第九幕 星と夜の世界へ
目覚めるとそこは自分の部屋だった。
昨日は父を説得して説得途中に限界がきてしまい眠ってしまった。
父が自分を部屋まで運んだのだろう。
すると扉を叩く音が聞こえて。
「ネモ。」
とアニマの声が聞こえた。
「いいよ。」
と言うと扉が開いた。
そこにはアニマとその後ろに父が立っていた。
「おはよう。」
「おはようございます。ネモ」
「親父。」
「彼女は朝食は済ませてある。ネモ。外に出ろ。」
そう言われて外に出ると家の目の前に鉄馬が置いてあった。
しかしそれは父のものではなかった。
「これは?」
と父に聞いた。
「これはヴァイスマンが使っていた鉄馬だ。これを使って彼女を教会まで送り届けるんだ。」
「なら親父。」
「これだけは守れ、必ず彼女を教会まで送り届けろ。」
「分かったよ。」
鉄馬の側面には色々なものが置いてあった。
「一応、必要最低限のものは用意してある。後燃料は教会のある町までたどり着けるほど残ってはなかった。霧の村で買い足すといい。昨日倒した悪魔の精霊結晶が入っている。それを売って燃料に交換してもらえ。」
そして父は自分に歩み寄ってなにかを渡した。
それは皮でできた腰巻のようなものでものを入れるところがあり、その中にナイフがあった。
それは話に聞いた渡り狼の装備と同じものだった。
「それとこれもだ。」
と親父が次に見せたのは長さが長い銃だった。
引き金の下に部分にもう一つ金属の輪のようなものがあった。
そして肩に下げるための紐が銃の先と後ろに取り付けられていた。
「こいつの名前は霧狼だ。こう使う。」
父はそういうと霧狼を手に取って、玉を一つ込めたそして森の方に狙いを定めて、そして引き金を引いた。
けたたましい音が響き渡り、暗い闇の中を一瞬だけ光が通り過ぎて行った。
父は森の入り口付近に入ると何かを手に持って戻ってきた。
それは血を流した兔だった。
父は自分に霧狼と弾丸を4つ渡した。
自分は腰巻のものを入れるところに弾丸を入れて、霧狼を肩にかけた。
「アニマにはこれを渡しておく。」
そういうとアニマに森で悪魔を倒した時に使った精霊銃を手渡した。
「これは?」
「これは夜梟だ。街道を通るから使う機会はないかもしれないが護身用として持っているといい。」
「なぜ私なのですか?」
「それは精霊銃は精霊を通して記憶を弾丸して使うからだ。無論ネモは精霊が使えないからこれを使うことができない。」
「そうなのですね。」
アニマは精霊銃を両手で握りしめた。
「それとこれを使うといい。」
と親父はアニマに小さな一本の長い紐で繋がった肩掛け用のかばんを渡した。
「使わない時はそこに精霊銃をしまうといい。」
「ありがとうございます。」
そう言ってアニマは精霊銃をかばんの中に入れて肩にかけた。
「最後にネモお前にこれを渡しておく。」
そういって父は折りたたまれた服のようなものを渡された。
それを広げてみると深い茶色の外套だった。
「これは外套?」
「ああ、それはヴァイスマンが昔使っていたものだ。お前の丈に合うようにしておいた。着てみろ。」
そう言われて外套を羽織ると自分に丁度良く合っていた。
「これから家を出て街道に合流するまで精霊灯は置かれていない。だから合流するまで鉄馬の精霊灯で身を守るんだ。」
「分かりました。」
とアニマは自分の精霊を出した。
ただアニマの精霊は先生とも父とも違う黄色い精霊だった。
それには父も少しだけ驚いたらしい。
「見たことない精霊だな。」
と言った。
「ええ、周りの人にも珍しいと言われます。」
彼女の精霊は鉄馬の精霊灯の中に入り、精霊灯の灯りが点いた。
灯りは鉄馬の前辺りを照らした。
そして彼女の元に精霊が戻り彼女の体に触れた同時に消えてしまった。
最後に先生の部屋に戻った。
部屋には誰もいない。
「先生行ってくるよ。」
そう言って部屋を後にした。
鉄馬に跨り、鉄馬の舵を操作した。
すると鉄馬が唸り始めた。
アニマが自分の後ろに跨った。
「ヴィルヘルムさん。今までお世話になりました。」
「ああ。アニマも気を付けて行ってくるんだ。」
「親父・・・。」
「お前はやることをやれ。」
「分かってるよ!」
とすぐに視線を前に向けた。
「じゃあな親父。」
とそう呟くと鉄馬を加速するように操作した。
鉄馬は快音を上げながら加速していき、家の入口の門をくぐった。
しばらく森の中を進んでいた。
普通の森と違うのは地面が簡単ではあるが整備されており、特に問題なく進めている。
森の木々が空を塞いでいた頼りになるのは鉄馬の前を照らしている。精霊灯だけだった。
そして目の前に出口のようなものを見つけてそこに向かって進んでいった。
森を出るとそこは開けた場所だった。
「あれが街道だな。」
と精霊灯が並んでいる道を見つけて、入った。
「ネモ見てください!」
と言われ少し顔を上に向けるとそこは満点の星が輝いていた。
自分が森に中に囲まれた所から見る星空とは違い。
光の欠片が漫勉なく散りばめられた空が無限に広がっているように感じた。
そして遥か向こうには空より少しだけ低いところにひと際黄色く光を放っている星がった。
あれは月だった。
場所ははるか遠くにあっても自分の存在をこのドゥンケルナハトに示しているように光輝いていた。
空を照らすは満点の星と月の光。
そして少女と人形の少年の道を照らしているのは鉄馬の精霊灯、そして街道を照らす精霊灯の光だった。
第九幕 星と夜の世界へ 完
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