第3話 おっぱいとおにぎり
「えっと…慶應?」
僕は焦りながら彼女に聞いかけた
「そうだ!今は慶應3年だ!そなたは何と勘違いしているのだ??」
どうしよう…慶應?え?どゆこと?なんだそれ?!そんな年号あるのか!
「そなた大丈夫か?凄い汗の量だか…」
彼女に言われ僕は額に手を当てる。
モノスゴイ量の汗がでていることが分かった。
「う、うん。大丈夫。それより自己紹介がまだだったね。僕の名前は…あれ?えっと…なんだっけ…」
おかしい。僕のいた時代の風景や事柄はハッキリ覚えているのに名前がでてこない。その部分だけぽっかり抜けて穴が空いたしまっているみたいだ。
「なんだ?そなた名も分からないのか?変わった奴だな、そなたは。」
彼女はそんなことを言っているが顔は嬉しそうに笑っている。
「ワシの名は幸。性は山内。」
「そうか、幸っていうんだ。いい名前だね。よろしくね。」
僕はそう言い右手を差し出した。
彼女は何の迷いもなく僕の右手を握って
「ああ!よろしく頼む!それよりそなたのことは何と呼べばいい?名が無いのでは不便だろう。」
それもそうだ。僕は今後この世界で生きていくかもしれないんだ。そうなっては名前がないと不便なのは確かだ。
とは言ってもだ。
「うーん…、急に言われてもでてこないな。どうして名前だけ覚えてないんだろう…」
僕は頭をかきながら悩んでいた。
すると幸は僕に急に話しかけてきた。
「ではワシが名前をつけてやろう!どうじゃ!悪くないだろう?」
目をキラキラさせながら僕に聞いてくる。
近い近い…そんなに近付かれるとその豊満なお胸が…あ、待て!我が息子!覚醒の時はまだ早い!
「そうだね。それじゃ幸に僕の名前をつけてもらっていいかな?」
僕はどうにかして自我と息子を宥めながら幸に頼んだ。
「よし!ではそなたに名を授けよう!実はもう既に名は考えているのだ!」
彼女は自信満々に僕に言ってきた。
「変な名前だけは頼むよ。今後使っていくんだから。」
「当たり前だ!まったく…そなたはワシを何だと思っているのだ…」
幸は少しふてくされながら僕に言った。
「では、今ここに命名する!そなたの名は本日をもって内記!性を日向とする!」
内記?名字はともかく名前は珍しい名前だった。まぁ幸が一生懸命に考えてくれた名前だ。
「日向内記…うん!いい名前だね!ありがとう!幸!」
「うむ!そうだ!ワシをもっと褒めろ!なんなら飯を貢いでもいいんだぞ!」
幸はまた腕を組みドヤ顔でエッヘンとしている。
「そういえば幸っていくつなの?見た感じ僕と同い年っぽいけど…あ、僕は16歳ね。」
さらっと年を幸に言ったがやっぱり覚えていないのは名前だけらしい。更に言うと自分の両親の名前だって覚えている。モチロン友達の名前も。飼っている犬の名前も。
なのにやはり自分の名前だけ…
「16か。ならワシと同じだな。ワシも16だ。」
僕は頭に浮かぶ疑問を抱きながらもやはり今現状時分は確実に違う世界にいると確信した。いや、違う世界というよりは昔の世界の方が正しいのかも。
「その、幸のご両親とかは?僕がこんなとこで寝ちゃってて迷惑になったりしない?」
「それは平気だ。ワシはここで1人で暮らしている。そなた1人来ても広いくらいだ。」
「そうなんだ、スゴいね。僕と同い年で親と離れて暮らすなんて。僕には考えられないよ。」
「しかたがない。何せワシの親はとっくに死んでいるからな。」
その時一瞬だけ幸は目を細くしどこか遠くを見ているみたいだった。
「あ、その、ごめんね…。」
「気にするな。ワシとて1人が嫌いなわけではない。」
幸は誤魔化すように僕に笑ってみせた。しばらくの間2人の間には沈黙が走った。
なんというか…気まずい。
すると幸は急に立ち上がった。
「よし!飯にしよう!腹が減っては戦は出来ぬというしな!そなたも減っているであろう?」
「戦って…でも確かにお腹は空いたな…」
僕は今になって自分の腹が空腹であることに気づいた。
「では待っておけ!今作ってきてやるからな!」
幸は僕にそう言い放ち部屋の奥に走っていった。
僕も立ち上がろうとした途端、急な目眩がきた。
「立ち眩みかな…どれだけ寝てたんだよ、僕…。」
少しすると目眩も治まり僕は幸が走っていった方とは逆側にある障子を開けた。
ーミーンミンミンミンミンー
セミの声が耳に当たってくる。これは今も昔も変わらないんだな。
僕はそんなことを思いながら胡座をついた。
目の前にあるのは立派な池。中には魚はいないようだが、回りの草木には虫などの生き物がたくさんいそうだ。
「幸はこんな大きな家を1人でくらしいているのか…」
ご両親がいないとはいえ、こんな大きな家は3人で住むにしても大きすぎる。
(もしかしてお金持ちの家なのかな?)
