今後について

 あれから私達は今の状況を話し合った。しかし結局わかったのは、教室で光に包まれ、気づいたらこの森にいたということだけだった。彼は私が急に光に包まれるのを見たと言った。そして光に包まれる私をを見て咄嗟に手を伸ばしたと。

「そう。私を掴まなければあなたはこんなところにこなくて済んだのにね。」私は皮肉そうに言った。それを聞く彼の顔が悲しそうに見えた。

「そんなことないよ。僕はSF小説とか読むしこういう世界に憧れてたんだ。それに一人より二人の方がいいだろう。」彼は私に向かってそう笑った。

「別にあんたなんかいなくても大丈夫だわ。」

 

 「それよりも続きを話そう。あとわかることは森の先には白い城壁があり、門番がいるってことくらいか。」

「それに加えて変な生き物がいるってことくらいよね。」整理もなにもよくわからないじゃない。どうすればいいのよ。

「ね、ねぇ。」私は控えめに声を上げる。

「あ、あんた名前なんていうのよ。」名前の辺りから声が消えていく。

「ごめんロサさん。もう一度お願いできる。」

「あんたの名前はって書いてるの。」さっきより大きな声で言った。顔が熱を帯びる。それを見た彼は何が可笑しいのか、笑いだした。

「笑ってないでさっさと教えなさいよ。」

「あれだけ話かけてたのに名前覚えてくれてなかったんだね。」そう言い彼は顔を伏せた。

「!ちょ、泣かないでよ。人に興味がないから名前覚えるの苦手なのよ。」必死にそう言った。

「じゃあ、教えてあげるよ。僕の名前はヴェレット。ヴェレット・バーシップだ。ヴェルって呼んでね。改めてよろしくね。」彼は右手を差し出した。

「よろしくねヴェル。」私はその右手を控えめに掴んだ。彼がぎゅっと握りしめる。


 「それにしても一体ここは何なんだ。どうしたら帰れるのだろうか。」

「なんの手掛かりもないし、見たことのないものばかりだし、ここは何なのかしら。」

「この状況を納得させる唯一の方法は、、、。」

「方法は?。」

「やっぱり異世界に来たってことなんだろうか。」

「異世界。確かにそうね。って何言ってるのよ。そんなことあるわけないじゃない。御伽話じゃあるまいし。」ロサは最初こそ勢いがあったものの、段々と口籠ってしまった。

「でもそれが一番納得できないかな。ケンタウロスも変なウサギも、よくわからない甲冑も。作り話みたいだけど。」

「、、、。確かに。認めたくないけどそれが一番納得できるわよね。」少し複雑そうな顔をして言う。

「だよね。とりあえず僕らは理由はわからないが、謎の光に包まれて異世界に来てしまった。それでオッケーかな。」

「うん。」ロサの視点が定まった。

「とにかく帰る方法を考えましょうよ。」

「そうだね。ただあの城壁に近づくのは危険な気がするんだ。」

「それは私も思うわ。」

「小説だとここでお助けキャラが出てきたりするけど、現実はそう上手くいかないよね。」

「当たり前じゃない。あれは作り話よ。」そう諦めかけたとき、

ガサガサガサ。草陰が揺れる。私達は身を寄せて身構えた。ドーン、ドサッ。黒い影が飛び出し、彼の胸に勢いよくぶつかった。

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