出会い
物音に身構えていると、黒い影がヴェルの胸に勢いよく飛んできた。あまりのことに私は全く動かなかった。ヴェルは驚きながらもその黒い影を胸で抱きとめた。黒い影の正体は猫のようだった。
しかし普通の猫ではない。尻尾は3つあり、毛並みは綺麗なグレーに染まっていた。顔を見ると右目のところが黒く、星形のようになっていた。よく見るとその瞳は薄い青に染まっていた。
「うわっ。なんだこれは。」ヴェルは慌てながらもそれをしっかりと掴んで言った。
「猫みたいだけど、ちょっと変わってるわよね、、、。」
「うん。尻尾が多いし、星柄があるし、なんなんだこいつは。」二人で顔を見合わせる。
ゴソゴソゴソ。猫と同じ方向からまた物音がする。今度はさっきよりも音は大きく、草も揺れる。私達は身を寄せてそちらを凝視した。
「おーい。ワルドー。どこに行ったのー。」少年の声が聞こえる。声がどんどん近づいてくる。
「ワルドー。」声の主は私達の前にその姿を表した。白いローブを見に纏ったそれと目が合う。少年は驚き、そして物珍しそうにこちらを見た。
「お姉さん達は誰?。」不思議そうに尋ねる。フードを降ろすとオレンジ色の髪と尖った耳が見えた。さっきのケンタウロスのように彫りが深い顔だった。それでも顔は幼く、私達よりも若く見える。小学校低学年くらいだろうか。
「あ、ワルド!ここにいたんだね。こっちにおいで。」少年がしゃがんで手を広げる。猫はヴェル元を離れ、少年の胸に飛びついた。ワルドと呼ばれるそれは少年の胸の中で身体を丸める。少年が背中を撫でるとミャアと声を上げ、肩に飛び乗った。
「お兄さんがワルドを捕まえてくれたんだね。ありがとう。」そう言う少年は笑顔でこちらに近づいてきた。
「それは君のペットかい?。」ヴェルが問いかけた。
「ううん。ペットじゃなくて友達さ。」ワルドは返事をするかのようにミャーと鳴いた。
「二人は何をしているの。もうすぐ日が暮れる。夜の森はとても危険なんだ。早くお家に帰ったほうがいいよ。」
「そうしたいのは山々なんだけどね。帰りたくても帰れないんだ。」ヴェルは気まずそうに言う。その声に賛同するように頷いた。
「それは大変だ。迷子?それとも家出?よかったら僕の家にくる?。」
「え、いいの?そうしてくれると僕達とても助かるんだけど。」嬉しそうに声を上げる。
「いいよ。ヴェルを捕まえてくれたお礼。僕の家はこっちさ。ついて来て。」そう言うと少年は肩に乗る猫を撫でながら森の奥を指差した。私達は互いを見て頷き、彼の後をついて行くことにした。
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