第2話 異世界転生?②

 ひとまず状況を整理しよう、今いるここは得体の知れない謎の空間、そして目の前には全裸の女性。極め付けは『転生しますか?』ときたもんだ。


「あーついに、俺の人生バグったのか」


「あ、申し遅れましたが私は女神アリス、この空間の管理をしている者です。付け加えると、あなたは至って正常ですよ。まあ死にかけていることを除けば、ですが」


「……」


「何故そこで黙るのですか?」


 いや冷静に考えてみてほしい。全裸の女性に『あなたは正常です』と言われて、良かったとはならないよね?ね?俺だけじゃないよね?いや女神なら全裸が平常運転?だめだ、よくわからん!


「あのー、ひとまず服を着ていただけないでしょうか? 非常に目のやり場に困るんですけど」


「服を着るもなにも……?!」


 自分の姿を見るや否や、真っ赤に染まる肌。慌てて両手で胸を隠し蹲り、あまりの羞恥に目には涙まで浮かべてしまっている。


「女神さん……?」


 いや、その格好不味いですよ女神さん。何がまずいって、隠し切れていない2つの双丘が腕で圧迫されて、もう今にも溢れそう。……これ全裸よりエロくない?刺激が強すぎるっ。

 見るに耐えかね、スーツのジャケットを脱ごうとボタンに手をかけた時、パチンっと音がしたので、振り返るとそこには誰もいなかった。



✳︎ ✳︎ ✳︎



「ふーっ、ふーっ、なんってことなの?! 私とした事が漂流者と直接会うことなんて滅多にないから……」


 ぶつくさと愚痴をこぼしながら、衣類を具現化していく女神。着衣を行いながら思考をフル回転させる、主に記憶消去の方法について。


「あらー、どうしたの? そんなに真っ赤になって」


 偶然通りかかった先輩女神ステラに声をかけられた。


「いえっ、何にもないわっ、そう何にもねっ」


「そう? ならいいのだけれど。それで彼の転生はうまくいったのかしら?」


 あまりの恥辱に我を忘れていたアリスは本来の目的を思い出し、どう返答しようかと逡巡していると。


「どうやらまだみたいね、さっきも言ったけど……」


「分かってるわよっ」


 先程までの苦労と、漂流者に会って起きた出来事とが相まって、半ば吐き捨てるように言葉を残し立ち去るアリス。


「あらあら、どうしたものかしらねぇ。やっぱり様子を見とくべきかしら」



✳︎ ✳︎ ✳︎



 女神アリスが消えてから数分が経っただろうか。また音もなくその女神は俺の前に現れたのだった。


「えーと、言いたいことは山ほどあるけど、これは絶対遵守して。さ、っ、き、のは全て忘れなさいっ」


 やはりどうやら女神といえど、全裸は平常運転ではないらしい。とそんなどうでもいいことを考えていると。


「へ、ん、じは?」


 もはや、女神なのか鬼なのか分からなくなるような形相で詰め寄られ、返事をするのだった。


「……ふぅ、それで話を戻すけど、あなた転生しますか?」


「さっきも思ったんですけど、転生って何ですか? それに死にかけてるって俺はどうなってるんですか?」


 どうやら俺は、彼女の発言から推測するに、まだ死んではいないようだ。それを聞いて少し安堵した。


「しかし、転生か……。そこはかとなく嫌な予感がする」


 ここから少しずつではあるが、自分が置かれた状況を理解していくことになる。

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転生しますか?いいえ、しません まろん @_marron

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