月の光

雨世界

1 真っ暗な夜だね。

 月の光


 登場人物


 高山月 ボーイッシュな性格をした綺麗な少女


 松井ゆり 清楚な女子高生 お嬢様(あるいはお姫様) 嘘つき


 真下初  背の高い男子高校生 優しい人 正直者

 

 プロローグ


 ……お願い。消えないで。


 君の嘘と本当のこと


 世界は、たぶん、嘘(あるいは偽物)で作られている。でも、だからこそ、本当のこと、(あるいは真実)はとても大切なことなんだと思う。


 世界は、私に嘘をつく。

 周りのみんなも、私に嘘をつく。

 だから、……私も、誰かにいつかきっと、嘘をつく。


 本編


 真っ暗な夜だね。


 月がゆりに出会ったのは、学校帰りの珍しく人の少ない、夜の時間の電車の中だった。

 その日は、夏の日の夜で、夜空には星は一つも輝いてなかったけど、淡い月の光が、夜の闇をぼんやりと明るく照らし出していた。


 その人は、……ゆりは、電車に一人で乗っていた。


 ゆりはとても綺麗な人だった。(初めてみたとき、ちょっとびっくりするくらい、あるいは、電車に乗っているのが不自然と感じるくらい、綺麗な人だった)


 がたんごとん、と言う音がして電車が揺れた。


 月の乗っている電車は、今、月の住んでいる『ひだまりヶ丘』を目指して夜の中を走っている。

 時間はそんなにはかからない。

 もう、あと五分もしないうちに、『ひだまりヶ丘の駅』に、この電車は到着するだろう。

 月はいつも、この電車に乗って、実家の最寄駅であるひだまりヶ丘から、自分の通っている高校の最寄駅である『夕焼け公園前駅』まで、毎日、早朝の時間に通学して、日が暮れる、夜の遅い時間に下校をしていた。(朝には陸上部の部活。夜には受験に向けた塾の勉強があるからだった)


 なかなか忙しい毎日だ。でも、そんな忙しさを月は嫌いだとは思っていなかった。(忙しいと、疲れていると、余計なことを、あんまり考えなくて済むからだ)


 今日は、でもいつも以上に少し時間が遅くなってしまった。(大好きな古典と、苦手な数学の勉強に、夢中になってしまったのだ)


 月はそのために、いつもより少し遅い時間の電車に乗った。

 その人の少ない電車の中で、高山月は一人ぼっちの松井ゆりを『見つけた』のだった。(あるいは、それは私たちの、いつかはそうなるはずの運命だったのかもしれない。ゆりと出会ってから、ゆりと友達になって、ゆりの、ずっと隠れていた、まるで太陽のような明るい笑顔を見つけたときから、月はそんなことを思うようになった)

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