わたし達は、小鳥

 路面から伝わる振動が心地いい。クロモリ(クロムモリブデン鋼)製のフレームにしてよかった。


 納車されたばかりのロードバイクはすぐにわたしを乗り手として受け入れてくれたようで、十分程乗っていると自分の身体の一部のように動かせるようになった。


 時々ふらついたり発進に失敗したりするけれど、すぐに慣れるだろう。


 

 


 わたしは、小鳥。羽ばたく小鳥。


 飛び方を覚えたばかりの、小鳥。



 

 自転車によく乗るようになったのは、いつからだろう。


 銀色の通学用自転車はわたしの相棒。勿論、これからも相棒。ただ、相棒が増えるだけ。


 銀色の相棒に乗って、わたしは色々な場所に行った。

 

 嫌なことがあった。周りの人から見れば、わたしはただ現実から逃げていたように見えただろう。


 でも、違う。わたしは、羽ばたいていた。わたしは、飛んでいた。


 羽ばたくたびに強くなれた。飛ぶたびに優しくなった。


 これからも、もっともっと羽ばたこう。




 

 





 愛しい人よ。君は、逃げたいと言った。君は飛び降りたいと言った。


 ならば、羽ばたかないか。


 このコンクリートとアスファルトでできた巣を飛び出そう。



 世界の美しいもの、醜いもの、全部見よう。


 時には、大切なものを失い。時には、大切なことを学ぶ。

 

 

 旅を続ける中でわたし達はどんなことを思うだろう。


 わたし達は、旅を一生続けるのだろうか。それとも、この街にまた戻ってくるのだろうか。


 

 今はまだわからない。でも、あなたと一緒ならどんなに難しいことも成し遂げられる気がする。


 だから行かないで欲しい。わたしと旅をしよう、どこまでも、いつまでも。





 わたし達は、小鳥。世界を旅する小鳥。


 

 

 


 



                           

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わたしは、小鳥 〜自転車にのる者たちの物語〜 オレンジのアライグマ【活動制限中】 @cai

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