そんな疑問もでてきたが今はそれ所ではない。
「うん。一旦整理しよう。」
僕は目を閉じ、今朝何が起きたのかを考え始めた。
「僕は今日の朝いつも通り学校に向かっていた。そして気づいた時僕は倒れていた。正直倒れていた時の記憶はあいまいだが、痛かったのは覚えている…そして目が覚めたとき僕はこの世界…時代の方が正しいのかな?にいたと…」
ここは僕のいた世界とは別の世界なのか。
それとま過去の時代なのか。僕にはまだ検討がつかない。
まぁ過去なら幸に聞けばいいだろう。
今の将軍は徳川なの?とか聖徳太子って本当に10人の話を聞けるの?とかね。
そんなことを考えていると後ろから声がした。
「何をブツブツと話している。頭でも打ったのか?」
「いや、ちょっと考え事をしていただけだよ。」
「そなたは格好もそうだが、全てが変わっているな。」
そう言い幸は笑いながら僕の隣に正座した。
「さ、食べるがよい。簡単なものではあるがにぎりだ。沢庵と梅干しもあるぞ。」
彼女の正座した足の上にはお皿の上にはおにぎりが置いてあった。
なんでだろう…おにぎりがこんなに美味しそうに見えるのは…
「うん!ありがとね、それじゃいただきます!」
僕は幸からおにぎりを1つ貰いそのまま口に運んだ。
(ん!何これ!今まで食べてきたおにぎりとは格別だ!何が違うんだ!米なのか?しょっぱくないから恐らく塩はつかってないだろう…するもやっぱり米なのか?)
僕はそんなことを考えながらもあっという間に1つ完食してしまった。
「そんなに腹が減っていたのか、待っとれ、今茶を持ってくる。」
幸は立ち上がりまた奥に歩いて行った。
「ごめん。」
僕はそれだけ伝えると既にとっていた2つ目のおにぎりを今度は沢庵とと一緒に食べていた。
(やっぱりだ。何が違うんだ?普段スーパーで買う沢庵とは味が全然違う。そしてこのおにぎりとの相性。これを神と表さなければなんと言えばいいのか…)
僕はそんなことを考えながら2個、3個と食べていき気づいた時にはおにぎりは無くなっていた。
「ほれ、茶だぞ。冷たいのでいいな?…て、もう無くなっているのか、まったく…ワシも1つくらい食べようと思っていたのに、」
幸は笑いながら僕に言ってきた。
「ご、ごめん!あまりにも美味しくて…」
「気にするな。また作ればいい。なんならまだ食べるか?ほしいのなら作ってくるぞ?」
「それじゃ…後3つくらい…」
僕は恥ずかしがりながら幸にお願いした。
「分かった。では待っとれ。」
幸はまた奥の方に行ってしまった。でもどこか嬉しそうな雰囲気がした。そして彼女の笑顔はとても輝いていた。
「はぁ…」
僕はため息をついた。
といっても不幸のため息ではない。
「この世界にいればあのおにぎりを永遠に食べれるのか…そしてあの幸の豊満な胸も…」
僕だって男だ。幸とは普通に話しているけれど彼女が近づいてくるといい香りがしてドキッとしてしまう。
「とはいってもまずはこの先どうするかだよな…」
僕の今1番に直面している問題。実際、余裕そうな態度をとっているが内心焦ってはいる。逆にこんな状況で焦らない方がおかしい。
ん?ではなんでそんなに落ち着いているかって?
それは気まっている!幸の大きなおっ…ゴホン!作ってくれたおにぎりのおかげだ。
うん。うん。うん。
「はぁ…」
僕はさっきと同じようにため息をつく。
あぁ、幸せが逃げていく…
「待たせたな!さぁ!食べるがよい!」
幸が戻ってくると手には見ただけでも10個は乗っているおにぎりがあった。
「えっと…幸さん?流石に多いのでは?」
僕は少しビクビクしながら質問した。
「大丈夫だ。こんくらい食べれる。それにこれもたべるんだろ?ワシの胸も。」
あ、もしかして、声漏れてましたか?
幸の顔は笑っているが目が笑っていない。
怖い。
結局無理矢理全部食べさせられた僕はこの先をどう考えるか所ではなかった。
僕は白虎隊でハーレムを作ることに決めました。 らま @rama_yukina
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