信じられないものを見てしまった。私は、きちんと私を大切にしてくれる人たちとだけ付き合っていきたい。人間関係を整理します。
*
彼女のツイートを見た私の足元から悪寒が湧き上がった。
やばいかな……とは思ったのだ。だから告知も何もしなかった。実話怪談のアンソロジーに私の書いた一篇が収録されることを。
知り合いから紹介されて引き受けた仕事だったけど、怖い話は今まで書いたことがなくて、苦戦していたのだ。締め切りはあっという間に迫り……苦し紛れに、友だちとの飲み会のことを脚色し、本が投函された後半部分は創作して付け足したものを書いたら、OKが出た。
もちろん、彼女が見た「信じられないもの」が、私の書いた怪談のこととは限らない。いろんな解釈ができる表現だ。それに、本屋に無数に並んでいる怪談本の中から、この一冊を彼女が手に取る確率はとても低い。でもゼロじゃない。事実とはいろいろ変えているけれど、彼女が読めば自分のことだとわかるだろう。そして、ゲームのノベライズに関する私の想像がたまたま当たっていたら?
恐怖は消えない。泡のように増殖して私の身体を満たしていく。
だって友だちは本当に行方知れずなのだ。
家族から捜索願が出されて、私も事情聴取された。最後に会った私があれこれ疑われるのは仕方ないだろう。
警察には「心当たりはない」と言うしかなかった。友だちの失踪が、彼女のツイートと因果があるのかはわからない。私の知らない悩みを抱えていたのかもしれないし……そもそも、すべてが私の妄想という可能性がいちばん高い。そうだ。妄想だ。友だちが行方不明になった。事実はそれだけだ。無関係なことをむやみに結びつけてしまうのは、気持ちが追い詰められたときに陥りがちな状態である。
大丈夫だ。何も起こらない。私の妄想だ。友だちも言っていたじゃないか。他人のツイートを気にしすぎだって。ちょっと気持ちが病んだらああいうことを言ってみたくなるものだ。私が整理されるなんて、まさか、そんなことは、
人間関係を整理します 秋永真琴 @makoto_akinaga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます