぼっちゃん、私達拠点より西方向にすごいもの見つけたよ!急いで来て、てか来ないと少しまずいかも……!〉
拠点より西方向にすごいもの???なんだそりゃ……。
てか、なんか緊急事態っぽいのかな?なんだろうな……。アタシも念話覚えてれば良かったかなー?
念話ってそのスキル持ってるもの同士じゃないと会話できずに一方通行らしいのでそれが中々不便である。
けど、目当てのスキルかなり高ポイントだからそれ取るまではスキルpt使いたくないんだよねー。
仕方ない!
「ぼっちゃん今の聞いた?」
「うん、なんか少しトラブってるっぽいね。」
「このまんまじゃよく分かんないしとりあえず行こう。この体に慣れるっていうのも兼ねて!」
「オッケー、それじゃあレッツゴー!だよ!」
はてさて、魔王軍の方々が来るのは明後日だというのに……一体どんなトラブルが起こっているのやら。
えー、ただいま私はすごく、すご~く恐ろしい現場に立ち会わせています。
白毛の狼と金髪のワーウルフのにらみ合い………その間に挟まれる私とどでかいハンマーを背負う黒髪のワーウルフ。
え~と……どうしてこうなっている……??
事の始まりは、お互いがpack of wolvesのギルドメンバーだと気づいた時に自己紹介したときのことだった。
「ラモーンだけど、覚えてる?」
「もちろんもちろん!ラモさんだったかぁ!久しぶりー!」
「んで、ワイはタイラーなんやが……そういうお前らはメンバーの中の誰や?」
ん?スズネさんが若干威圧的というか……そんな雰囲気を醸し出した……?
とりあえず、私が答えることにした。
「ああ、私はカウワードです。そんで、こっちがスズネさんです。ワーウルフに進化したから、一応人間体にはなれるんですけど……ちょっと今服は製作中だからなので……まだ狼で生活してるんですよね。」
「おお~!カウちゃんか!生きとって良かったわぁ!そして…………いらんやつも着いてきとるな。」
「…………はぁ……相変わらずその失礼な物言い……ガキみたいな思考と態度は治っていないようですね……タイラー。」
うぇ……?ス……スズネさん……!?
「あぁ!?なんやと?たっく………異世界に来てまでお前と会うなんて、ほんまについてないわぁ~。まあカウちゃんがおるのがせめてもの救いやな。」
「あなたこそ、その雑頭でこの世界でまだ生きているとは……悪運だけは強いようですね。ラモーンさんがいなければ何もできていなかったのでは??」
「お、おーいお二人さ~ん……?」
ああ~……なーんか懐かしい気がするなぁ……この険悪な雰囲気……。
そうだった。この二人、ギルド内でも随一の不仲メンバーだった……。
超真面目、誰に対しても懇切丁寧。
自分一人を犠牲にすることが多いが、合理的で且つ冷静に行動するスズネさん。
即行動派、誰に対してもフランク。
一場面ごとのリーダーシップはあるが、感情的な行動が多く、仲間はとにかく死守派のタイラーさん。
正反対の二人はどうも馬が合わず、日々衝突しては二人の溝は深まっていくばかりである。
そしていつの間にか、ここまで険悪な仲になってしまっていた。
これを私一人、いや正確にはラモさんと二人で止めることは難しい。
ラモさんはこういう面倒ごとには全くもって関与しない。だから実質私一人で止めなければいけない。
ほらみろあいつ!
これを日常茶飯事だとでも言わんばかりにこの一瞬でどっか行きやがった!
久々の二人の喧嘩でも徹底して我関せずとは良い性格してやがるこの野郎……!
無理だ!このめちゃくちゃ喧嘩強い二人を私一人で止めるのは絶対無理!
どうしよ~これ~!
するとそこに、密かに呼んでいたあの人がようやく到着した!
