描写が丁寧でサラリとした味わい。題材も共感しやすく、入り込みやすい。
最後に主人公のとった行動の理由づけがやや強引、というか曖昧か。日常の中で何気なく起こった衝動と読んでもいいし、一人暮らしという、親の束縛から離れた現在の状況がそうさせたとも捉えられる。だが、かなり衝撃的というか、物語的な感が強いラストなので、人によっては唐突にとられるかもしれない。かといって序盤の清潔な語りに伏線めいたものを付け足すのは作品自体の雰囲気を損なう恐れがある。ここは家電メーカーの安産性への配慮を慮って、成長した指が網目に遮られるパターンでも、充分余情のある作品になるのではないかと思う。
瞬きが扇風機の羽根の回る瞬間を切り取る、という表現が秀逸。