月におさいふ

和泉眞弓

月におさいふ

 まじないの類は小学中学のあたりで卒業しましたが、スピリチュアルなことがらには潜在的な興味があったのかもしれません。

 SNSで見かけたまじないを、気紛れに試したのです。


「満月に向かって、からの財布を振ると、まとまったお金が入る」

というもの。


 その日はなんということもないありふれた満月の日でしたし、わたしもこんなんでお金が入るなら苦労はないよなあと思いながら、ものは試しと、一応形だけ、持っている長財布を月に向かって振り振りしたんです。



 結果を言うと、翌月、わたしの手元に二十万円がやってきました。


 故郷の祖母からでした。


 祖母は元気な人でしたがその頃には一年に一〜二度は入院をするようになり、弱ってきていたようです。今後、結婚式があったとしても出てあげられないからと祖母は考えたらしく、未婚の孫たち全員に御祝儀として生前贈与をしたのです。


 こんな形で叶っても、嬉しくもなんともありません。


 わたしは、それ以来、まじないの類を一切しないことにしています。


 ちなみに祖母は、入退院しながらもその後も結構もちまして、ぼけもせず、九十六歳の天命を完うしました。


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月におさいふ 和泉眞弓 @izumimayumi

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