「こらぁ~!なんかよくわからんけど、喧嘩はやめなっさーい!!」
と、叫びながら私達の頭上から飛び降りてきたその人は、睨み合う二人に拳骨を食らわせて登場した。
「うぐっ!」 「いでぇ!」
「喧嘩両☆成☆敗!ってね。」
「もー!速すぎるってゴールドさーん!」
後ろからぼっちゃんらしき声も聞こえてきた。
「お、ようやく来たか!待ちくたびれたよゴールドさんぼっちゃ…………。」
「む……?どうしたカウちゃん、僕の顔に何かついてるか?」
……………服作りのせいですぐに二人は洞穴に籠ってしまったので、私は顔を見ることなく出発したので今初めて二人の顔を見た。
なんか………すっげぇ美人じゃねえか!?
「いっやぁ~、まさかギルマスとベルっちもいたとは思わなかったわ!仲間が増えてほんま嬉しいわぁ~!」
外からは、タイさんとゴールドさんとぼっちゃんが楽しそうに話す声が聞こえる。
ゴールドさんの介入により、二人の喧嘩はひとまず抑えられた。
今私とスズネさんは、ぼっちゃんが服を作って持ってきてくれたため手頃な洞穴にて試着中であった。(試着というかまあ、そのまま着ることになると思うけど。)
ラモさん?再会して早々裏切ったあの野郎の行方など知らん!
しかし、この世界に来てから今初めて人間体になったので、久々に二本足で立ってスベスベの肌に風を受けるこの感覚………すごく懐かしい……。
狼の時は全身モフモフボディだったから、直接地肌に風を受ける感覚は感じ無かったからこれは涼しくて中々良いなー。
いやぁ~それにしても、人間体のスズネさんめっちゃイケメンだなぁ~……体も健康爽やか細マッチョだし、背も高いし。
うちの狼共スペック高くねえか!?
黒フードに黒いバンダナをマスクみたいに着けてるラモちゃんオシャレ過ぎるし!
タイさんなんて茶髪に合った鋭い目妙に良い体つき!グラサンも似合いそうなまさに極道。
そんな中に、中肉中背、イケメンとブサメンの間のフツメン、そしてオタク……陰キャ属性がプンプンする私ことカウワードという狼が一匹……やってけるのかこれ?
「お~い!着替え終わった~?」
「ええ、今終わりましたのですぐ行きます!では、行きましょうかカウさん。」
「うーむ、私はそんなに誇って出ていく顔してないだろうに。」
「そんなことありませんよ!すごくイケメンですから!さあ!」
スズネさんに言われると余計凹むというかなんと言うか……。
あんまり顔を見せたく無いけど行かなきゃならない……そんな葛藤を抱えウジウジしている私の手を引きスズネさんが進む。
洞穴の外に出ると、三人が待ち構えていた。
「「「おおおぉぉぉーーー。」」」
感嘆(?)の声を漏らす三人。
なんだか視線がこそばゆいぜ!
「いや……そんなじっと見ないでよ、大したもんじゃないし。」
「はっは!十分イケメンやでカウちゃん!もっと自信持たんかいな!」
「そうだよー!二人揃ってイケメンだよぉー!」
ふむ、ありがたい気遣いだが……スズネさんには間違いなく負けてるんだろうなぁ。
ぼっちゃんは………スズネさんをじっと見て動かない。
そんなぼっちゃんを見たスズネさんは、優しく微笑みかける。
白銀に輝くロングヘアーが良い味を出す爽やかイケメンのナチュラルスマイル、男の私でさえ惚れてしまいそうだ。
微笑みかけられたぼっちゃんは、頬を赤らめ後ろを向く。
何かがときめいた音がする………分かりやすい子だなー。
「さーて、とりあえずギルマス達の集団はこの四人だけでええんやな?せやったら、早速ワイらのアジトに案内したるわ。」
「アジト?そんな大きな拠点作れるなんて、タイちゃんすごい手際の良さだねー。すでにワーウルフなのもそうだけど、僕達よりよっぽどスキルとか道具が揃ってる気が……。」
「ん?いやいやー、もうワイらはこの世界来て三ヶ月やからなー。これくらいはできてないとなー!その感じ、ベルちゃん達はまだここ来てから日が浅いんとちゃうんか~?」
うお……ずばり当てられた。
てことはタイラーさんとラモさんとで転生のタイミングがずれてることで知ったか……もしくは……いや、まあ聞くのが早いか。
「そのアジトには、タイさんとラモさんだけしかいない感じ?」
「クックック……それは見てからのお楽しみやで……!さ、案内したるわ。着いてきいや。」
タイラーさんはニヤリと笑みを浮かべたままはぐらかした。
こういう時は大抵この人はなにか自慢したい時だから、期待して良いということなのだろう。
こうして、新しくタイラーさんとラモさん(勝手にどっか行ったけど……。)という頼もしいギルドメンバーと合流できた私達は、タイラーさん達が拠点としているアジトに行くことにした。
もしかしたら、これで一つの目標でもあった自分達の縄張りは解決したかも?
タイラーさんに着いていくこと数十分、普段は歩いたらすぐ魔物に会うんだけど、今回は無事だった。なんでだろ?
着いた先は私達のキャンプ地より結構遠い場所で、そこには天然の大木に穴を開け扉を付けた住居や、木材中心で作られた簡易的な住居も建設してあった。
しかも、狼用の住居、ワーウルフ用の住居それぞれが作られていて狼でいるときでも不自由の無いように工夫されていた。
作ったのはおそらく、リアルでも大工をしていたラモちゃんだろう。
タイさんも建設業に携わっているため、この二人がいるアジトならたしかにこれくらいはできてもおかしいことはない。
ただ、実際に造り上げてしまうのはやはり才能だろう。すごい……。
しかし、私達が一番驚いたのはそこでは無かった。
何に驚いたか、それは他のフォレストウルフが十数頭もの数がそのアジトで生活をしていた。
遠くから解析を使った結果から見ても、あのアジトの住居を使っているフォレストウルフには個体名が無い。
つまり、完全に野生のフォレストウルフなのだ。
「タイさんまさか、野生のフォレストウルフを仲間にできたんですか……!」
「ハッハ!この光景見てまずそっちの方触れるんかいな!!ま、さすがカウちゃんてとこやな、目の付け所がちゃうわ。せやで、ワイらも種族的にはフォレストウルフの派生やん?せやから、野生の狼に会ったらまず対話を試みたんや。したら、ふっつーに言葉が通じてのお~。話が通じるって分かるなら、仲間が多いことに越したことはない!せやから、ワイらとアジト作らんか?ってどんどん勧誘していったっちゅーわけや。」
「そしたらいつの間にか、ここまで規模が大きくなったんですね……。」
「さすがおしゃべりモンスター、初めて会う狼でもすぐ仲間にしちゃうんだね。僕には絶対真似できない。」
集団の中にいることすら苦手なぼっちゃんは、多くのフォレストウルフを前に少しタジタジ。
狼の集団を見たゴールドさんはタイさんにある質問をする。
「ていっても……こんな大所帯集めてなにする気なのさ。食糧事情とかきつくない?」
たしかに……私達ですら食糧は備蓄を加えても一日に取れるのは最大八匹分、少ない時は一食抜くくらいに足りない時もある。
仲間に入れたのなら、それは面倒を見てやるって言っているのにも等しいし、どうやって養ってるんだ?
「まーそこんとこ気になるわな。まあ詳しい話はアジトで座って話そうや。アジトのみんなにも、頼もしい仲間が増えたっちゅー報告しておきたいし。」
早く行こうと言わんばかりに歩を進めるタイさん。きっとまだ見せたいものがあるんだろう……そんな雰囲気を感じた。
疑問もあるけど、素直にこの場所をもっと見てみたい。
そんな気持ちが勝ち、私達は素直にタイさんに着いていき、狼達のアジトへ足を踏み入れることにしたのだった。
「ただいま。」
「お、ラモ、おかー。」
「おかえりなさーい。」
「おかえりなさいませー!」
「何か収穫あったかー?」
「…………仲間。」
「おお、また仲間の狼さんが増えたんですね!どんな方ですか??」
「転生者、みんな知ってるよ。」
「まじか!転生者!てことはギルメンか!」
「そう。」
「まだギルドメンバーの人が見つかったの!?やったー!」
「良いですね、嬉しいですねー!」
「オレ誰が来るか外行って見てくるぜ!」
「あ、わたしも行きますー!」
「私も~。」
「…………騒がしい奴らだ。」
日本一の狼の群れは、異世界でも群れて生き残るそうです @HinokiKonnbu0707
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