驚異的な第六感

春嵐

磁覚

 ゲームの画面を、閉じた。


「さあ、仕事だ」


 右も左もない。サイバー空間にあるのは、どこまでも果てない、一と零。


『合流した。こちら八課。今から情報の洗い出しを行う』


「今日の目的は」


『どこかで行われている魔術的儀式を食い止めること。どうやらダムのインフラ設備を破壊するって話だ』


「なんだそれ」


『自然に反するものは壊していいんだってさ』


 ばかみたいな理由で、ばかにならない被害を生む。これだから難しい。


『どうも』


 もう一人合流してきた。


「おまえは?」



『焼き畑です。儀式の出どころが分かったらぼくが責任をもって燃え上がらせます』


 焼き畑。


「この前起こった無差別システム攻撃のやつか」


『ええ。それがもとで名前が焼き畑になりました』


『よろしく、焼き畑』


「よろしく。で、俺の仕事は」


『ある程度絞り込めたら情報送るので、それを見て本物を探し出してください』


「アナログじゃねえか」


『期待してますよ。あなたの方向感覚』


「はあ」


 ラップトップを閉じた。


「アナログじゃねえか」


 もういちど、呟いた。せっかくサイバー関連の位置についたのに、結局のところ自分の方向感覚だけが求められている。


「もっとこう、なんか、サイバー空間にダイブするみたいな、そういうのはないのかな」


『ないな。それは俺の仕事だ』


 閉じたラップトップから声。


『お前はお前の慧眼を活かせ』


「慧眼か」


 生まれつき、方向感覚が鋭かった。右と左だけではない。東西南北、果ては資料の真偽まで。すべての方向を見定めることができた。公安の医者は磁角がどうこうと言っていたが、よく分からない。


 ただひとつ、電子空間に存在するものだけは、真偽が分からなかった。電子空間に右や左は存在しないらしい。だいたいの休日はゲームをして過ごしている。


『とりあえず3つ送った。見てくれ』


『焼き方も考えたいので、こちらにも転送お願いします』


『了解。そっちにも3つ転送する』


 資料。印刷されて出てくる。こうやって、電子空間にあるものをアナログに変換することで、資料の真偽を見抜くことができる。


「さて。さっさと仕事して、ゲームの続きやるか」

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驚異的な第六感 春嵐 @aiot3110

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